大奥:冬ドラマ最大の発見となった“時代劇俳優・冨永愛” キャスティングの背景にあったもの

「ドラマ10『大奥』」で徳川吉宗を演じた冨永愛さん (C)NHK
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「ドラマ10『大奥』」で徳川吉宗を演じた冨永愛さん (C)NHK

 竜星涼さん主演の連続ドラマ「スタンドUPスタート」(フジテレビ系)が3月29日に最終話を迎えたことで、1月期の主要なドラマの放送は全て終了した。数字上(視聴率)では特筆すべき点はなかった今年の“冬ドラマ”だが、その中で、視聴者に新鮮な驚きを提供したのが、NHK「ドラマ10」枠(総合、火曜午後10時)で放送された「大奥」だ。特に“八代将軍”徳川吉宗を演じた冨永愛さんは、「冬ドラマ最大の発見」と言えるほど、大きな注目を集めた。時代劇初挑戦でありながら、抜群の存在感でドラマ人気をけん引した冨永さん。キャスティングの背景にあったものとは……。

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 ◇キャスティングで重視した、これまでのイメージと異なる“新鮮な発見”

 「大奥」は、よしながふみさんの同名人気マンガが原作。若い男性のみに感染する奇病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」の影響で、男性の人口が女性の4分の1に激減した江戸時代、将軍職は女性へと引き継がれ、大奥は「美男3000人」と称される男の世界に……というパラレルワールドが舞台の時代劇だ。

 脚本は、TBS系のドラマ「JIN-仁-」シリーズや「天皇の料理番」(2015年)、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017年)などで知られる森下佳子さんが手掛けている。

 “Season2”が制作され、今年秋にスタートすることが決定している本作で、目を引いたのが、キャスティングの巧みさだ。冨永さん以外にも、家光役の堀田真由さん、綱吉役の仲里依紗さんがそれぞれ当たり役になったほか、水野祐之進役の中島裕翔さん、万里小路有功役の福士蒼汰さん、右衛門佐役の山本耕史さん、加納久通役の貫地谷しほりさん、春日局役の斉藤由貴さん、柳沢吉保役の倉科カナさん、家重役の三浦透子さんらの演技も話題となった。

 ドラマを企画したNHKの岡本幸江プロデューサーは、キャスティングにおいて、そこに“新鮮な発見”があるかどうかを重要視したといい、「男女が逆転した、これまでに描かれたことのない世界なので、特に将軍を演じていただく方については、これまでのイメージと異なる、登場されたときに新鮮な発見がある、という点を重視しました」と明かしている。

 ◇“吉宗”冨永愛の誕生のきかっけ 過去に番組で「男役で時代劇に出たい」と

 “新鮮な発見”という意味でもぜひ知りたいのが、吉宗役の冨永さんの起用の経緯だ。現代女性的なスタイルを持つ冨永さんを「時代劇」で使うという斬新なアイデアは、どこから生まれたのだろうか。実は冨永さん自身が、バラエティー番組「日曜日の初耳学」(MBS・TBS系)に出演した際、「男役で時代劇に出たい」と語っていたことが事の発端だという。2021年7月に放送された同番組では、冨永さんが「暴れん坊将軍」のテーマ曲を口ずさむ場面もあったとか。

 岡本プロデューサーは「『これまでにない新鮮な方に演じていただきたい』と考えていたとき、脚本の森下佳子さんが、『冨永愛さんがテレビでこうおっしゃっていた』と教えてくださって、『これ、まんまうちの吉宗では!?』となったのがきっかけでした」と振り返る。

 さらに、冨永さんが他局のドラマに出演された際の「凛としたたたずまい」が印象に残っていたことも、「将軍を説得力を持って演じていただけるのでは」と思った点と話す岡本プロデューサーだが、実際に吉宗を演じる冨永さんを見て、“新鮮な発見”はあったのだろうか。

 「きれい! そしてカッコいい!」と率直な感想を口にしつつ、「世界中のランウエーで、肩で風を切って歩く、というイメージがあり、そのカッコよさもあるのですが、芝居の上では、実は非常に細やかに相手のお芝居を受けてらっしゃいます」と俳優ぶりを評価。さらに「バックステージでも、朗らかにスタッフ・キャストとコミュニケーションをとってらっしゃってそのキャッチボールのさまが、ご本人のお芝居の本質にあるのだな、と感じました」と印象を語った。

 ◇大政奉還まで初映像化する“Season2” 期待の新キャストも登場

 秋スタートの“Season2”は、引き続き、森下さんが脚本を執筆。吉宗の遺志を継ぎ若き医師たちが「赤面疱瘡」撲滅に向けて立ち上がるその後の物語から、女将軍をはじめとした幕府の人々が、“江戸城無血開城”のために奔走した幕末・大政奉還の物語までを初めて映像化する。

 岡本プロデューサーは、過去に「おんな城主 直虎」などでタッグを組んできた森下さんの脚本の魅力として、「抜群の構成力、心から共感できるせりふ、困難を乗り越えるユーモア」などを挙げ、「現代劇も時代劇もどちらも魅力的だと思いますが、骨太で普遍的なメッセージがあるのでスケールの大きな設定(例えば時代劇)で森下さんの物語を見たくなるのではないかと思います」と話していた。

 また、“Season2”では新キャストとして、平賀源内を鈴木杏さん、青沼を村雨辰剛さん、黒木を玉置玲央さんが演じることが決定。早くも作品のファンから「神キャスティング」との声も上がっており、再び“新鮮な発見”をまた味わわせてくれそうだ。

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