桃井かおり:50年孤独の元学生運動家にコロナ禍の苦しみ投影 “理想のラストキャリア”も告白 「緊急取調室」

連続ドラマ「緊急取調室」に出演する桃井かおりさん
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連続ドラマ「緊急取調室」に出演する桃井かおりさん

 女優の桃井かおりさんが、天海祐希さん主演の連続ドラマ「緊急取調室」(テレビ朝日系、木曜午後9時)シーズン4の第1、2話にゲスト出演する。桃井さん演じる“黒い女神”と称された50年前の学生運動のリーダー大國塔子は、長年の沈黙を破ってハイジャックテロを起こし、主人公・真壁有希子(天海さん)ら緊急取調室(通称・キントリ)メンバーと対峙(たいじ)する。「私が経験したものをすべて塔子にもっていきました」と話す桃井さんは、塔子の50年という“時間の重み”に、自身のコロナ禍での苦しみも投影したという。そんな桃井さんにドラマについて、コロナ禍での生活などを聞いた。

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 ◇コロナ禍のアメリカでの生活は… 「手を抜いたらすぐダメになってしまいそう」

 「緊急取調室」は、井上由美子さんのオリジナル作。可視化設備の整った特別取調室で容疑者を取り調べるキントリのメンバーが、数々の凶悪犯と心理戦を繰り広げる姿を描く。2014年に第1シーズンが放送されて人気を博し、2017、2019年とシーズンを重ねるごとに話題を呼んでいる。

 桃井さん演じる塔子は、「国民青年派」という学生組織の元メンバー。50年前、国会議事堂前で行った演説で機動隊と学生運動家の衝突を止めたことが“無血の7分間”として語り草となっている……という人物。50年間潜伏していたが、とある事件をきっかけにハイジャックテロを起こす。

 そんな塔子について、「50年前から時間が止まっている人」と話す桃井さんは、コロナ禍での米ロサンゼルスの自宅での生活を役に投影したと明かす。

 コロナ禍で、1年4カ月自宅にこもっていたという桃井さんは、その間、買い物に行ったのも3回ほどで、人に一切会わずに生活していたという。「気分転換もなく、平凡な日常の日々をこなしていくのって、ものすごくつらいことで、手を抜いたらすぐダメになってしまいそうだった」と振り返る。

 「あの自粛期間に感じた、世間から隔離されたときの孤独感、時間が止まってしまった感覚を今回の役に込めました」と語る桃井さん。だからこそ塔子の“50年の孤独”は、想像を絶する苦しみだと考えた。

 「“女神”と称された少女が、おばあさんになっているわけですから。女性の“老ける”っていうきつさ、時間を止めて生きてしまったこと、やってしまった不始末の数々、私が経験したものをすべて塔子にもっていきました。私はこの業界から半分身を引きましたが……(笑い)、塔子はそこで過去に戻ろうとします。そして起こした行動は、現代という時間と完璧にずれている。そこを真壁に指摘されてしまいます」

 ◇「長生きするっきゃないみたいな気持ち」

 塔子は、自分の“死に際”にこだわりを持つ人物。共感できる部分があるか桃井さんに聞いてみると「それはもう! 俳優なんてどのタイミングで死ぬか、いいタイミングで伝説になりたいってしか考えていないから」と笑う。

 「松田優作が死んだときに、『あ~やられちゃったな』と思いましたもん。ショーケン(萩原健一さん)も、マサカズちゃん(田村正和さん)も死んで……なんていうのを見ていると、私はタイミングを逸してしまって。今はもう逆に時代の生き証人になってやろうっていうか、長生きするっきゃないみたいな気持ちです(笑い)」

 取材中、自身のことを何度も「半分リタイアしている身」と話していた桃井さん。考える“理想のラストキャリア”を尋ねてみると、「ネーチャーな英語で一本やりたい。現地人の役を」という力強い答えが。

 「最後はアカデミー賞のノミネートくらいまではいかないと、私らしくないなって気がするの。70くらいまでに、アメリカで勝っていたいなとは思っていたんだけど、まだ英語でやられている段階だから」とにやり。桃井かおりの“時”はまだまだ止まりそうにない。

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