ちむどんどん:“四者四様”の個性発揮 生き生き子役演技 背景に朝ドラ伝統のキャスティング力

NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」の一場面 (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」の一場面 (C)NHK

 女優の黒島結菜さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ちむどんどん」(総合、月~土曜午前8時ほか)。4月11日にスタートし、第1週「シークワーサーの少女」(4月11~15日)は、ヒロインの父・賢三(大森南朋さん)がキビ畑で倒れてしまうという急展開で幕を閉じた。一方で、視聴者を魅了したのが、ヒロイン含む4人の兄妹たちの子供時代に扮(ふん)した子役たちの生き生きとした演技だ。この先、登場する大人キャストの面影を感じさせる容姿もさることながら、キャラクターの個性もしっかりと落とし込む表現力の高さに、改めて、朝ドラ伝統のキャスティング力(または発掘力)を感じた視聴者も多かったのではないだろうか。

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 ◇話題となった朝ドラ×子役 “小なつ”粟野咲莉に“ちび千代ちゃん”毎田暖乃

 朝ドラと子役といえば、近年では2019年度前期の「なつぞら」での“小なつ”こと粟野咲莉さん、2020年度後期の「おちょやん」での“ちび千代ちゃん”こと毎田暖乃(まいだ・のの)さんが高い注目を集めてきた。粟野さんは「なつぞら」でヒロイン・なつ(広瀬すずさん)の子供時代に扮し、序盤、その熱演ぶりがドラマの大きな見どころとなった。また終盤になってから、なつの妹・千遥(清原果耶さん)の娘・千夏として再登場したことも話題となった。

 制作統括の磯智明チーフプロデューサー(CP)は当時、粟野さんについて、「非常にクレバーだし、表現力もありまして、250人くらい(候補の子役が)集まった中で、最初の頃から非常に印象的だった」とコメント。また「オーディションってどんどんと候補を絞っていくものなんですけど、なるべく粟野さんと他の子たちを組ませながら芝居を見ていった。彼女には芝居を変えたりする引き出しもあって、見たときからこの子しかいないと思った」と語っている。

 毎田さんも、「おちょやん」でヒロイン・千代(杉咲花さん)の子供時代に扮して、大人顔負けの演技を披露すると、終盤には、千代のめい(異母妹の子)にあたる春子役で再登場。見事な演じ分けに対して、SNSでは「ののちゃんすごすぎ」「ちび千代ちゃんの演技はすごい」「同じ顔なのに違う子になっててすごいな」といった声が上がった。

 「おちょやん」の脚本家・八津弘幸さんも「口が達者という部分は(千代と)同じかなと思っていましたが、実際に春子を演じていらっしゃる暖乃ちゃんを見たとき、『暖乃ちゃんの演じる春子で間違いない』と感じました」と感心。当時はまだ9歳で、「春子の性格や人柄は、千代と別れたあとの(継母・)栗子(宮澤エマさん)の生き方や考え方が投影されているなと、暖乃ちゃんの演技を見て感じました。そういった背景まで描ききれていたかというと自信がない部分もありましたが、それがお芝居でちゃんと見えていたので、そこが暖乃ちゃんのすごさだと思いました。まだ9歳の女の子なのに、すごいですよね」と舌を巻くほどだった。

 ◇「エール」にも魅力的な子役が次々 “二階堂ふみ似”の少女も発掘?

 「おちょやん」の前作にあたる2020年度前期の朝ドラ「エール」にも、魅力的な子役が次々と登場。主人公の古山裕一(窪田正孝さん)と、後に裕一と結婚するヒロイン・関内音(二階堂ふみさん)の少年少女時代が描かれた序盤の物語を彩った。裕一役の石田星空(せら)さん、神出鬼没の同級生・佐藤久志役の山口太幹(たいき)さん、“乃木大将”こと村野鉄男役の込江大牙(こみえ・たいが)さん、さらに音役の清水香帆さんの演技に、主演の窪田さんも当時「正直、衝撃を受けました」と明かしている。

 裕一(石田さん)、久志(山口さん)、鉄男(込江さん)、音(清水さん)は、それぞれ窪田さん、山崎育三郎さん、中村蒼さん、二階堂さんへと“成長”を遂げたが、「面影がある」という意味でも申し分ないキャスティングで、中でも音役の清水さんは、二階堂さんに「本当によく似ている」といった声が多数聞かれた。

 また同作には、「裕一に文句がある女生徒」とみ役で白鳥玉季さんも参加。2016年度前期の「とと姉ちゃん」に続く2回目の朝ドラで、短い出番ながらも、後の伏線(裕一とダンスホールで再会も、もてあそんでふってしまう)となるシーンを演じ、視聴者に強い印象を残した。

 ◇稲垣来泉は3回目の朝ドラ “クックルンのアズキ”土屋希乃が早くも話題

 そんなNHKのキャスティング力(発掘力)は、今回の「ちむどんどん」にも受け継がれたようだ。ヒロイン・比嘉暢子役の稲垣来泉さんは、「とと姉ちゃん」、「スカーレット」(2019年度後期)に続く3回目の朝ドラで、そのほか出演作品多数と、すでに実績は申し分なかったが、長男・賢秀役の浅川大治さん、長女・良子役の土屋希乃さん、末妹・歌子役の布施愛織(あいり)ちゃんも遜色ない演技を披露。“食いしん坊”“自由奔放(ちょっぴりおバカ?)”“優等生”“歌好き&癒やし”といったそれぞれのキャラ付けもナチュラルで、表現力の高さもうかがえる。

 制作統括・小林大児CPは昨年秋の時点で、「子役の皆さんが本当に沖縄の方言もよく覚えて、スタジオの中でも外でも、スタンバイ中はコロナ禍でマスクをされているんですけど、そんな憂鬱を飛び越すくらい明るく楽しく、本当の兄妹みたいに踊るように楽しく過ごしながら、盛り上げてくださった」と語っていたが、そんな現場の雰囲気も画面越しに伝わってくるほど。

 ちなみに、賢秀役の浅川さんは、以前に「エール」でヒロインの姉・吟(松井玲奈さん)と夫・智彦(奥野瑛太さん)の養子となったケン(松大航也さん)の子供時代を演じていて、良子役の土屋さんは、NHK・Eテレの子供番組「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」のアズキ役などで知られる。

 すでに土屋さんは、良子の成長した姿を演じる川口春奈さんと「似てる」「そっくり」と早くも話題となっているが、大人キャストへの“つなぎ”では終わらない、4人兄妹の物語には欠かせない子役たちの演技に、引き続き注目だ。

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