安田顕&水上恒司:「積み上げた経験は誰にも奪えない財産」 「連続ドラマW 怪物」でダブル主演

「連続ドラマW 怪物」でダブル主演を務める安田顕さん(左)と水上恒司さん
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「連続ドラマW 怪物」でダブル主演を務める安田顕さん(左)と水上恒司さん

 韓国の人気サスペンスドラマをリメイクした「連続ドラマW 怪物」が、7月6日からWOWOWで放送・配信される。今回のWOWOW版でダブル主演を務める俳優の安田顕さんと水上恒司さんに、作品の印象や役作り、お互いの印象などを聞いた。

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 オリジナルは「梨泰院クラス」など数多くの作品を制作してきた韓国大手スタジオSLLが制作し、韓国で最も権威あるアワード「百想芸術大賞」で、2021年の作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した話題作だ。

 羽多野町に住む女子大生の富樫琴音が、自宅の庭に指の第1関節だけ残して失踪するという事件が発生し、未解決のまま25年が過ぎる。琴音の双子の兄・富樫浩之(安田さん)は警察官になり、羽多野署生活安全課に勤務。そこにキャリア警察官の八代真人(水上さん)が異動してくる。気の合わない2人だが、課長の森平(光石研さん)の命令でペアを組むことになるが……と展開する。

 ◇安田顕「人間の心に通っているものは変わらない」

 --それぞれ演じられた役について、どのような人物と捉えましたか?

 安田さん 振り返ると当たり前の話ですが、富樫という人間が悲しいから笑っていることを、自分の中で見つけることができたのがうれしかったです。富樫はそういう人間、そういう境遇なのだろうという。

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 撮影中、原作の脚本を手がけたキム・スジンさんにお会いする機会があったのですが、原作の台本をくださって、そこに手書きで「富樫の孤独を満たしてください」という文字が書かれていました。それを見たとき「怪物」というタイトルと僕の中では何かつながりました。キム・スジンさんは各キャラクターにものすごいバックボーンを作られていて、「ここのシーンではこういうアプローチをしましたが合っていますか」といった質問にすべて答えていただけて、しかも返ってきた答えと自分の思ったことがほぼ合っていたので、それはうれしかったです。

 水上さん ドラマの構成上、富樫の“怪物さ”が最初に出てくると思うんですね。そことの比較として真人の熱血漢や正義感といったもので、僕は差別化を図りたかった。それがより鋭利なものとして、富樫にとっては追い詰めていく相手でもあり、作品の中では街にやって来た異質な人間としての表現になればいいなとも思っていました。

 どこか知的で冷静さもありながら、それがあふれちゃう瞬間を、わかりやすい体のアクションとか声の張り具合ではなくて、見ている方がそこに怪物さを感じられるような、若さゆえの怪物さとは何なのだろうなと意識しながら演じました。

 --安田さんはキャラクターの設定を監督やプロデューサーと話し合ったそうですが、具体的にはどのようなことを?

 安田さん 今回、アプローチとして、原作の「怪物」を繰り返し見ました。(ドラマの)仕組み上、私の役は時系列がバラバラなので、ともすると(富樫は)謎の行動に出るのですが、キム・スジンさんに聞くわけにもいかない。その答えはそれぞれが持つものだからこそ面白いのですけど。まず時系列に並べ直して、この時の彼の行動はなぜ取ったのか。どういうものが心の奥に流れているのか。そういうものも大事にしました。

 原作で富樫に当たるイ・ドンシクが持っている本質というものと、日本版における人柄の改訂は、作品として非常に効果のあることですし正解ではあるとは思います。ただ人格における本質に若干の違和感もありました。そういうところは自分が納得できるまでお話をさせていただいたり、こういうふうにしようと現場で変えさせていただいたこともありました。

 --日本風にアレンジされたものを原作に近づけたということでしょうか。

 安田さん 例えば文化だったり、風習だったり、生活習慣、そういったものが日本と韓国では違います。街も違うし、人も違う。であれば、それはこちらが言うことは何もないですが、人間の心に通っているものは、同じ人として変わらないでしょう。そこにおける違和感やニュアンスにおいて少し、一役者として申し訳ないけど自分の中で通したいからご相談させてくださいと話をさせていただき、監督やプロデューサーに汲み取っていただきました。もちろん設定や生活習慣が変わることは当然なので、そういうことに対して何かを言ったことはありません。

 --水上さんはどういうことをされたのでしょうか?

 水上さん 僕は原作を3話ぐらいまでしか見ていなくて。僕の経験上にはなりますが、小説だろうとアニメだろうと(映像化すると)別ものになっていくと考えています。それよりも台本から汲み取ることに集中しないといけない。むしろそこに注力することで、ようやく安田さんと同じ舞台に立てるぐらいの意識でやっていました。

 安田さんと対面して、安田さんの言葉を聞いて、安田さんの作る富樫を見て、自分が考えてきたものをぶつけていく。結果的に「こっちの方が良かった」のようなチューニングを、安田さんとやっていました。演出のお二人はもちろんですが、今回に関しては安田さんとのチューニングの方が僕の中では大きくて。経験含め、体含め、メンタル含め、そこが一番僕にとっては効率的だなと判断してやりました。

 ◇水上恒司「今は全部取り入れることを大事に」

 --初共演となりましたが、共演前のお互いの印象と、今回の共演で変化したことなどがあれば聞かせてください。

 安田さん 柔らかな雰囲気で礼儀もしっかりしていて好青年だなと感じました。ところが今作の現場に入ったら、意外と寡黙だなと思いましたが、役に入っていたのでしょうね。一番覚えているのは撮影の合間に2人でファミレスで食事したことで、楽しく会話できました。

 --水上さんをご覧になって、ご自身の20代と比べていかがでしょうか。

 安田さん 当時の私はナレーションとか、朝のバイキングと喫茶店のバイトをしながら、劇団で稽古していましたね。あえてこういう言葉の伝え方をしますが、25歳、今年26歳の水上恒司さんが今、世間でどういう評価を得ているか。これが答えだと思います。それは年齢ではなく、彼が今まで積み上げてきたもの、感じてきたもの、経験というもの、こればかりはうそがないから。

 今後、考え方が変わったり、いろんなものに流されたりすることもあるかもしれないけれど、自分が積み上げた経験だけは絶対誰にも奪えない、自分の財産。その積み上げてきた経験が今の水上恒司を作っているわけであって、そこに年齢は関係ないのではという気がします。

 --20代のうちにやるべきことなど、水上さんへのアドバイスは何かありますか。

 安田さん 私を観察してくれて取り入れてくれているようですが、ぐるぐる回ること、段取りのときに現場で芝居を突き詰めること、歯を磨いたときにえずくこと、この三つは今すぐ削ってください。なくても大丈夫です(笑)

 水上さん 削るのは僕の判断ですからね(笑)。今のところ、ぐるぐる回ることと詰めることは大事だなと思います。えずくはすでに削っています。突き詰めるというのは、ちゃんと対話するということ。これは人それぞれのやり方であって、何が正解とか不正解はないですからね。基本的に今は全部取り入れてみることを大事にしています。咀嚼(そしゃく)して、1回飲み込もうとする。その後にえずけばいいと思っています。

 --今後に向けてやっておくべき作業だと。

 水上さん 取り入れようとしないというのは、この年齢ぐらいだと陥りやすいところだと思います。いかに自戒の念を込めてえずく手前まで行けるかというのが大事だと考えています。

 安田さん いい例えだね。いろんなものを取り入れて咀嚼して飲み込む。自分の血となり肉となるものは必ず残るだろうと思います。

「連続ドラマW 怪物」は7月6日スタート。日曜午後10時からWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドで放送・配信。全10話で第1、2話は無料放送。(取材・文・撮影:遠藤政樹)

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