アンナチュラル:「感情よりも展開」のドラマ作りで好調 プロデューサーが明かす制作の裏側

連続ドラマ「アンナチュラル」の場面写真=TBS提供
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連続ドラマ「アンナチュラル」の場面写真=TBS提供

 石原さとみさん演じる法医解剖医が“不自然な死(アンナチュラル・デス)”の謎を解明する法医学ミステリー「アンナチュラル」(TBS系、金曜午後10時放送)が好調だ。2016年のヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」も手掛けた野木亜紀子さんのオリジナル脚本で、テンポ良く二転三転するストーリーが視聴者を引き付けている。「お涙ちょうだいは狙わない」「感情よりも展開をぐいぐい押す」と狙いを明かす番組プロデューサーの新井順子さんに制作の裏側を聞いた。

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 ◇法医学モノの“定番”を排除

 これまでにも法医学をテーマにしたドラマは少なくないが、新井さんは「日本の法医学ものはどちらかというと、じっとりとしたイメージがあるというか、死を取り扱う分、シリアスというか、悲しみみたいなものが多く描かれている印象があった」ため、そういった従来の法医学モノとは一線を画し、「お涙ちょうだいは狙わない」作品作りを目指した。

 「遺族のところに行って涙を流す、みたいな回はあまり作らないようにしている」といい、事件モノでよくある犯人が動機を一人語りするようなシーンも「そういうのはいらない。しゃべらせない」と排除した。「刑事じゃないので、逮捕することもない。死因を探しているので、死因が分かったときに、遺族がどうなったかというのをちょっと見せるくらいの作り」にしたと明かす。

 ◇海外ドラマのような展開重視

 また、「法医学者も普通に生きている人間で、特殊な職業であってもその人にとっては生活の一部」という考えから、「法医学者という特殊感はあまり出さず、ライトな日常会話の中で、とにかく展開がどんどんしていく」作りにした。新井さんは「アメリカドラマのような展開重視にしている。特に1~3話では、そこにたどりつくまでを描きました」と説明。「感情よりも展開をぐいぐい押している感じですね」と明かす。

 二転三転するストーリー展開、テンポの良さは1話の放送当初から海外ドラマのようだという声もあったが、新井さんだけでなく、野木さんや演出の塚原あゆ子さんも海外ドラマ好きだったことも影響しているという。新井さんは「BONES(ボーンズ)」や「クローザー」「ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言」「CSI:科学捜査班」といった作品名を挙げつつ、海外ドラマは「本当にサラっとしているので、あのまま日本でやったら心が無いように感じてしまうんじゃないかと思って、心の機微みたいなものは足しています」と明かす。

 そういった“心の機微”としては、第1話で婚約者を亡くした馬場路子(山口紗弥加さん)が、主人公の三澄ミコト(石原さん)から「そんな気分じゃないから食べるんです」と勧められ、涙しながらあんパンを食べるシーンが印象的だったが、新井さんは「ああいうのは海外ドラマでは絶対無いですよね」と語る。

 ◇女子トーク、小ネタ…シリアスになりすぎないバランス 

 ほかにも、石原さんと市川実日子さんの“ワチャワチャ”した女子トークや、「野木さんが楽しんで書いている」という随所にちりばめられた小ネタなど魅力は多いが、そこには「死を取り扱っている分、重くならないように」という考えが通底している。海外ドラマのようなテンポのいいスピーディーな展開、シリアスになりすぎない絶妙なバランスといった狙いも奏功し、平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)も初回12.7%と好スタートを切り、2話では13.1%と上昇した。

 同枠のドラマで12%を超えたのは、最近では「コウノドリ」以来。早くもシリーズ化が視野に入りそうだが、新井さんは「ネットでも『脚本が面白い』と書いてもらったので、どれだけ口コミが広がっていくか。今後次第ですね」と話す。

 今後について、新井さんは「1話は感染もの、2話は『海猿』みたいなド派手でタイムリミットのある感じ、3話は法廷物、4話は事故死、過労死などで、5話は遺体損壊……と毎回、違った切り口でやっていきます。いろいろな方向から事故が飛んできて、パターン化していません。後半では(井浦新さんが演じる)中堂さんの過去も大変なことになっています」と明かしており、今後もますます目が離せない展開が続きそうだ。

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