残すところ1週となった女優の安藤サクラさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「まんぷく」。萬平(長谷川博己さん)と福子(安藤さん)の“萬福(まんぷく)夫婦”最後(?)の挑戦となる「まんぷくヌードル」の物語もついに佳境に。そんな中、これまで以上にその動向(容体とも?)が注目されているのが、「私は武士の娘です」が口癖で、視聴者から“ぶしむす”の愛称で慕われている、福子の母・鈴(松坂慶子さん)だ。なぜ、鈴さんはここまで人気を集めたのか? そこには、朝ドラにおける母親像を逸脱した特異なキャラクター造形があり……。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
鈴さんは「私は武士の娘です」が口癖で、萬平への不平不満をはじめ、何でも思いついたら口に出してしまう性格だが、それでいてどこか憎めない、みんなの愛されキャラだ。ドラマには第1回から登場。よく言えば福子ら家族に“寄り添い”、意地悪な言い方をすれば“寄生”し、今や完走を遂げようとしている。
朝ドラの母親といえば、ヒロインに対して厳しかったり、優しかったりとタイプはそれぞれではあったものの、その言動や行動の裏には「娘の幸せが第一」という思いがあったはずだ。もちろん、鈴さんにもそういった面はあるが、結局は自分本位というのが透けて見えてしまうこともしばしば。むしろ、ワガママな部分を隠さないところが鈴さんらしさというべきか。
すねたり、むくれたり、時に仮病を使ったりと、あの手この手で福子ら娘(武士の娘の娘)、または孫たち(武士の娘の娘の娘 or 武士の娘の娘の息子)を自分の都合のいいようにと誘導する、ある意味いつまでたっても子離れできない姿は、これまでの“朝ドラ母親像”とは異なっていて、そこが逆に大きな魅力となっていた気がする。そもそも口癖が愛称になるヒロイン母なんて、これまでいただろうか……?
当初は自分本位な言動(主に萬平へのダメ出し)のため、「イラッとさせられる」といった意見も多かった鈴さんだが、何度も繰り返される「私は武士の娘です」のフレーズが視聴者もクセになったのか、今や“萬福夫婦”をもしのぐ人気キャラへと成長。朝ドラといえば、ヒロインの友人やライバルが、“第2のヒロイン”“もう一人のヒロイン”“影のヒロイン”などと言われることも多いが、気がつけば鈴さんは、そのポジションにもすっぽりと収まってしまった。いやはや恐るべし、「ぶしむすの破壊力」である。
もちろん、福田靖さんの巧みな脚本、松坂さんの好演があってこそ。特に松坂さんの上品さ、チャーミングさ、見事なコメディエンヌぶりは、福田さんが作り上げた鈴さんのキャラクターをより輝かせたと言っても過言ではないだろう。
そんな松坂さんは以前、鈴さんについて「みんな鈴さんの中に『自分のお母さん』を見ているような感じになるのでしょうね」と語っていた。決してステレオタイプではないかもしれないが、間違いなく「愛すべき母」と言える鈴さんに会えるのも、あと少し。「まんぷく」を最後までどうかお見逃しなく。
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