女優の黒木華さんと俳優の野村周平さんがダブル主演の映画「ビブリア古書堂の事件手帖」(三島有紀子監督)が1日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほかで公開される。極度の人見知りだが、ひと度本を手にすると人が変わったように饒舌(じょうぜつ)になる黒木さん演じる篠川栞子と、過去のある出来事から活字恐怖症になった野村さん演じる五浦大輔が、古書にまつわる秘密を解き明かしていくミステリー作だ。モダンとレトロがバランス良く溶け込み、心地よい余韻に浸れる。
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三上延さんの人気ミステリー小説を、「繕い裁つ人」(2015年)や「幼な子われらに生まれ」(17年)で知られる三島監督が映画化した。
五浦大輔は、祖母・絹子の遺品の中にあった、夏目漱石の「それから」の本にあったサインの真偽を確かめるために、鎌倉の古書店「ビブリア古書堂」を訪れる。店主の栞子は、その本を手に取るや、たちまちサインの謎と、絹子が死ぬまで守り抜いた秘密を指摘する。その一件をきっかけに、大輔は古書堂で働き始める……というストーリー。
絹子の若かりし頃を夏帆さんが演じるほか、東出昌大さん、成田凌さんらが出演する。主題歌「北鎌倉の思い出」(サザンオールスターズ)は桑田佳祐さんの書き下ろし。
「それから」に隠された、絹子と東出さん演じる作家志望の青年・田中嘉雄の関係をひもといていく50年前の昭和と、栞子と大輔を軸にした現代の二つの時代を往来しながら展開していく。
後者では、栞子が所有する太宰治の「晩年」の稀覯(きこう)本をめぐるミステリーも展開。程良いサスペンスを楽しめる。昭和パートでは、ロマン漂う香り高いラブストーリーを味わえ、古書の存在感や、山の稜線(りょうせん)を切り開いて作られた切り通しに差し込む光、そこを抜ける風と相まって、高尚な文芸作品に触れたような気持ちになった。
本のことになると我が身の危険を顧みずに暴走する栞子役の黒木さん、栞子に引かれるあまり一生懸命さが空回りしてしまう大輔役の野村さんら、出演者それぞれが役と調和していた。中でも嘉雄に扮(ふん)した東出さんの昭和男子ぶりは強く印象に残った。(りんたいこ/フリーライター)
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