解説:大河“3度目の妻”役・橋本愛 江戸の真面目な“メガネっ娘”を時に愛らしく 心の機微を繊細に

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」でていを演じる橋本愛さん (C)NHK
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大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」でていを演じる橋本愛さん (C)NHK

 横浜流星さん主演のNHK大河ドラマべらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(総合、日曜午後8時ほか)に出演する橋本愛さん。同局のもう一つの看板ドラマ、朝ドラ(連続テレビ小説)では決して珍しくはないものの、大河ドラマとなると少々異例の“メガネっ娘”キャラのていとして、視聴者の注目を集めている。2018年の「西郷どん」、2019年の「いだてん~東京オリムピック噺~」、2021年の「青天を衝け」に続く、4回目の大河ドラマ出演で、主人公の妻を演じるのは3度目となる橋本さんの魅力とは……。

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 ◇「青天を衝け」別れのシーンは吉沢亮も号泣

 現在29歳の橋本さん。2010年の映画「告白」などを経て、2012年公開の「桐島、部活やめるってよ」で、スクールカースト上位の女子グループの中の一人・かすみを演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめとする数々の映画賞を受賞。以降、2013年度前期の朝ドラ「あまちゃん」でのブレークもあり、10代の頃から映像界で活躍してきた印象だ。

 そんな橋本さんの、凛とした美しさを役へと昇華し、そこにいるだけで絵になる存在感や説得力は、過去の大河ドラマでも発揮。

 特に前回の「青天を衝け」では、主人公・渋沢栄一(吉沢亮さん)と人生を並走する妻の千代に扮(ふん)し、千代が病(コレラ)に倒れ、帰らぬ人となってしまった第36回(2021年11月21日放送)での、夫婦の別れのシーンは、栄一役の吉沢さんも「号泣しました」と撮影を振り返るほどの気持ちに入りよう。当然、視聴者からも「言葉にならない」「喪失感がやばい」との声が上がり、一つのクライマックスとなっていた。

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 ◇「べらぼう」ていの「真面目さゆえ」がいい味に

 「べらぼう」で演じるていは、口数は少ないが、心の芯はめっぽう強い女性だった千代と同じく、どちらかといえば控えめなキャラクターで、さほどアクや押しの強さは感じない。

 最初は受け入れがたかった主人公の蔦重(横浜さん)とは、「本を愛する」という点で結びつきを強め、いつしか「本当の夫婦」へと関係性を変化させていったが、どこか理路整然としたものの考え方にブレはなく、その「真面目さゆえ」という部分がいい味にもなっている。

 トレードマークは大きなメガネと通りの良い低音ボイス。蔦重と出会った頃のていの声には、拒絶の色が混じるようなまさしく“低温”だったが、最近は親愛の情がにじむ温かみのあるものへ。この辺りの表現も橋本さんは巧みで、いかに深く役と同化できているかがよく分かる。

 ◇「お口巾着」もわざとらしくならず

 さらに、7月27日に放送された第28回では、嫡男の意知(宮沢氷魚さん)を亡くした田沼意次(渡辺謙さん)の決意がつづられた文をのぞき見した際、他言しないという意味で、まゆひとつ動かさず「お口巾着で」と言ってのけたていの、なんとも愛らしい姿が話題に。

 こういったシーンがわざとらしくならないのも、常々、役の心の機微を繊細にくみ取っているからこそ。この先も、大河“3度目の妻”役として存在感を増していってくれるに違いない。 

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