黒川文雄のサブカル黙示録:PS Vita体験 ソニー的な思考 コンパクト化への布石か

新型携帯ゲーム機「PS Vita」が人気を集めた東京ゲームショウのSCEブース
1 / 1
新型携帯ゲーム機「PS Vita」が人気を集めた東京ゲームショウのSCEブース

 15~18日に開かれた国内最大のテレビゲーム展示会「東京ゲームショウ2011」の注目は、何といってもソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の新型携帯ゲーム機「PS Vita」でした。発売日はゲーム最大商戦期の12月17日で、同時発売のソフトは20作品以上あり、期待度は高いといえるでしょう。最近の任天堂のゲーム機の不調ぶりを鑑みて、SCE関係者が「今度は自分たちの(巻き返す)ターンだ」という意気込みも、まんざら絵空事でもないように思えます。

あなたにオススメ

 そしてゲームショウのもう一つの目玉は、ソーシャル・ネットワークサービス(SNS)で急成長を遂げた「GREE(グリー)」の出展でしょう。ブースの大きさは、最大のセガとSCE(128小間)とほぼ同規模の120小間です。しかし、ビジネスデーだけに限っていえば、ブースの大きさに反比例して、集客的にはイマイチなのも確か。一見すると不人気に見えますが、会員登録者数(6月末で2600万人以上)はやはり一目置くべきものがあります。

 「PS Vita」の体験コーナーは、ビジネスデーにもかかわらず多くの行列ができ、初日でも平均すると待ち時間が30分から1時間を要しました。しかし、ソフトごとに待機列を作った手法は、やや利便性にかけるもので、表示されている待ち時間の倍以上かかることもありました。また、ソフトによっては、まったくプレーヤーが興味を示さないものもあり、効率的な運営ではなかったように思います。

 ともあれ、さっそく「PS Vita」を体験をしてみました。当たり前ですが、画質がとても美しいクオリティーでした。960×544ドット、約1667万色という有機ELディスプレーの所以(ゆえん)でしょう。また前面のタッチスクリーンはスマートフォン風の簡単かつ滑らかな操作感がとても印象的です。中でも画面を素速く2回たたく「ダブルタップ」という感覚がとてもゲーム的な味付けではないかと思いますし、特筆すべきは、背面にもそのタッチ感覚が生かされていたということです。ゲームによって異なるものの「たたく」「押す」「引く」などの感覚がこのデバイスには付与されており、新しいゲーム感覚があります。さらにはアナログスティック、モーションセンサー、携帯電話回線(3G)、Wi-Fi機能などもあり、現時点で考えられる機能をすべて盛り込んだオーバースペック的なデバイスともいえるでしょう。

 一方、個人的に注目しているソニー・エリクソンの携帯電話「Xperia PLAY」も試遊してみました。関係者によると、この二つの機器は双方ともあまり積極的に交流はないものの、その形を見ればどちらも「IT’S A SONY」的なもので、今後はソニーが得意とするコンパクト化への布石となりそうな予感がします。

 今回のゲームショウで感じたのは「ゲームはまた新たな次元に入るのだろう」ということです。もちろんSNS的なゲームも含めて進化し、深化していくものだと思いました。新しいデバイスにおける実験的な展開により、ゲームのレイヤー(層)はまた拡大していくと思います。そしてゲームという娯楽が細分化され、また新しい娯楽が生まれてくるのでしょう。一方でクリエーターも、これまで以上に真価も問われていくものと思われます。そろそろ、ユーザーを惑わすような安易な安易な課金手法や射幸心をあおる手法は終わりを告げてほしいですし、コンテンツの女神様は、どこかでちゃんと見ていてくれていて、応援をしてくれると思うのです。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

コラム 最新記事