注目映画紹介:「日日是好日」黒木華が茶道と共に歩む女性の半生演じる 樹木希林さんの姿に感慨

映画「日日是好日」のビジュアル (C)2018「日日是好日」製作委員会
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映画「日日是好日」のビジュアル (C)2018「日日是好日」製作委員会

 女優の黒木華さん主演の映画「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」(大森立嗣監督)が、13日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで公開される。お茶と共に人生を歩む女性の、20歳からの20数年間を描く。9月に亡くなった樹木希林さんが、主人公のお茶の師匠を演じている。主に茶室という狭い世界で繰り広げられる物語だが、そこで目にし耳にする事は、心をふくよかにしてくれる。

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 20歳の大学生、典子(黒木さん)は、同じ年のいとこ・美智子(多部未華子さん)と一緒に、典子宅の近所に住む武田先生(樹木さん)に茶道を習い始める。当初は細かい作法に戸惑うばかりだったが、やがてお茶を通して人生の大切なものに気付いていく……というストーリー。人気アイドルグループ「乃木坂46」の山下美月さん、鶴見辰吾さん、鶴田真由さんらも出演している。

 原作は、人気エッセイスト森下典子さんが、自身の体験を綴ったロングセラーエッセー「日日是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」(新潮文庫)。映画を見る前は、森下さんの主観的な文章をどう映像化するのだろうと興味津々だった。大森監督は、一人の若い女性の成長と共に、茶道、ひいては日本の和の魅力を余すところなく伝えている。駆け足で描かれる典子の24年間の中で茶道の奥深さに触れられ、見終えた時は、平凡であろうと毎日を無事に生きられることへの感謝の気持ちが湧いた。

 典子の就職での挫折や大切な人との別れなども描かれているが、大事件は起こらない。ただただ、典子が茶室でお茶と向き合い、そこに武田先生の寄り添う姿があるだけだ。しかし、そこにこそ作品の真髄がある。

 例えば、だるまの掛け軸をじっと見詰める武田先生の姿には、せわしなく生きることが、いかに心を乏しくさせているかを思い知らされた。あるいは、典子が水の音の違いに気付く場面では、一瞬一瞬を五感で味わうことの尊さを教えられた。武田先生の、さりげなくも芳醇(ほうじゅん)な言葉の数々が胸にしみる。今は亡き樹木さんをしのびながら、その言葉をかみ締めたい。(りんたいこ/フリーライター)

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