舞いあがれ!:“久留美”山下美月の破談の場面が魅力的になった理由

NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第83回の一場面(C)NHK
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NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第83回の一場面(C)NHK

 福原遥さん主演のNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「舞いあがれ!」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第18週(1月30日~2月3日放送)では、婚約指輪を渡され、両家の顔合わせまで進んでいた久留美(山下美月さん)とお相手の医師、八神蓮太郎(中川大輔さん)との結婚話が破談になった。このいきさつを魅力的な場面にしたのは、山下さんの演技力はもちろん、山下さんと父・佳晴を演じる松尾諭さんとの関係、強烈なインパクトを残した八神の母(羽野晶紀さん)らの存在がある。同作の制作統括・熊野律時(くまの・のりとき)さんの言葉をもとにひもといた。

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 ◇久留美が一番望んでいることは?

 1月31日に放送された第83回では、両家の顔合わせのため久留美と佳晴がカフェ「ノーサイド」で待っていると、蓮太郎は姿を見せず、母・圭子(羽野さん)が一人で顔合わせ場所に訪れ、「蓮太郎とあなたの婚約はなかったことにしていただきます」と一方的に告げた。

 2月1日に放送された第84回で久留美は、蓮太郎に「これ……」と婚約指輪を返し、「蓮太郎さんとは結婚できません」と伝える。「お父さんさえちゃんとしてくれたら、僕ら結婚できるねんで」と食い下がる蓮太郎に、久留美は「私の大事なお父ちゃんやねん。ごめんなさい。別れてください」と言い、2人の婚約は解消されることになった。

 2人が別れたことを知った佳晴は、久留美のもとへ駆けつけ、「諦めんといてくれ! 久留美! 頼むから幸せになってくれ!」と訴える。

 久留美は「お父ちゃん、私な、今でも十分幸せやで。私、全然後悔してへん」と涙を流し、「これからも、お父ちゃんはお父ちゃんなりに頑張ってくれたらそれでええ。それが、私が一番望んでることやで」と伝えた。

 SNSでは「お父ちゃん、これからしっかりせぃや!」「八神家を見返してやれ」「久留美さんには絶対に幸せになってもらいたい」とエールが送られた。

 ◇久留美は「一本筋が通った女性」

 一連のシーンの山下さんの演技について、熊野さんは「久留美をとても魅力的に演じていただけている。特に今回、不器用な父が娘のことを大事に考えて、そのためにできることをなんとかしてあげたいとジタバタする、その父の気持ちを受け止めるところをすてきに演じている」と称賛する。

 特に、別れを告げる場面では「お父ちゃんはすごく大事な存在なんだときっちり伝えている。そこをないがしろにする相手に対しては一緒になれないと。一本筋の通った女性なんだなという力強さをしっかり出していただけた」と語る。

 破談になったあとの父とのシーンでも、「きちんとお父さんの思いを受け止めて、自分の決断はこうだとはっきり伝えている。その力強さが山下さんが本来持っていらっしゃる資質とぴったり合って、潔いニュアンスを出していただいていてよかった」と評する。

 山下さんの演技については、「非常にお芝居が上手で、いろんな関係性での少しずつの変化を丁寧に演じていただけているので、とてもすてきだなと思って見ている」という。

 現場での山下さんは「すごく真面目で一生懸命やられる方。かといって(緊張で)硬くなっているということでもなく、気さくに共演者ともおしゃべりしながら、いい関係性や雰囲気を作りながらやっていらっしゃる。すごく楽しんで演じていらっしゃるなという感じはしている」といい、「リラックスして和やかな雰囲気で取り組みつつ、方言など大事なところは自分自身できっちり確認を取っている」と「プロフェッショナルな役者」という印象を持ったと語る。

 父・佳晴を演じる松尾さんとの仲は、「松尾さんを見ると、思わず『本当にもうしょうがないな』と、可愛く見えてきちゃうと山下さん自身がおっしゃっていました(笑い)。松尾さんも気さくな方なのでおしゃべりしながら、時にぼけたり、突っ込んだりしてやっていただけるので、親子関係としてもいい感じでキャッチボールができている」という。

 ◇八神の母の登場は「予想以上のインパクト」

 ワンポイントで登場した八神の母役の羽野さんについては、「出てきた瞬間、うれしくなっちゃいました。羽野さんだったらインパクト強くやっていただけるのではないかと、ワンポイントなんですけれどとお願いして、予想以上のインパクトでやっていただけた。非常に面白かった」と喜ぶ。

 「せりふからして丁寧すぎて憎らしい感じを、すてきに羽野さんにやっていただけた。ほんのちょっとの仕草から、いいところの医者の一族の人間で、すごくプライド高くて……と一瞬でどういう人なのかが分かる。キャラクターの背景をきちんと表現していただいた。その表現力は、やはりさすが」とたたえ、「このお母さんがいたら嫁に行きたくなくなる感じを、非常に説得力を持ってやっていただけた」と絶賛する。

 最後は元ラガーマンの佳晴にタックルで止められていたが、羽野さん自身は、「すごく楽しかったと言ってらっしゃいました」と明かした。

 「舞いあがれ!」は、6日から始まる第19週で悠人(横山裕さん)の挫折が描かれる。ヒロイン舞をはじめ、幼なじみの久留美、貴司(赤楚衛二さん)もこれからどう舞い上がっていくのか、見守り続けたい。

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