テレビ試写室:「天空のヒマラヤ部族」 ナスDが“天空の民”に密着 過酷取材の映像は圧巻

特別番組「テレビ朝日開局60周年記念 氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」=テレビ朝日提供
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特別番組「テレビ朝日開局60周年記念 氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」=テレビ朝日提供

 ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組について、放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は3月8日に放送される、特別番組「テレビ朝日開局60周年記念 氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」(テレビ朝日系、午後8時53分)だ。

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 2017年に放送された番組で、アマゾンの部族を訪れ、現地の住人から「美容にいい」と紹介された木の実(現地ではタトゥーの染料に使われる)の汁を顔や体に塗りたくった結果、全身が黒紫に変色したことから“ナスD”と呼ばれ、破天荒な振る舞いで人気となった同局の友寄隆英ディレクターが、ヒマラヤの高地に位置する“氷と雪に閉ざされた秘境”、ネパール北西部のドルポ地方を訪れ、過酷な自然とともに生きる“天空の民”に長期密着取材した渾身(こんしん)のドキュメンタリーだ。

 世界最難関K2の西陵ルートの世界初登頂に成功し、冒険家の故・植村直己さんを取材したこともある元テレビ朝日ディレクター・大谷映芳さんも同行するのだが、目的の村にたどり着くまでが、まずすごい。険しい山腹に刻まれた小道を歩き続け、5000メートル級の峠をいくつも越えて、何日もかけて進む。酸素も薄く、カメラマンの激しい息づかいが、過酷な環境を物語る。ナスDも「今までやったロケで一番めちゃくちゃだと思う」と語るほどだ。

 番組では、2018年秋から足かけ2年にわたってドルポに出向き、密着撮影を敢行。厳冬期の道のりは、5年ぶりの大雪で、猛吹雪にも襲われ、現地ポーターも難儀する。それでも、ナスDは楽しそうだから、やはりすごい。目的地のティンギュー村で出された料理を豪快に食べまくったり、子どもたちとかき氷を味わったり、あるギャグを教えて一緒に楽しんだり、現地の人々を笑わせ、溶け込んでいく。ナスDの“生命力”の高さには改めて驚かされる。

 世界で初めてテレビカメラに収めたという、ドルポ地方の厳冬期と越冬の様子。青く澄んだ空の下、神々しいほどに白く輝くヒマラヤの山並みを背に、色とりどりの民族衣装と仮面を着けて踊る、何百年も続くという奇祭。山々にこだまする素朴ながら力強い歌声。荒涼とした大地に、ごうごうと響く風の音。村人たちの笑顔。すべてが心に染み入ってくる。

 山の民が迎えた慎ましやかな正月、神聖な儀式の数々。現地に人々の言葉から見える人生観。圧巻の映像とともに、過酷な自然に溶け込んで生きる奥ドルポの民の暮らしぶりを目にし、人間の幸せとは何なのかを考えさせられた。

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