世古口凌:「探偵ロマンス」魅惑の踊り子は「ゼンカイジャー」のステイシーだった! 白羽の矢が立った理由は?

「探偵ロマンス」で世古口凌さんが演じているお百 (C)NHK
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「探偵ロマンス」で世古口凌さんが演じているお百 (C)NHK

 俳優の濱田岳さん主演のNHKの土曜ドラマ探偵ロマンス」(総合、土曜午後10時)で、オペラ館の踊り子、お百を演じている俳優の世古口凌さん。舞台のセンターで美しく舞うお百だが、女性の歌声を当てられている(歌は上白石萌音さんが担当)という複雑な役どころだ。心に葛藤を抱え、謎めいた行動も見せるお百を演じる世古口さんは、2021年から放送されたスーパー戦隊シリーズ「機界戦隊ゼンカイジャー」で“悪のヒーロー”ステイシーを演じた。それを見たNHKのスタッフがこの役に抜てきしたという。その理由や演じたお百について、世古口さんとスタッフに聞いた。

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 ◇「ゼンカイジャー」の演技で注目

 ドラマは、江戸川乱歩の作家デビュー100年の節目に、知られざる誕生秘話を描く。気鋭の脚本家、坪田文さんが書き下ろすオリジナル作品で、演出を安達もじりさん、制作統括を櫻井賢さんら、2021年後期のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」チームが手がけている。音楽・主題歌は大橋トリオさんが担当。濱田さんが後に江戸川乱歩となる平井太郎、太郎と出会う名探偵、白井三郎を草刈正雄さんが演じ、ロマンスあり、笑いあり、涙あり、アクションありのエンターテインメント活劇となる。全4回。2月11日には最終第4話が放送される。

 世古口さんは、1996年生まれ、神奈川県出身の26歳。世古口さんに白羽の矢を立てたのは、今作で安達さんと共に演出を担当している同局の大嶋慧介さんだった。大嶋さんは、「世古口さんのことを『ゼンカイジャー』で拝見して。キャラクターがどんどん深くなる役で、世古口さんのお芝居がどんどん変化していったのが、とても魅力的で。すごい役者さんがいらっしゃるなと思って、いつかご一緒したいなと。今回こういった機会があったので、ぜひお願いしたいと思って(声をかけた)」という。

 世古口さん自身は「そんなふうにつながることがあるんだって、びっくりしたのを覚えています」といい、出演が決まって「ストレートにうれしい気持ちが強かった。NHKさんに出られるのは俳優人生の中ですごく大きいことなので」と喜んだ。

 ◇“はじめまして”の役柄「期待値のほうが大きかった」

 お百役については、「特殊というか、すごく難しい役だったので、プレッシャーよりも楽しみで。この役をやらせてもらえるんだというありがたみというか、期待値のほうが大きかったですね」と振り返る。

 「僕が見てきた映画やドラマの中にあまり出てくるような役じゃなく、はじめましてという感じだった。でも、最近はジェンダーを抱えている方だったり、ジェンダーを扱っている作品が増えていたので、それらを自分で見てみたり、ジェンダー指導をしてくださった先生にいろいろお聞きして、いろんな種類があって、いろんな方がいらっしゃって、一概にこれだっていえないからこそ、お百ってすごくいろんな作り方ができるな、と。そこが難しいなと思いましたね」と同時にやりがいも感じた。

 「考えることが好きなので。とことんまで考えようと思って。考えた結果、結局分からなかったけれど」と苦笑しつつ、お百の人物像を「人一倍苦しんでいるというか、戦って生きている人。必死に生きることに対して考えていたり、自分の見られ方とか、自分対その時代の他人、生きる葛藤を抱えている人物なのかな」と考えた。

 自身とは「近い部分としては、ちょっと闇を抱えてしまうというか(笑い)」といい、異なるのは「普段あんなに美しく、自分のことを気にして生きていないので。僕自身はちょっと雑なんですよ。お百は見栄えを気にして生きているので、そこは明らかに違うのかな」と明かす。

 ◇ヒールを履いて踊る「とにかく滑って」

 役作りでは「お百は見た目が美しくないと話にならないので、体形維持は常に考えた」と明かす。「ラーメンやハンバーグが好きなんですけれど、脂っこいものはあまり食べないように抑えて、野菜中心に食べたり、撮影期間はソフトドリンクを飲み過ぎないようにして、太らないようにしていました」という。

 話し方は「男の子なんですけど、女性っぽく見られたほうがバランス的にしっくりくると思ったので、男っぽいしゃべり方をしないように、女性の話し方を研究して取り入れるようにしました」と語る。

 仕草も「座り方や歩き方、体つき、骨格も違う。女性の美しい歩き方は(普段の自分とは)全然違うので、大変でした」といい、5センチ程度のヒールを初めて履いて撮影し、「女性ってこんなに大変なんだなとしみじみ感じた。ずっと履いていると痛いし、普段から履かれている方は強靱(きょうじん)だなと思った」と笑う。

 ステージ上でヒールを履いて踊ったが、「とにかく滑って。舞うこと自体が初めてでコツをつかむのが大変だったのに加えて、ヒールを履いてやるので、よけいに焦るというか、足が思ったように動かなかったり、気づかぬところで滑ってこけて」と苦労を明かす。

 その踊りも第2話と第3話で感情が異なる舞を見せた。「2話は“見せる”という気持ちで作っていて、正面から見て美しい、これがお百かと皆さんに見せたいというのが第一優先だった」といい、「3話は物語が進んで、見せるというより、心で表現した。気持ちの揺れというか、感情の流れを自分の体で表現した」と語る。

 ◇もしパート2があったら?

 強烈なインパクトを残したお百だが、もしシリーズ化されたらもっと突き詰めたいかと尋ねると「(第3話で警察に捕まったので)釈放されればいいんですけれど。パート2があるとしたら、また舞のシーンがあったらうれしいですね」と希望を語る世古口さん。

 制作統括の櫻井さんが「脚本の坪田さんはパート2があったらお百を出したいと言っていました。パート2をやるかどうかは皆さんの反響でどうなるか。我々としてはぜひやりたいと思っていますが」と付け加えると、「えっ、うれしい。早く釈放してくれ(笑い)」と期待していた。

 世古口さんが「ゼンカイジャー」で演じた悪のヒーロー、ステイシー役はもともと台本にはなく、世古口さんのために生まれたキャラクターだった。そんな、見る人はもちろん、作る人をも引きつける魅力を持った世古口さんの今後の活躍に期待したい。

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