矢本悠馬:「半分、青い。」ブッチャー役 反響に驚きも“不完全燃焼” ブレークの実感「ゼロ」

NHKの連続テレビ小説「半分、青い。」にブッチャー役で出演している矢本悠馬さん (C)NHK
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NHKの連続テレビ小説「半分、青い。」にブッチャー役で出演している矢本悠馬さん (C)NHK

 永野芽郁さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「半分、青い。」に、ヒロイン・鈴愛(永野さん)の幼なじみのブッチャーこと西園寺龍之介役で出演している矢本悠馬さん。ブッチャーは鈴愛の上京以降、出番こそ多くはなかったものの、久しぶりに登場するとツイッターでトレンド入りするなど、ドラマ内で屈指の“愛されキャラ”として人気を集めてきた。矢本さんにブッチャー役への思いや演じる上で心がけていることなどを聞くとともに、大河ドラマ「おんな城主 直虎」など話題作への出演が続いている現状についても聞いた。

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 ◇トレンド入りは「矢本悠馬がブッチャーに食われた」

 矢本さん演じるブッチャーは、鈴愛の幼なじみで、鈴愛や律(佐藤健さん)、菜生(奈緒さん)との仲良し4人組「梟(ふくろう)会」のメンバーだ。町で一番のお金持ちである西園寺不動産の息子で、お調子者で明るい性格の人物として描かれ、7月20日放送の第95回では、菜生にプロポーズする様子も描かれ、話題となった。

 東京編では出番こそ多くはなかったが、ブッチャーは久しぶりの登場でも存在感を発揮。矢本さんは周囲の反響に「驚いています」と明かす。「忘れられていなかった、ということがシンプルにうれしかったですし、たまに出てきて、ツイッターなどで騒がれるというのは、うれしいです。役者としてインパクトを残せているのは、うれしい」と率直な思いを語る。

 トレンド入りには、「まあ、矢本悠馬がブッチャーに食われたということなんですよ」と矢本さん。「普通なら俳優の名前がトレンド入りするところなのに。それぐらいインパクトがあったのかなって」と笑う。こうした“ブッチャー人気”について、「僕の知らないところで、ブッチャーが独り歩きしていると思う。皆さんの想像力に勝る“ブッチャー像”を出していかないといけないなと思うので、いっぱいいっぱいですね」と心境を明かす。

 ◇「ロンバケ」パロディーでは…

 常にテンション高めで、ヌケているところもあり、明るいブッチャーは劇中でも屈指の“愛されキャラ”だ。矢本さんは「いじられキャラ」と捉えており、「いじられているけど、とても接しやすいやつってクラスにいるじゃないですか。(ブッチャーも)そういう人なので、温かみがあったり、器が大きかったり。全体的に“丸み”というものをイメージして演じています。“優しい感じ”が出せればいいな、と。僕が出てきたらどんなシーンでも、お茶の間が明るくなってくれればいいな、ということを意識しています」と演じる上での心構えを明かす。

 具体的に意識しているのは、せりふ回しだ。「他のキャラクターよりもアップテンポというか、リズムよくしゃべりたいな、と心がけているかもしれません」と矢本さん。「(登場シーンは)コメディーパートだったりするので、ゆったりしゃべるよりはリズミカルな方がいいかな、と。そこは徹底しているかもしれないですね。早めに、リズミカルにしゃべるようにしています。その方が明るく、気楽な感じに見えるかなあ、と……。ブッチャーのことをあまり深く見られないようにはしています(笑い)」と工夫を語る。

 劇中では、今作と同じ北川悦吏子さんが脚本を担当した大ヒットドラマ「ロングバケーション(ロンバケ)」(フジテレビ系、1996年)をほうふつさせるパロディー風のドラマ「ロングバージョン」がテレビで流れるシーンもあり、その登場人物を矢本さんと奈緒さんが演じていて話題になった。矢本さんは「ロンバケ」の木村拓哉さんを思わせる役どころで、「キムタクさんを演じるのが、まず衝撃的でした」と本音を吐露。「イケメンの人が演じるならともかく、これ(自分)で演じるのは申し訳ないなって、1回、木村拓哉さんに心の中で謝っておいて。完コピで頑張ったんです。奈緒ちゃんと2人でユーチューブを見ながら研究して。なのに、全然使われていない。めちゃくちゃ寂しかった(笑い)。『半分、青い。』で一番自信あった芝居だったんですけど……」と笑いながら明かす。
 
 ◇大活躍も「ブレーク、してないっすね」 

 2017年の大河ドラマ「おんな城主 直虎」や広瀬すずさん主演の映画「ちはやふる」(小泉徳宏監督)など、話題作への出演が目立つ矢本さん。ブレークの実感を聞いてみると、「ほぼゼロに近いっすね。ブレーク、してないっすね(笑い)、売れてないっす」と謙虚に語る。街で声をかけられることも多いが、「(呼ばれるのは)役名ばっかりですよ」といい、「一つの現場が終わって、次の現場に集中したら、何個か前の(役名)は忘れちゃうんですよね。だから急に街中で何年か前の役名で呼ばれても、反応できないんですよ」と笑う。

 ただ、声をかけてくる層は「大河から朝ドラにかけて変わりました」という。以前は女子高生などの若い層が多かったというが、「小学生の子が、『あー、ブッチャー!』とか言ってきたり。今までとは違った世代の方が声をかけてくれたりするのは、うれしいですね」と顔をほころばせる。では、矢本さんも認めるブレークとは?「CMをめっちゃやってる、みたいな。疲れて帰ってテレビをつけてみたら、(CMの俳優が)『2回連続、俺!?』とか(笑い)。……まあ、ならないんで大丈夫です」とおどける。

 ◇ブッチャー役は“不完全燃焼”? 「まだ出し切れていない」

 これまでの出演作では、“やり切った”実感を得てきたという矢本さん。だが、「半分、青い。」では“不完全燃焼”だと意外な思いを口にする。「今回は、『もう終わっちゃうんだ』という寂しさはあるかもしれないですね。まだまだブッチャー熱あるよ、まだまだ出し切れてないよ、というのがあって。『不完全燃焼』といったら申し訳ないですけど、まだやりたいな、という思いはあります」。矢本さん自身、ブッチャーに対する思いは熱く、「(ブッチャーは)好きです。刹那(せつな)の爆発力がいいですよね、彼は」とニヤリ。“不完全燃焼”の背景にあるものは、「『もっとブッチャーを見てほしい』という、ただ一つの気持ちかもしれない」という。

 ブッチャー役は、自身の成長にもつながった、と矢本さんは語る。「普通は、一つ前のせりふを聞いて次のせりふが出るんですよ。でもブッチャーの場合は、全然違うことを急に言ったりする。『このせりふは、どこにかかっているのかな?』ということを、台本の中から見つける必要がある。視野を広げるという意味で、貴重な経験だったと思います。ただバカなことを言うだけじゃ意味がなくて、何かしら、彼の言葉に意味を持たせないといけない。その正解を知っているのは北川先生だけで、絶対、台本に隠されているので」と語る。

 最後に、もし次に朝ドラに出演するなら、どんな役がいい?と聞かれると、「10年後、20年後にヒロインの父親で出ます。父親、やりたいですね。いいパパとか演じたら、人気出るんでしょ?(笑い)」と冗談めかして語り、「やりたいですね、『変わったお父さん』を。朝(ドラで)、演じられれば楽しそうだなと思います」と将来の願望を明かした。

 「半分、青い。」は、大ヒットドラマ「ロングバケーション」(フジテレビ系、1996年)などで知られ、“恋愛ドラマの神様”の異名も持つ北川さんのオリジナル作品。1971年に岐阜県で生まれ、病気で左耳を失聴したヒロイン・鈴愛が、高度成長期の終わりから現代までを七転び八起きで駆け抜ける物語。NHK総合で月~土曜午前8時ほかで放送。全156回を予定。

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