連続ドラマW イアリー 見えない顔:オダギリジョー&仲里依紗を絶賛 原作者コメント公開

「連続ドラマW イアリー 見えない顔」の原作小説の文庫版のカバー
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「連続ドラマW イアリー 見えない顔」の原作小説の文庫版のカバー

 俳優のオダギリジョーさんが主演するWOWOWのドラマ「連続ドラマW イアリー 見えない顔」について、原作者の前川裕さんが寄せたコメントが15日、公開された。作家であり、現役の大学教授でもある前川さんは、同ドラマで大学教授・広川誠司役を演じたオダギリさんや、大学講師・麗役を演じた仲里依紗さんを絶賛しているほか、ホストクラブにはまってしまう看護師・菜々美役を演じる黒島結菜さん、広川の同僚教授・仏上を演じるイッセー尾形さんについてのコメントも寄せている。

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 ドラマは、映画化もされた「クリーピー 偽りの隣人」の前川裕さんの小説が原作。主人公の大学教授、広川誠司の家の周囲で起きる不審な近隣トラブルが、やがて一見、何の関係もないはずの大学総長選挙の暗闘に絡みついていく……という異色のサスペンス。

 妻を病で亡くした数日後の夜、大学教授の広川誠司(オダギリさん)の家を、「奥様、ご在宅でしょうか?」と見知らぬ女性が訪ねてくる。慌てて玄関を開けるが、そこには誰もいなかった。そのころ、大学では総長が急死。それに伴い学生も参加する新たなスタイルの総長選挙が行われようとしていた。教授たちは互いに疑心暗鬼になり、怪文書が飛び交うなど、学内に不穏な空気が漂い始める。広川は妻の生前から、妻の実妹で同じ大学の講師の水島麗(仲さん)と深い関係にあり、妻が死亡したまさにその瞬間も時間を共にしていた。その後ろめたさが、広川の近隣や選挙に対する漠然とした不安をかき立てていく。やがて、近所のゴミ捨て場で変死体が発見され……という展開。WOWOWプライムで8月4日から毎週午後10時放送。全6話で第1話は無料放送。

 ◇前川裕さんのコメント

 ――キャストについてはいかがですか。

 私がオダギリさんに、撮影現場で初めてお会いしたときに感じたものは、なんともいえない独特のオーラでした。それは、世間的にいえば、「カッコいい」という単純な表現になってしまうのでしょうが、私はそれ以上の「知的な香り」のようなものを感じました。その雰囲気は今度の大学教授という役柄にとても合っているような気がしています。外見的な格好の良さだけでなく、繊細な内面性をも表現できる方ですから、今回の演技を見るのは本当に楽しみです。

 仲さんが大学の教室で講義をする場面を見学させていただきましたが、その講義口調には自然な知性がにじみ出ていて、いかにも本物の大学の先生がしゃべっているという感じが出ているんです。長年、大学教授をしてきた私がそう感じるのだから、これは本当にすごいことなんです。少しお話しする機会がありましたが、他の映像で見た強烈な個性とは異なり、物静かで、知的で、謙虚な方という印象でした。やはり、ああいう方が内に秘めている質の高い内面性が、演技という濾過(ろか)装置を通して、表に現れて来るのでしょう。

 黒島さんは大変美しい方ですが、原作中の菜々美は必ずしも美しい人物には描かれていません。むしろ、内面的な不安を抱え、自分の容姿にも劣等感を抱いている女性として登場しています。しかし、私は映像化する場合は、演出上の工夫を凝らした上で、正統派の美人女優に演じてもらった方が面白いのではないかと考えていました。私のそういう思いが森監督やプロデューサーのキャストの選択と一致していたことに驚いています。私はこういう点にも注目して、映像を見てみたいと思っています。

 尾形さんとは年齢的にも近く、彼の役者としての活動には以前から関心を抱いておりました。尾形さんは「一人芝居」というジャンルを確立した第一人者ですが、「一人芝居」の本質は、「ユーモア」であると同時に「不気味さ」でもあります。この「不気味さ」とはまさに本作の「イアリー」(eerie)という概念に近いものですので、それを尾形さんがどう表現するか、私はワクワクして、映像の中の彼の姿を見ることができる瞬間を待ち望んでおります。

 ――本作を通してみる大学について教えてください。

 今、学生スポーツ界でとんでもない事件が起こっていて、それは私立大学のガバナンスの問題にまで発展してきていますよね。この作品でも、背景として私立大学の総長選挙が描かれており、総長選挙は大学の運営を巡る主導権争いの象徴的な姿ともいえますので、ある意味ではタイムリーな話題です。

 一般論でいえば、教員組織である教授会よりも、理事会が強い大学は、ワンマン経営になりがちで、総長や理事を選挙ではなく、別のシステムで選ぶところもあるようです。その意味では、総長選挙がまだ存在している大学は、民主主義的な運営実態があるわけで、仮に総長選挙がかなりえげつないものでも、それなりの自浄能力を持っている健全な大学とはいえると思います。

 もちろん、私が原作の中で描いた総長選挙には、虚実が織り交ぜられており、一つ一つのエピソードも誇張されたものではあります。エンタメ系の小説として描く以上、あまり地味なエピソードには読者は耳を傾けてはくれませんからね(笑い)。ただ、学問の世界の人間といっても、大学教授が人並み以上の世俗的な欲望、つまりは権力欲や金銭欲を持っているのは確かです。それが普段の禁欲的な学究生活からはじけて、妙に滑稽(こっけい)で、不気味でさえある姿となって、総長選挙や理事選挙に反映されることはあるようです。

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