高阪剛:「ジョン・ジョーンズらしい暴れっぷり見られるのでは」 「UFC235」ヘビー級防衛戦を展望

ジョン ジョーンズ選手(左)とアンソニー スミス選手(c)Getty Images
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ジョン ジョーンズ選手(左)とアンソニー スミス選手(c)Getty Images

 日本時間の3月3日、米ラスベガスのT-モバイルアリーナで総合格闘技の大会「UFC235」が開催される。メインイベントとして、昨年12月にUFC世界ライトヘビー級王者に返り咲いたジョン・ジョーンズ選手がアンソニー・スミス選手の挑戦を受ける王座初防衛戦が行われる。また、王者タイロン・ウッドリー選手が、現在MMA(総合格闘技)14連勝中のカマル・ウスマン選手の挑戦を受ける、UFC世界ウエルター級タイトル5度目の防衛戦も開催される。この二つの防衛戦の見どころを、格闘家の高阪剛さんに聞いた。

ウナギノボリ

 ◇ジョーンズらしい暴れっぷりが見られるのは今回

 --昨年12月30日(日本時間)の「UFC230」で復帰したジョン・ジョーンズ選手が、早くもUFC世界ライトヘビー級王座初防衛戦を行いますね。

 前回のアレクサンダー・グスタフソン戦から2カ月ちょっとですからね。UFCチャンピオンが、こんな短い間隔ですぐタイトル戦をやるということは、通常ありえない。半年は空けるのが普通です。それなのに、このタイミングですぐ試合をやるっていうことは“あの感覚を忘れないうちに、すぐ試合をしないとダメなんじゃないか”と、本人も感じたような気がするんですよね。この前のグスタフソン戦で、最後はグラウンドの打撃でTKO勝ちしたわけですけど、そこに持っていくまでの一連の流れを見ると、ようやく試合終盤になって、本来のジョン・ジョーンズらしい動きが少し見えたというか、感覚を取り戻した気がしました。それまでは、ちょっと手探り状態的にも見えたので。

 --前回のグスタフソン戦では、TKOで勝ったとはいえ、完全に感覚が戻ってきてないように見えたと。

 そうですね。ちょっと本人の中でもフラストレーションがたまる試合だったんじゃないかなと思いました。自分から攻撃を仕掛けているんだけど、2手3手がなかなか出なかったり、逆に相手のアタックがあったあとの“際”の攻撃だったりとか。その辺が、以前のジョーンズに比べるとワンテンポ遅れるな、というふうに見えたんです。言い方を変えると、ブランクがあったがゆえに、冒険しないで確実に勝ちを収めるための試合のやり方をしたのかもしれない。だから本来のジョーンズらしい暴れっぷりが見られるのは、復帰第2戦である今回じゃないかと思うんです。

 --対するアンソニー・スミスは、現在3連勝中。しかも、ラシャード・エヴァンス選手、マウリシオ・ショーグン選手、ヴォルカン・オーズデミア選手という元王者、およびタイトル戦経験者相手に3連続フィニッシュ勝利と勢いに乗ってます。

 アンソニー・スミスは、攻撃型の選手で、自分からどんどん前に出て勝ち切る試合が多いんです。相手との打ち合いでも引かず、連打が打てるタイプの選手なので、パンチも一発で終わらずに、トドメを刺すまで打ち続けられるところが魅力ですね。また、スミスはベースがもともとMMAの選手なので、総合(格闘技)の中で、グラウンドの身体の使い方だったり、極めにいくタイミングを身につけたんだろうなと思うような動きをよくしてるんですよ。だから、打撃と寝技も含めてアグレッシブな総合をやって、一気に自分のペースをつかむタイプの選手という印象もあります。

 --ジョーンズ選手のエンジンがかかる前に、スミス選手がペースをにぎるかもしれませんね。

 そうですね。しょっぱなからスミスが全開で、ジョーンズにまだ少し動きにもたつきがあったりすると、危ないと思います。それでなくとも、ジョーンズは若干、スーロースターターな部分がありますから。

 --となると、大番狂わせの可能性もある、と。

 ただ、ジョーンズに以前の動きが戻ってきていたら、切り崩すことは相当困難ですね。パンチやヒジがうまいだけでなく足技も使ってくるし、急にタックルも仕掛けてくる。しかも、自分との距離がつかめない感覚を相手に与える試合運びをするので、さしものスミスも容易には入れないでしょう。もしかしたら、得体の知れないプレッシャーに負けて、なかなか前に出られないかもしれない。そこも含めて今回は見応えがあると思いますよ。

 --超攻撃型のスミス選手と、変幻自在のカウンターを駆使するジョーンズ選手の主導権争いの攻防はたしかに見応えがありそうです。

 ジョーンズも自分から攻撃を仕掛けて、スミスが出てくるところにカウンターでヒジを当てる技術を使うなど、そういうことをやり出したら、相当スイングする試合になるはず。そして、いまの状態のスミスを倒したら、ジョーンズは本当の意味で完全復活すると思います!

 ◇ウッドリーに対し、ウスマンがあえてタックルを仕掛けてくれたら面白い

 --続いて、タイロン・ウッドリー選手VS.カマル・ウスマン選手のウエルター級タイトルマッチ。ウッドリーは5度目の防衛戦で、長期政権が見えてきました。

 ここのところのウッドリーは盤石ですよね。ただ正直、なんでチャンピオンに君臨し続けられているかというと、試合中、あまり冒険しないからでもあるんですよ(笑い)。

 --レスリング能力が高く、カウンターの打撃もうまい“待ち”タイプだからでしょうか?

 とくにパンチに関しては、一発で仕留められるフィニッシュ力があるから、攻撃を二つ三つつなげる必要がそんなにないんですよ。それでテイクダウン能力も高いし、力も強くて反応が早いから、じっくり待つことができる。対戦相手にとっては、すごくやりづらいタイプです。相手にしたら、攻撃のやり合いの中で突破口を見いだしたいんだけど、やりあってくれない。だから、どうやったら切り崩せるのか、見えてこないまま試合が終わり、敗れてしまっているという感じだと思うんです。

 --そんなウッドリー選手相手に、ウスマン選手はどう戦うと思いますか?

 これは自分の希望も含めた予想なんですけど、ウスマンがあえてタックルを仕掛けてくれたら面白いと思うんです。というのは、ウスマンもかなり高いレベルのレスリングベースを持ってますよね?

 --NCAA(全米大学体育協会)ディヴィジョン2でオールアメリカン(ベスト選手)に3度選ばれていますね。

 鉄壁のウッドリーを切り崩すために、あえてウッドリーの一番強い部分を崩しにかかる。そうすることで、これまでとは違った展開が見えてくるんじゃないかなと。当然、最初は打撃のやり取りになると思います。ですが、すきあらばどんどんタックルにいって、ウッドリーに切られても、根負けするまで仕掛けてテイクダウンに成功したら、その後、グラウンドになろうとスタンドになろうと、試合はウスマンに傾くと思うんですね。

 --その展開自体、いつものウッドリーペースではなくなるからですね。

 ウスマンは、昨年のデミアン・マイア戦を見ても、相当フィジカルとスタミナ、レスリング能力が高いですから。しかも、相手によって試合のやり方を変えてくる。左右の構えを自由に使いこなせるので、そこもひとつかく乱させる技術として、ウッドリー相手にも有効なんじゃないかと。どちらにしても、まずはタックルがひとつのきっかけになると思います。

 --ウスマンが、ウッドリーにあえてタックルを仕掛けることで、いろんな展開が見えてくると。

 また、そうすることで、ウッドリーの新たな面が引き出されるかもしれない。これまでウッドリーは、あまりにも強固で高い城壁を築いていたので、みんな“門前払い”みたいなかたちになっていたんですよね。だから自分は今回、ウスマンがタックルでその門をこじ開けた先のウッドリーが見られることも期待しています。

 *……WOWOWでは二つの防衛戦の様子を生中継する。「生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC235 in ラスベガス ダブルタイトルマッチ! ライトヘビー級王者ジョン・ジョーンズ降臨!」と題して、WOWOWプライムで3月3日正午放送。

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