「怪しい彼女」(2014年)などの韓国女優シム・ウンギョンさんと、「孤狼の血」(2018年)などの松坂桃李さんがダブル主演の映画「新聞記者」(藤井道人監督)が、6月28日からユーロスペース(東京都渋谷区)ほかで公開される。東京新聞の記者、望月衣塑子さんの著書が原案のオリジナルストーリー。「個」と「権力」の対決、若い記者と官僚の対峙(たいじ)、心の葛藤を描いた骨太な政治サスペンスだ。
ウナギノボリ
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東都新聞記者の吉岡エリカ(シムさん)は、日本人の父と韓国人の母のもと、米国で育ち、ある強い思いを秘めて記者になっていた。ある日、医療系大学新設情報に関する極秘情報が所属新聞社の社会部に匿名で届く。内閣情報調査室のエリート官僚・杉原拓海(松坂さん)は、不都合なニュースを握りつぶす任務に迷いを覚えていた。2人の人生が交差した時、ある闇が明らかになる……というストーリー。
冒頭の映像の薄暗さが、その後語られる「権力」の闇を想像させ、緊張感をあおる。吉岡と杉原は同じように仕事に熱い情熱を傾けていることが伝わってくる。政権に都合のいい情報が、世の中に流されている。それに伴う犠牲者の存在。真実を暴こうとする記者が、じわじわと若い官僚の良心に迫っていく。2人の人物像が「記者」「官僚」という紋切り型ではなく、「個」として丁寧に描写されている。誰もが巨大な闇にのみ込まれ、それに気付いていない、現実味のある描写に空恐ろしさを感じた。
シムさん、松坂さんが圧倒的な芝居を見せている。脇役も存在感あふれる俳優ばかり。杉原の元上司で物語のカギを握る神崎役に高橋和也さん。その妻役は西田尚美さん。吉岡の上司役に北村有起哉さん、同僚記者役に岡山天音さん。杉原の上司の内閣参事官役に田中哲司さん。妻役に本田翼さんが配されている。
「デイアンドナイト」(2019年)の藤井監督は、シーンをさまざまなアングルで切り取り、ライブ感とスピード感のある映像で、社会派でありながら堅苦しくないエンタ―テインメント作に昇華させている。音楽は、多くの日本映画や「レッドクリフ」シリーズなど海外作品も手掛ける岩代太郎さんが担当した。(キョーコ/フリーライター)
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