俳優の松坂桃李さん主演の映画「孤狼の血 LEVEL2」(白石和彌監督、公開中)。柚月裕子さんの同名小説シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)が原作で、2018年に実写映画化された。続編となる「LEVEL2」は完全オリジナルストーリーで描かれ、新たなキャストも数多く出演する。その中でスナック「スタンド 華」のママ・近田真緒(ちかだ・まお)を演じているのが女優の西野七瀬さん。こだわりの役作りや喫煙などの初演技、女優としての“今”について聞いた。
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本作への出演が発表された時、自身への出演オファーが「何かの間違いなんじゃないかと、とてもびっくりしました」とコメントしていた西野さん。第1作を友人と映画館で鑑賞した際に「見る側もめちゃくちゃエネルギーのいる力強い作品という印象でした」と西野さんは感じ、「作品の雰囲気は知っていたので余計にそこに自分が入ることが想像できませんでした」と当時の心境を振り返る。
驚きつつも「不安もあったし、うまくできる自信もあったわけではないのですが、『こんな機会はない』『こんな作品に出られるなんて』と思い飛び込んでみたくなった」と感情が動き、「深く考える前にすぐ返事をしました」と強い衝動があったという。
自身が演じる真緒について、「やったことないし、自分の中にもちょっと(イメージが)なければ、(自分に対する周囲からの)イメージにもなく、どうだろう……という感じでした」と悩むも、「やるしかないというか、ちょっと離れたようなイメージの役をできる機会ってそんなにないかなって思い、うれしかったですね。前向きでした」と未体験の役どころに自身も楽しみにしていたことを明かす。
西野さん自身、これまで演じてきた役柄や普段のイメージとは異なると話す真緒を演じるにあたり、「髪の毛をブリーチしたのですが、全体をきれいに(茶髪に)するのではなくて、ちょっと根本はプリンになるようになど、細かくこだわってやってもらいました」とビジュアルから徹底したという。
そうして臨んだ撮影では方言に思わぬ苦戦も。大阪出身の西野さんは、「関西弁と広島弁は、似ているのかなって勝手に思っていたんですよ。同じ“西”だしと思って」と前置きし、「そうしたら全然違って。方言指導の方には、『大阪出身の方は相性があまりよくないかも』と言われて、意外と“呉弁”は(イントネーションが)フラットで、ポイントポイントでちょっと上がったり下がったりみたいな感じに、ちょっと意表を突かれました」と話す。
特に感情的に話す場面では、「どうしても方言が薄れて、大阪出身なので関西弁が出てきちゃったりするんです。そこのバランスを取るのが難しかったですね」と撮影を回顧。またシーンによっては声を張っている姿も見られるが、「あまり声を荒らげて感情的になるのは普段はないので、こんな感じかなと思いながらやっていました。流れに身を任せた感はありますね」と話す。
喫煙シーンや相手の頭をたたくシーンもあった。たばこを吸うシーンは「大変でした」と切り出し、「事前にスタッフさんに持ち方などを教えていただいていたのですが、初心者丸出しみたいな持ち方になっちゃって。あと煙を吐くとき最初鼻も口も全部ファーって出したら、『貫禄が出すぎるのでやめてください』と言われました(笑い)。そういった感覚をつかむのが難しかったですね」と“初挑戦”の舞台裏を明かす。
真緒の弟で、村上虹郎さん演じる近田幸太の頭をたたく際は、「監督から『受ける方も本気でこられた方が絶対いい。思いっきりやって。遠慮はしないで』と言われたので、遠慮なく虹郎君をたたかせていただきました(笑い)」と話し、そんな真緒の注目してほしいポイントを「あまり弱さを見せないような人なので、そういうところがちゃんと表現できいてれば」と語る。
今年でデビュー10年目を迎えた西野さんだが、その記念すべき年に白石組の作品に出演していることをどう感じているのだろうか。「ぜいたくだなって思います。デビューは10年目ですけど、(『乃木坂46』を)卒業してからはまだ3年目。映画は『あさひなぐ』(2017年公開)、『一度死んでみた』(2020年公開)と多くは出演していませんし、いつか出たいとは思っていましたけど、こんなすごい作品に自分が出るなんて、(卒業して)1人になったときは全然思っていなかった。」と神妙な表情で話す。
さらに「これからどうなるんだろうという感じで、芝居の仕事をしていきたいけど、そもそも芝居の仕事ができるのかも不安だった」とグループ卒業時の心境を明かし、「今こうして継続的に何かを取り組ませてもらっている状況はめちゃくちゃうれしいです」と笑顔を見せる。
そんな西野さんだが、ドラマ「あなたの番です」(日本テレビ系)や「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(フジテレビ系)などの話題作、「劇団☆新感線」の41周年春興行への出演など、女優として堅実にステップアップし活躍を続けている。女優業への手応えを聞くと、「自分では(手応えは)わからないままやっている感じではあります」と切り出し、「そういうふうに見えていることはうれしい半面、ちゃんと実力が伴っていないといけないというプレッシャーも感じつつあります」と冷静に現状を分析する。
理想とする女優業について、「いろんな役をこなせる方はかっこいいなと思うし、嫌な役をやって、その役のように嫌われちゃう方もいますけど、そういうのもすごい。私も作品を見たときに『本当にこの人嫌だ』みたいに思うこともあるので、本当にすごいなって」と“カメレオン”的な演技への憧れを口にし、さらに「嫌われ役は今まであまりやっていないので、やってみたい。ちょっと嫌われてみたいなって思います(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに話す。
最後に映画にちなみレベルアップしたいことを聞くと、「謎解きが好きで、リアル脱出ゲームが大好きなのですが、5回やっても1回成功できるかどうか(笑い)。だからひらめき力はレベルアップしたい」と意外な回答が。ただひらめき力は「ちょっと違った観点を持つみたいなのが(仕事でも)いろんな局面で生かせそうですよね」と目を輝かせた。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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