海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
俳優の長谷川博己さんが主演を務めるTBS系「日曜劇場」枠(日曜午後9時)の連続ドラマ「アンチヒーロー」。明墨法律事務所の弁護士、赤峰柊斗を演じているのは俳優の北村匠海さんだ。「殺人犯をも無罪にしてしまう」弁護士・明墨を演じる長谷川さんについて、「僕なんかがとやかく言える立場ではありませんが、やっぱり迫力がすごいです」と話す北村さんに、撮影現場で感じた思いを聞いた。
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「面白い」という反響が一番多いなと思います。「何が正義なのか」と考えてくれる方はもちろん、ストーリーの全貌が見え隠れしはじめたので、一体誰が本当に悪い人なのか、全員が怪しまれている段階なのかなと。僕としても、純粋にエンターテインメントとして楽しんでくださっている方がたくさんいて、とてもうれしいです。
テレビドラマにしては珍しく、台本が最後のほうまで出来上がっている段階で撮影に入っているので、本作においてはその難しさを感じています。全体を通して感情を出すお芝居は意外と少なくて、事件の説明をするシーンが多いのが本作の特徴の一つ。
特に明墨法律事務所での撮影は、1日かけて全員でひたすら何かの説明芝居をしています。大変ではありますが、それをみんなで共有できている日々はとてもいとおしいですね。
もうNGが出ても仕方ないんです(笑い)。セリフそのものというより、視聴者の方々にわかりやすく説明することがとにかく難しくて……。覚えないといけない人名も多いので、「この人が何をやった人で……」という複雑な関係を説明しているうちに頭がこんがらがってしまうんです。
みんなが難しいとわかっているからこそ変な緊張感がなくて、誰かがセリフを間違えても笑い合える和やかな撮影現場。第1~3話は特に長谷川さんの難しいセリフが多くて苦戦されていたのですが、そこに対して少しずつ笑える空気感を作り出してくださって、それがその後全員の助けにもなりました。
そうですね。それでいてシーンによっては「次は和やかな空気で撮るものじゃないな」という役者としての配慮が全体的に漂います。シリアスな法廷のシーンではそういうお互いの距離感もすごく大事なので、全員が阿吽(あうん)の呼吸で臨めている感覚があります。
僕なんかがとやかく言える立場ではありませんが、やっぱり迫力がすごいです。長谷川さんご自身は細いタイプだと思うのですが、赤峰として対峙する時はすごく芯が太いなと感じます。明墨の独特な雰囲気は、長谷川さんだからこそ引き立つのだろうなと。
役者はそれぞれのルーツによって演じ方が異なるのですが、長谷川さんのお芝居を間近で感じるととてもワクワクしますし、赤峰としても立ち向かう甲斐がありますね。
表情、姿勢、歩き方などの技法はもちろん、ネクタイの玉の結び方など一つとっても、作品ごとに変えているので、具体的に何かというよりはそういった演技などへの姿勢を間近で感じれるのは良い刺激になります。
今回、弁護士ドラマだからなのか、撮影すればするほど全員の顔つきや目つきが鋭くなっているのを、モニターを通して感じています。特におでこの力の入り方などは、演じていてもわかるもの。これも長谷川さんが余裕のあるミステリアスな明墨を演じてくれるからこそです。得体のしれないキャラクターと対峙しているからどんどん力が入っていく。みんな顔が釣り上がった状態でずっとお芝居しているので、すごく顔が痛いです(笑い)
紫ノ宮と赤峰は犬猿の仲のようで、実はずっと同じラインにいると思っています。第3話で赤峰がようやく紫ノ宮と並ぶような感覚があったので、この先2人が誰のために動いていくのかも注目してほしいです。ここからは2人のシーンも増えていくので、演じていてもバディー物に近いような。
撮影では、相談して芝居を決めることはあまりなくて、テストの撮影でびっくり箱を空けるような感じ。「どうくるかな?」「そうくるか!」みたいなことが多いです。そんな僕らの“タッグ感”もぜひ楽しんでください。
飯田和孝プロデューサーから、「赤峰は別の弁護士事務所にいたことがあり、刑事事件の担当経験はないが、民事事件などの裁判を経験してきている優秀な弁護士」という説明を受けていました。
実は僕の中で、赤峰が弁護士としてどう成長するかは第3話で終わっていて、第4話からは明墨法律事務所のアンチヒーロー率いるチームのパーツの一つになっていく準備をしているつもりなんです。
赤峰は明墨に憧れて法律事務所に入った設定なので、実は少しずつ明墨要素を散りばめていました。ポケットに手を突っ込むような細かい仕草をはじめとして、少しずつ明墨のやり方に染まっていく様子は細かく演じているつもりです。
これまで僕は視聴者のみなさんの安心材料的な役割だったかもしれませんが、次は誰がその役割なのでしょうか。明墨なのか紫ノ宮なのか、はたまた別の誰かなのか。それを探してもらうのも面白いと思います。
もちろん軸としては僕らの変化もありますが、本作は“僕らがどう成長するか”よりも、被害者にフォーカスが当たる作品だと思ってもらえたら、さらに違った楽しみ方をしてもらえると思います。みんなが弁護士として抱えている正義は、常に被害者を助けること。どんなにアンチな弁護士でも依頼人を助けることが全てなんです。僕たちは最後まで依頼人を中心に動いているので、そこにはより一層注目してほしいです。
僕は、ドラマや映画は「ただ面白ければいい」と思うタイプ。“ただ面白い”ってすごいことで、作品全体を通して「いやぁ、面白かった!」で終わることはすごくバランスの取れている証拠でもあります。本作を観てくださっている方たちも日頃からたくさんの作品を観たり、我々俳優の世界を覗いてくれているおかげで、すごく目が肥えているはず。着眼点がすごいなと思う瞬間もあって、「いや、もうスタッフさん目線じゃん!」と感じることも(笑い)。
そんなみなさんからも「面白い!」と言ってもらえる作品になっているんじゃないかなと思います。純粋に「次の話も観たい」と思わせてくれる本作は俳優としてもすごく頼もしい。脚本が本当に素晴らしいので、いい意味で僕たちが頑張りすぎなくても、この船に乗るだけで面白くなっていくだろうなという安心感もあります。
日曜劇場への出演は「仰げば尊し」「グッドワイフ」と合わせて今回で3度目ですが、やっぱり日曜劇場はちょっと特別ですね。これまで数々の歴史がある中で、昨年大きな話題になった「VIVANT」に関わっていた多くのスタッフさんが、「アンチヒーロー」を手掛けています。
日本のエンターテインメント作品の旅路はまだ始まったばかりで、今まさに世界に向けて羽ばたいていく途中。プロデューサー陣のみなさんとは芝居の話だけではなくて、今後の日本ドラマの展望などについても話していて、僕の役者人生としてもすごく希望の持てる作品になっています。内容としては光と影がありますが、現場はものすごく光に満ちています。そんな中、役者として改めて「芝居が面白いな」と思える瞬間がすごく多く、貴重な出合いとなっている作品です。
第3話まではある意味スタートライン。明墨法律事務所がようやく完成するまでを描いていたので、僕の“視聴者の皆さんの目”という役目は終わったかなと。第4話以降は目線も変わり、視聴者のみなさんにとっても作品の見方が変わった分岐点になったと思います。
今後は、明墨の思惑が何なのかが鍵を握ります。明墨の言っていることが嘘か真か。「一体誰のために動いているんだ?』と気になる瞬間もあると思うので、そういった伏線も楽しんでもらえたら。今後の展開を考察したり、それぞれ作品への思いも感じてくださっていると思いますが、いい意味でそれを裏切ってくれるはず。脚本から伏線のつながり方が細部にわたって作り上げられているので、ひとつひとつ見逃さずに楽しんでいただけたらうれしいです!
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