伊藤沙莉さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」(総合、月~土曜午前8時ほか)。第69回(7月4日放送)では、最高裁判事を退任する穂高(小林薫さん)に、寅子(伊藤さん)が怒りを爆発させるシーンが話題を集めた。たくさんの恩を受けた一方、わだかまりも抱えたままの恩師に激怒した寅子をどのような思いで演じたのか、伊藤さんに聞いた。
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第69回では、寅子は桂場(松山ケンイチさん)から、穂高の最高裁判事の退任祝賀会の手伝いを頼まれる。寅子は穂高に花束を渡す役目を任されていたが、穂高が祝賀会で「結局、私は大岩に落ちた雨だれの一滴にすぎなかった」とあいさつしたことで怒りが込み上げ、持っていた花束を多岐川(滝藤賢一さん)に手渡し、会場から出て行ってしまった。
寅子は「先生に自分も雨だれの一滴なんて言ってほしくありません」と怒りをあらわにし、真っ向から意見。「先生に感謝はしますが、許さない。納得できない花束は渡さない。世の中そういうものだと流されない」と言い、その場を去った。
この場面を振り返り、伊藤さんは「演じるにあたっては、なぜ寅子は穂高にここまで怒るんだろう?と悩みました」と吐露。
「その気持ちを監督に話したら『表現としては怒りかもしれないけれど、ここは寅子から穂高に愛情を伝えるシーン。ここで2人は、ただの仕事相手や師弟関係じゃできないけんかをしている。もはや、ある種の親子げんかであって、これは大いなる愛なんです!』と。そうした視点で脚本を読み返したら、腑(ふ)に落ちたんです」と明かした。
「きっと寅子は、穂高先生のあいさつを聞いて『今までやってきたことすべてが雨だれの一滴だと言うの? すごいことを成し遂げた先生を尊敬していたのに、そんな後ろ向きなことを言わないでよ!』と感じたんですよね。怒っているときって、根底にあるくやしい気持ちや悲しみ、恥ずかしさなどが怒りとして表れているんだと思うんです。ここでも寅子の声色や温度感は怒りに見えますが、根底にある先生への愛と敬意が怒りとして表れたと捉えていただけたらうれしいです」
信念を曲げない寅子らしい展開に、「もう最後だからいいや!と見逃がさないのが寅子ですし、それが彼女の愛なんです(笑い)。まあいっか!で、その人との関係性を終わらせたりあきらめたりしない。寅子は絶対に、相手に気持ちを届けることをあきらめず、関わり続けていく人なんですよ」とコメント。
「かつて懐かしき兄が、『思ってることは口に出していかないとね。うん、その方がいい!」(第15話、4月19日放送)と言っていましたが、寅子もそのマインドを持っているんだなと思いましたね」としみじみ語った。
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