柊あおいさんの人気マンガを基にした映画「耳をすませば」(平川雄一朗監督、10月14日公開)でダブル主演を務める女優の清野菜名さんと俳優の松坂桃李さん。映画では原作マンガで描かれた月島雫と天沢聖司の中学生時代とその10年後が描かれ、清野さんと松坂さんは大人になった雫と聖司を演じる。清野さんと松坂さんに、役作りや「耳をすませば」への思いなどを聞いた。
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映画は、1989年に柊さんが少女マンガ誌「りぼん」(集英社)で発表したマンガが原作。月島雫(清野さん)と天沢聖司(松坂さん)が大人になった「10年後」のオリジナルストーリーと、原作の世界観を再現する「あの頃(過去)」の物語を二重構造で描く。
「耳をすませば」といえば、1995年にはスタジオジブリの劇場版アニメも公開され、幅広い年代の人に愛されている作品。それゆえ、大人になった雫役のオファーを受けたときは「もう、びっくりがすごかった」と清野さんは驚いたという。「年代を問わずにみなさんが見てきている、歴史ある作品なので、その10年後を描いたオリジナルの物語として私が雫を演じるんだ、ということにプレッシャーもあって……。撮影が始まるまでずっと緊張していました」と当時を振り返る。
その驚きは松坂さんも同様で、「話をいただいたときは『やるの!?』と思いました(笑い)。『耳をすませば』やるんだ!って。それで10年後の設定だと聞いて、『10年後の2人ってどうなっているんだろう?』という興味は大きかったです。もちろん、まず最初にプレッシャーが来たんですけど、そのあとに大きな興味が来て。あの2人がどういう成長を遂げているのか、とても楽しみでした」と心境を明かす。
オファーを受け、年齢的にも「今しかできない」と思ったという松坂さん。「僕が37、38歳だったらたぶん違う方にキャスティングされていたと思うし、今しかできないからこその挑戦、ということは感じていました。個人的には重たい作品への出演が続いていたので『なんて浄化される現場なんだ』と思っていました」と笑う。
清野さんも、これまでは現実とかけ離れた役が多かったが、雫役は年齢も近く、等身大で向き合えた。「撮影していたときは25、26歳ごろだったんですが、雫の大人になったときの葛藤と同じ悩みを抱えていて、そのときだったからこそ、すごく共感できました。役を作るのではなく、一心同体になれたと思います」と手ごたえも明かす。
雫は、児童書の編集者として働きながら夢を追い続けているものの、思うようにいかず、もがいている女性。そんな雫を演じるためにしたことは、原作とジブリの劇場版アニメを見返すことだったと清野さん。「アニメ版は物心ついたころから知っていて、自分の中に雫ちゃん像はあったんですが、作品に入るということで不安になっちゃって、何度も何度もアニメを見て、原作を読んで、そこから雫の特徴を取り入れられればいいなと思いました」。具体的には「ハキハキした感じや、あと動きに特徴があるので、歩き方とかむくれた感じを。表情が豊かで分かりやすいので意識して演じていました」と役作りを語る。
松坂さん演じる聖司は、チェリストになる夢をかなえるためにイタリアに渡るが、理想の演奏を追い求めるあまり、音楽を楽しむ気持ちを忘れてしまう……という役どころ。松坂さんも原作とアニメを何度も見直したといい、「そのときに感じた聖司くんの空気感を取り入れつつ、10年後の姿は想像しかできないので『きっとこうだろうな』と。こういう成長、ぶつかり方をして、雫のことを思いながらイタリアに行っているんだな、と想像しつつ現場に入りました」と松坂さん。特に、聖司に抱く「ちょっとした変わり者」な空気感を取り入れることを意識していたと明かす。
作家になる夢を追い続けているが、思うようにいかず悩む日々を送っている雫とは、リンクする部分もあったと語る清野さん。「自分もそうなんですが、雫は大人になったことで、常に答えを出そうとしちゃうというか……『これを言っておけばまとまるだろう』という術(すべ)を、大人になって覚えちゃう。本当は違うのに(本心が)なかなか出せなくなっちゃった。自分も当時悩んでいる時期だったので、雫とリンクして。雫が悩んでいる葛藤が、すっと自分の中に入ってきていました」と振り返る。
そんな清野さんは、撮影時期は「何をしても楽しめない」と悩みを抱えていたという。「自分の人生にぶちあたって、何をしても楽しめないし、『自分は何が好きなんだろう』とか『どうしたらストレス発散できて、前向きになれるんだろう』と思っていた時期がちょうど撮影時期だったんです。自分だけのことなので、人にも相談できなくて。結局、雫を演じるうえではとてもやりやすかったんですけど、そのあとはとにかく、時が解消してくれるのをずっと待っていましたね(笑い)。今はだいぶ、解消されました」とほほ笑む。
松坂さんにも過去、故・蜷川幸雄さんの舞台で壁にぶつかった経験があるといい、「シェイクスピアだったんですが『まったく分からない』と思って……。シェイクスピアって『月がきれいだ』と言うのを10行ぐらいかけてしゃべるんですが、どうしゃべったらいいのかも分からない。本当に頭の中が真っ白になりました」と苦笑い。だが共演の吉田鋼太郎さんに相談して救われた。「『どういうせりふまわしで、どこに感情を乗せたらいいのかまったく分からないけど、どうしたらいいですか』と言ったら『俺も分からない』と言ってくれて(笑い)。うそか本当か分からないけど気が楽になって、肩の力を抜いて取り組むことができました」と楽しそうに話す。
原作が1989年に発表され、劇場版アニメ、実写映画と受け継がれてきた「耳をすませば」に、2人はどのような魅力を感じているのか。「この甘酸っぱい恋愛って、単純にいいなって思いました」と清野さん。「昔を思い出させてもらえるような、すてきな作品だな、と。(映画を見て)これから恋愛する子たちにはワクワクしてほしい」と願いを込め、「私たちの世代や上の世代の方はそのときのことを思い出したり、世代によってさまざまな感想があると思うので、すごくそれを聞きたいです」と思いを語る。
松坂さんも「やっぱり懐かしい甘酸っぱさ。『耳をすませば』はその最上級な感じがします」と清野さんに同意し、「『ああ、懐かしい』『ああ、あったかもこんなこと』というところからくる心の浄化、それを得られる気がするんですよね。だから『金曜ロードショー』ですごい視聴率を取るし、吸引力のようなものがすごくあるんだろうなと思う。大人の方はそういうものが得られるだろうし、若い世代の方には、それがすごく新鮮に映るのかもしれないし、“エモい”と感じるかもしれない。その両方いける感じが、この作品の強みかなと思います」と魅力を語ってくれた。
※スタイリスト:下山さつき、ヘアメーク:光野ひとみ(清野菜名担当) スタイリスト:丸山晃、ヘアメーク:Emiy(エミー)(松坂桃李担当)
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