俳優の菅田将暉さん主演の映画「アルキメデスの大戦」(山崎貴監督)が、7月26日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。戦艦大和の建造が国家予算の無駄遣いだと証明するために、見積もり算出に奮闘する天才数学者の姿が描かれている。冒頭、VFXを駆使して再現された大和の映像に引き込まれ、その後に続く戦艦建造の見積もりの算出に、これほどハラハラさせられるとは思わなかった。
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原作は、マンガ誌「ヤングマガジン」(講談社)で連載中の三田紀房さんの同名マンガ。1933年、日本の海軍省は欧米列強に対抗するために世界最大の戦艦建造を計画する。省内には、海軍少将・嶋田繁太郎(橋爪功さん)ら建造推進派と、海軍少将・山本五十六(舘ひろしさん)をはじめとする反対派がいる。山本は、国家予算の面から建造を阻止しようと考える。そこで白羽の矢が立ったのが、元帝国大学の数学者・櫂直(菅田さん)だった。櫂は、2週間後の会議までに見積もりを算出しようするが……。
菅田さん演じる櫂は、実直さの中に浮世離れしたユニークさが加わり、原作の櫂とはまた別の魅力が増している。
その櫂に、当初戸惑いと不満を覚えながら、行動を共にするうちに徐々に態度を軟化させていく海軍少尉・田中正二郎を柄本佑さんが好演。原作では出番の少なかった尾崎財閥令嬢・鏡子にも活躍の場が設けられ、浜辺美波さんが、愛らしさとしとやかさを漂わせながら魅力的に演じている。笑福亭鶴瓶さん、小林克也さん、小日向文世さん、國村隼さん、田中泯さんらも出演している。
櫂は、建造費見積もりのために、既存戦艦に乗り込んで採寸。それを基に製図してを材料費を調べ……と、およそサスペンスとはほど遠い作業を粛々と進めていく。これが実にスリリング。2週間というデッドラインや、情報を盗み出すというスパイ的要素が緊迫感を更に高めている。
結局、大和は造られてしまった。では、なぜ造られたのかという点でミステリー性もある。映画の冒頭で、米軍機の猛攻撃を受ける大和。やがてそれは黒煙を上げ……。それと呼応するように映画の終盤では、櫂と若い士官が言葉を交わす。会話は成り立っているが気持ちはかみ合っていない。その後に続く映像を見ながら、複雑な心境になった。(りんたいこ/フリーライター)
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