劇団ひとり:地上波ドラマで初の脚本&監督 24時間テレビSPドラマ「無言館」で感じた「使命」

スペシャルドラマ「無言館」で脚本・監督を手がけた劇団ひとりさん=日本テレビ提供
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スペシャルドラマ「無言館」で脚本・監督を手がけた劇団ひとりさん=日本テレビ提供

 8月27~28日に日本テレビ系で放送されるチャリティー番組「24時間テレビ45」。今年のテーマは「会いたい!」で、番組恒例のスペシャルドラマは「無言館」に決まった。戦没画学生の絵を展示する実在の美術館を題材にした物語で、劇団ひとりさんが初めて地上波ドラマの監督と脚本を手がけた。ドラマ化にあたり、劇団ひとりさんは「事実を並べていくのではなく、その時々の思いを丁寧に描いていく」ことを意識。自らが感じたという「使命」と、制作の裏側を聞いた。

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 ◇脚本家として企画段階から参加 「無言館」の画集に「絵の強さ感じた」

 「無言館」は長野県上田市に実在する美術館。館主の窪島誠一郎さんが自ら集めた戦没画学生の絵を展示している。今回のドラマでは、窪島さんが洋画家の野見山暁治さんからきっかけを与えられ、美術館を設立するまでを描く。遺族からの非難、建設費の問題、自身の立場など、さまざまな壁にぶつかりながらも奮闘する姿を映し出す。

 初めて地上波のドラマの脚本を担当した劇団ひとりさん。オファーを受けたのは、まだドラマの題材が決まる前だったといい、「なかなか企画の段階から関わらせてもらうことはないので、楽しかったです」と振り返る。

 その中で「無言館」の話題になり、実際に足を運んだプロデューサーが絵を見て感じた「愛する人に会いたい」という思いが、番組のテーマと合致。劇団ひとりさんも「とても興味が湧きました」と話し、「絵ってその人が魂を込めて描いたもので、ある意味分身みたいというか。絵を目の前にすると、何かが宿っているように感じるし、描いているときの空気感が伝わってくるんですよね。画集も見させていただきましたが、やはり絵の強さを感じました」と明かした。

 ◇「無理やりドラマチックにしない」 脚本作りで感じた「使命」

 脚本作りにあたっては、窪島さんの数々の著書を参考にした。資料に困ることはなかったものの、窪島さんのパーソナルな部分をどこまで描くべきか悩んだという。

 「窪島さんは数奇な運命をたどってきた方で、『無言館』の設立と全てを描こうとすると、とても2時間じゃ足りない。窪島さんの人生も興味深いのですが、今回は『無言館』の設立だけを描くことにして、戦没画学生の絵を大事にしている方々と、その絵を預かりに行く窪島さんと野見山さんに焦点を当てました」

 窪島さんの著書では、「自分自身もなぜこんなことをやっているか分からない。でも使命感を感じる」と率直な思いも明かされていた。劇団ひとりさんは「窪島さんは意味があったから動き出したのではなく、やりながら意味を見つけていった。そのあたりを今回は脚本に反映させていただきました」と語った。

 特に意識したのが「こういう事実があったと並べていくのではなくて、戦没画学生の絵を守り続けた家族や、それを受け取った窪島さん、野見山さんのその時々の思いを丁寧に描いていく」こと。「無理やりドラマチックにせず、窪島さんの経験を輪郭をはっきりさせて視聴者に届ける。それが使命だと思いました」

 ◇主人公・浅野忠信は「表情で心情を語ってくれる」 名優たちの“名演”

 そしてドラマでは、窪島さんを浅野忠信さん、野見山さんを寺尾聰さんが演じることになった。戦没画学生の遺族や恋人役には大地康雄さん、笹野高史さん、でんでんさん、由紀さおりさん、檀ふみさんと、そうそうたる名優が並んだ。

 監督業については「普段なかなか接点を持てない方々が多いので、皆さんのお芝居を目の前で見られるのはやっていて楽しいですよね」と充実感。「皆さんベテランなので、やはり最初は身構えていましたが、細かい演出も聞いてくださいますし、納得いくまで何度もやってくださる。懐が深く、良いお芝居をすることに妥協せず、協力してくださっています」と感謝する。

 主人公を務める浅野さんについては「表情で心情をうまく語ってくれる」と絶賛。「脚本を書く段階で、ものすごく想像を膨らませながら、いろいろな可能性を考えているのですが、現場で役者さんが演じると、想像していた以外のものが出てくる。浅野さんはそれが多分にあります」と話した。

 一方で「オファーの時点でイメージを持ってお願いしているので、僕がこうしてくださいと言うよりは、微調整くらいです」と撮影の様子を告白。「今回は本当に名優ぞろい。皆さん、恐らく得意ジャンルだろう芝居を見せていただいています。カメラが寄ったときの表情に何とも言えない哀愁があったりしますし、画(え)に困ることがない。役者さんの力が存分に感じられる作品になるんじゃないかと思っています」と期待を寄せた。

 ◇IMPACTors影山拓也&八木莉可子 2人の純粋さが役を魅力的に

 物語の最大の切なさを担う若手キャストには、ジャニーズJr.の人気グループ「IMPACTors(インパクターズ)」の影山拓也さん、女優の八木莉可子さんがそろった。影山さんは戦時中に生きた画学生、八木さんはその恋人を演じた。

 劇団ひとりさんは、影山さんについて「現役のアイドルにこんなこと言うのも申し訳ないですが、今どきの顔じゃないというか。昭和の好青年の顔してるんですよね。影山さんは初めてのドラマで、とても初々しく新鮮に演じてくれました」と印象を告白。

 八木さんについては「とにかく美しくて、将来大物になる方の最初を見ているんじゃないかと思うくらい、カメラを通したときにすごく絵になる。それから目のお芝居がすごく上手で。『目は口ほどに物を言う』ことがいかに大事かを分かっているんだろうなと思います」と明かし、「2人のすれてない感じが、演じる若い男女の空気感をすごく出してくれたと思いますね」と語った。

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 最後に「戦争を知らない僕たちは、想像するしかない。『分からない』で片付けてしまわずに、残酷さや痛みを想像して、その思いを引き継いでいくことが大事だと思います」と劇団ひとりさん。「このドラマを見て何かを感じてくださったり、『無言館』に足を運んで、想像して考えてくださる方がいれば」と力を込めた。

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