福岡堅樹さん:元ラグビー日本代表が今の日本代表に伝えたいこと 「後悔が残らないような大会に」

福岡堅樹さん=WOWOW提供
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福岡堅樹さん=WOWOW提供

 9月に開幕するラグビーワールドカップ・フランス大会。8月27日にWOWOWプライムで放送、WOWOWオンデマンドで配信される大会前ラストマッチ「ラグビーテストマッチ2023サマー・ネーションシリーズ『イタリアVS日本』」に向け、元ラグビー日本代表の福岡堅樹さんがインタビューに応じ、オール・ジャパンへの思いを語った。

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 ◇福岡堅樹さん

 ーー23年ワールドカップ・フランス大会に出場する日本代表33選手が出そろいました。大会登録メンバーをご覧になってどのように感じましたか?

 今の日本のベストメンバーであり、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)がやりたいラグビーを体現できる選手たちが選ばれたと理解しています。FW(フォワード)が18選手に対してBK(バックス)が15選手ということで、BKを少し多めに入れたのかなという印象です。

 ーー今もメッセージをやり取りしているような、特に仲のいい選手はいますか?

 まずは同期のHO(フッカー)坂手淳史ですね。他にもFL/No.8(フランカー/ナンバーエイト)の姫野和樹とは今でもたまに一緒にゲームをやる仲です。そして、前回大会は同じWTB(ウイング)で、今もがんばっているFB(フルバック)/WTBの松島幸太朗も同い年としてすごく期待していますし、応援しています。

 ーー福岡さんから見て、今回選ばれたWTBの選手についてはいかがでしょうか?

 個々の能力が高く、それぞれ違った味を持っている選手たちが集まったので、どの対戦相手にどのWTBの選手を選ぶのか、という点を楽しみにしています。

 ーー仲がいいという松島幸太朗選手ですが、今回は主にFB(フルバック)で出場する見込みです。

 彼はもともとFBができる選手です。キック力もディフェンスのレンジの広さもあり、自分で走るだけでなく、周りを見て他の選手を使うこともできる選手なので、彼が15番(FB)に入ることで対戦相手のディフェンスのオプションが増えることになります。ですから相手にとっては脅威になるのではないでしょうか。

 ーーBKの前回ワールドカップ経験者は15選手中5選手と、占める割合は高くありません。新戦力が増えたことに関してはいかがでしょうか?

 前回大会を経験していない選手は試合の中で(世界レベルに)適応していく必要があります。時間をかけて適応していくことのメリットもあると思いますが、やはり経験のある選手が軸となってくれればそれだけで違うので、そういった選手がうまく試合運びをしながら新しい選手たちをうまく使ってくれればいいと思っています。

 ーー今年7月から8月にかけての日本代表戦から感じたことをお願いします。

 苦労した部分はあると思います。もちろん勝敗だけを見ればいい結果だったとは言い難いですが、試合を重ねていくうちに日本代表がどういったアタックをしてトライを取りたいのか、見えてきました。その点はポジティブに捉えています。日本代表がやりたいのはボールを回して展開していくラグビーで、おのずとパスの回数も増えます。夏の日本は湿度が高く、ボールが滑るなどやりづらいなかでの試合だったと思いますので、その状況下で自分たちらしい形が示せただけでも収穫と言えるではないでしょうか。

 ーーたしかにWTBでトライを取り切る場面が増えてきました。

 そこがようやくかみ合ってきて、WTBの選手がどういった形でボールをもらいたいのか、周りの選手はWTBにどういった形でボールを渡せばトライまで持っていけるのか、というイメージを少しずつチームの中で共有できてきているのではないかと思います。

 ーーそんな日本代表にとってワールドカップ前のラストマッチとなるイタリア戦が8月27日に行われます。福岡さんは2014年に1回、2018年に2回対戦している相手ですが、最近のイタリアの印象はいかがでしょうか?

 着実に力をつけていますね。自分が対戦した当時よりも一皮むけて強くなっています。シックス・ネーションズではまだ勝ち切れない試合が多い一方で、相手に大きく引き離されるケースが少なくなっていますし、ディフェンスの堅さ、FWの強さ、キックの正確さなどを軸にうまく戦っていると思います。

 ーー昨年のワールドラグビー年間最優秀新人賞に輝いたFBアンジェ・カプオッツォ選手は、福岡さんのように非常に足の速いプレイヤーです。

 彼の走りは間違いなく世界中の脅威になります。これまでのイタリアにはスピードランナーで相手ディフェンスを崩すイメージがありませんでしたが、そんなイタリアをさらに飛躍させる可能性を秘めた選手だと思っています。堅実な試合運びをするハーフ団も印象的で、彼らのゲームメイクも勝敗に大きく影響してくるでしょう。

 ーーそんなイタリアに対して、日本代表はどのあたりに勝機を見出せそうでしょうか?

 イタリアはディフェンスが堅いチームでもありますので、まず日本代表は無理なアタックばかりするのではなく、しっかりとエリアを意識してパスとキックの割合をうまく織り交ぜながら、相手に的を絞らせないようなアタックで戦う必要があるのではないかと思います。

 ーーまた、この一戦からほどなくしてワールドカップが開幕を迎えます。日本代表は対戦順に、チリ戦、イングランド戦、サモア戦、アルゼンチン戦を迎えますが、特にどの試合が重要になるでしょうか?

 ワールドカップは流れを作ることが大事です。その意味ではまず、初戦のチリ戦で緊張をほぐして、自分たちらしいプレーをしたうえで次のイングランド戦に集中する、そんな状態を作ってほしいと思っています。

 ーー日本代表はどのような結果を残してくれるでしょうか?

 選手たちは優勝を目標に掲げていますので、その気持ちを応援したいと考えています。ただ、やはり前回大会で初めて達成したベスト8を継続することが大事です。ホーム(19年ワールドカップ日本大会)でのベスト8とはまた意味合いが変わってきますので、まずは決勝トーナメント進出にフォーカスしてほしいと思っています。

 ーー福岡さんにとって、2大会連続出場したワールドカップはどんな大会でしたか?

 ずっとワールドカップを目標にラグビーを続けてきましたので、ラグビー人生の最終目標にしても差し支えないぐらいの素晴らしい大会だったと思っています。今の選手たちもメンバーに残るために言葉では言い表せないくらい苦労してきたはずです。まずは選ばれたことに喜びを感じて、自分たちのやりたいことを楽しんでやってほしいと思っています。そしてワールドカップの成功が日本のラグビーの盛り上げに直結しますので、いい結果を期待しています。ただ、19年ワールドカップの結果がどうしてもプレッシャーになると思いますので、できるだけそれを意識しないようにして集中してほしいと思っています。

 ーー最後に、あらためて日本代表への激励、メッセージをお願いします。

 選手たちにはこれまで4年間しっかりと準備してきたものを全て出し切ってほしいです。そして何より、終わった時点で後悔が残らないような大会にしてほしい、という思いが一番強いですね。もちろん結果を求めることも間違いなく必要ですが、やはり個人個人の目標も達成できる大会にしてほしいと願っています。

 *……WOWOWでは8月26日を「日本代表を応援しよう!WOWOWラグビーDAY」と位置付け、同日午前11時からさまざまな特別番組をWOWOWライブ・WOWOWオンデマンドで放送・配信する。「ラグビーテストマッチ2023サマー・ネーションシリーズ『イタリアVS日本』」の様子は8月27日午前1時からWOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信する。

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