緒形直人:「おむすび」で19年ぶり朝ドラ出演 すべてを失った“孝雄”は「しっかりつらい顔をした演技を」 役作りで「撮影中もそうでないときも独りでいるように」

連続テレビ小説「おむすび」で渡辺孝雄を演じる緒形直人さん(C)NHK
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連続テレビ小説「おむすび」で渡辺孝雄を演じる緒形直人さん(C)NHK

 俳優の橋本環奈さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おむすび」(総合、月~土曜午前8時ほか)で、一人娘の真紀(大島美優さん)を阪神・淡路大震災で亡くした靴職人の渡辺孝雄を演じている緒形直人さん。2005年度前期の朝ドラ「ファイト」以来、19年ぶりの朝ドラ出演となる緒形さんが、出演が決まった時の思いや、演じる役について語った。

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 ◇19年ぶりの朝ドラ出演に喜び「心地が良いです」

 緒形さんは出演が決まった時を振り返り、「『ファイト』以来、19年ぶりの朝ドラ出演になります。社会派ドラマや若者のドラマが多い中で、こうした日常を丁寧に描く井戸端会議のような物語は、朝ドラならではと感じているので、お声をかけていただきうれしく思っています。BK(NHK大阪放送局)での撮影は雰囲気が良いですね。心地が良いです」と語る。

 演じる孝雄は、さくら通り商店街で靴店を営む、腕利きの靴職人。妻と娘を亡くし、商店街の中で孤立しているキャラクター。緒形さんは、孝雄について「不幸な役どころですね」と説明する。

 「母子家庭で育ち、弟のために学校を辞め、家庭を支えていた苦労人という設定です。苦労しましたが結婚し、子供が生まれようやく幸せというものを感じていたところ、母を亡くし、妻を亡くし、男手一つで懸命に一人娘を育ててきた。そうした状況で阪神・淡路大震災に被災し、すべてを失って12年間、まだ一歩も前に進めていない男です。でもこういう人は、地震大国である日本にはおそらくたくさんいるのでしょう。僕自身だったとしても塞ぎ込んでいたと思います」

 そんな孝雄だが、物語が進むにつれて心情の変化も描かれるという。緒形さんは「自分の不幸にとらわれていた孝雄が少しずつ前を向く様子が描かれていきます。聖人(北村有起哉さん)が靴の修理を頼むのもきっかけの一つ。修理したいと靴職人の本能が芽生えたのでしょう。それでもまた悲しみの殻に閉じこもる。何年も一歩も前に進めなかった男が一歩片足を出そうとしても出せない。そんな簡単なものではないですよね。その葛藤や苦しさを丁寧に演じていけたらと思っています」と意気込みを述べた。

 ◇関西弁の役演じ「別のナレーションの仕事で引っ張られてしまいました」

 神奈川県横浜市出身の緒形さんは、「関西弁で演技するのがこれまであまりなかったんですよ。なので、何度も音源を聞いて練習していたら、先日、別のナレーションの仕事で、初めてイントネーションを指摘されるという、自分にとってショックな出来事がありました。関西弁に引っ張られてしまいました」と笑う。

 役作りについては、「なるべく孝雄に近づけるように、撮影中もそうでないときも独りでいるようにしています。台本もあえて孝雄に関係する部分以外は、流し読み程度にしているんです。余計な情報を入れて、孝雄の演技に影響を出したくないから。それだけ孝雄の世界は閉じているんだと思うし。食事のお誘いもいただくのですが、チームの中で異端児でありたいのであえてお断りして、オフの時間も独りでいるようにしていました」と明かす。

 最後に、「今回、(中華料理店『太極軒』の店主・明石太一役の)堀内正美さんともご一緒しますが、彼から『親を亡くすことは過去を失くすこと。恋人や妻を亡くすことは今を失くすこと。子を亡くすことは明日を失くすこと』と教えていただきました。心の復興は人それぞれ違います。阪神・淡路大震災だけでなく地震大国である日本で、こうした人が現実にいることを絶対に忘れないでほしい。そういった意味でもしっかりと悲しむ、しっかりつらい顔をした演技を朝から届けていきたいですね」とメッセージを送った。

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