テレビ試写室:「anone」 構成練り上げた広瀬すずの骨太主演作 1話ラストで驚きの展開も

ドラマ「anone」の第1話のワンシーン=日本テレビ提供
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ドラマ「anone」の第1話のワンシーン=日本テレビ提供

 ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組について、放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は、「Mother」や「Woman」に続く日テレと脚本家の坂元裕二さんが組むオリジナルシリーズの第3弾となる「anone(あのね)」(日本テレビ系)だ。

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 坂元さんと水田伸生さんが手掛ける前評判の高い作品だが、その期待が裏切られることはなかった。たたみかけるような会話劇も楽しいが、やはり本筋は、練り上げられた構成とストーリーだろう。文句なしの骨太の作品に仕上がっている。

 序盤はゆっくりした流れだ。広瀬すずさんが演じるハリカの行動、ハリカの幼少期の記憶、ハリカの他愛のないチャット、田中裕子さんが演じる林田亜乃音(あのね)の不思議な行動、阿部サダヲさんが演じるカレーショップの店長・持本舵の“迷走”。無関係とも思えるストーリーが次々と切り替わることもあり、追いかけていくのが大変だった。しかし中盤から、複数のストーリーがクロスして目が離せなくなり、1話の最後には鳥肌が立つような驚きの展開が待ち受ける。

 そして広瀬さんの演技も素晴らしい。華やさがあり、ともすれば“リア充”というイメージがあるため、見る前は「この作風に合うのか?」と意地悪なことを思ったのは内緒。内向的で心に闇を抱える少女を演じながら、終盤に一転して“輝き”を見せるなどのギャップがたまらなかった。

 のほほんと気軽に見られる作品とは言いづらく、視聴者に一瞬の見逃しも許さないところがあるのは事実。予想はしていたが、とても心が重くなるのだ。熱烈なファンがいるだけに一定の成功は保証されているが、だからこそ同作に求められるのは、どれだけ広い層の視聴者の心を揺らすかだろう。昨今の状況を見ると、重厚な作品がさほど求められていないのは承知しているのだが、多くの人に見てほしいとあえて言いたい。

 個人的には、2話以降に本格展開されるであろう、広瀬さんと田中さんのやりとりが楽しみ。10日から毎週水曜日午後10時に放送される。 

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