ばけばけ:なぜ、ラシャメンに? 本音をぶつけ合った“母”フミとトキ 視聴者が最もクギヅケになった場面は? 第35回の注目度

連続テレビ小説「ばけばけ」のロゴ (C)NHK
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連続テレビ小説「ばけばけ」のロゴ (C)NHK

 高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第35回(11月14日放送)で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのだろうか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた割合を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、ピークは午前8時10分の72.7%だった。

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 「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキと、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘、小泉セツと、「怪談」などの著作で知られるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。

 ◇80%超連発の第34回から一転、70%超が2分だけ

 第35回は、トキ(高石さん)がヘブン(トミー・バストウさん)の女中になることで起こる騒動を描く第7週の“最終回”。タエ(北川景子さん)が物乞いをする姿を目撃し、トキの決断の背景をさらに感じ取った様子の松野家の面々が、ヘブンの女中をすることを受け入れるのかどうかが描かれた。

 テレビの前の視聴者のうち、画面に視線がクギヅケになっていた人の割合を示す「注目度」は、80%超を頻発し「ばけばけ」の過去最高値も記録した第34回から一転、第35回では70%超も2分だけという、やや低調な結果になった。

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 家族にヘブンの女中であることが知られてしまったトキ。さらに司之介(岡部たかしさん)、フミ(池脇千鶴さん)、勘右衛門(小日向文世さん)に、物乞いとなったタエ(北川景子さん)の存在も知られてしまった。トキがタエのことを黙っていたことについて家族が問おうとした時、三之丞が松野家を訪ねてくる。

 三之丞は「やっぱり自分の力で稼いだお金じゃないと……」と言い、トキから受け取った10円を返そうとする。そして、このお金はトキが亡き父・傳(堤真一さん)から預かっていたものだと説明すると、フミは「違います」と即答し、「ヘブン先生からもらった20円のうちの10円よね?」とトキに問いかける。

 トキは一度は否定するが、「母の言うとおり、これはヘブン先生からもらったお給金の半分。物乞いになってしまわれたおば様をお救いしたくてお渡ししました」と話す。続けて「本当言うと、あの仕事を引き受けたのもうちの借金のためではなく、おば様のあのお姿を見てしまったからです」と明かすと、フミは「そげかね」とつぶやき、家を出ていく。

 ◇ぶつかり合う娘と、育ての母 視聴者の視線をクギヅケ

 「そげかね」とつぶやいたフミが家を出ていくあたりからが午前8時6分台(70.8%)で、この日最初の70%超。トキは慌てて追いかけると、「ごめんなさい」と謝罪。フミが「おタエ様のためならラシャメン(洋妾)になってもええと思った……」「生みの親のためなら体を売ってもええと……」と感情をぶつけると、トキは「全部違う! 全然違うけん! 生みとか、育てとか、そげなこと関係ない!」と懸命に否定し始める。

 育ての母と娘。それぞれ、屈折した思いを抱えた2人が本音をぶつけ合う、なかなかの名場面だ。注目度が上がるのも納得だ。

 続く午前8時7分~9分は注目度が67~68%とやや下がる。そんなトキとフミのやり取りを聞いていた三之丞が「おトキの家族から外してほしい」と言うと、自分の力でタエを救いたいと話し始める場面だ。トキは「今そげなこと言ってる場合だないけん!」と語気を強め、「自分を捨てたの。自分を捨てて家族のためにラシャメンになろうとしたの。おば様をお救いしたいのなら、自分を捨ててこれをもらって!」「それでも自分でなんとかしたいなら、必死で働いて、いつかこのお金返してよ!」と伝える。

 この後、午前8時10分に注目度が72.7%まで急浮上し、この日の最高値を記録する。トキは毎月10円を三之丞に渡すと言い、「ええね? もらってくれますよね?」と問いかける。何も答えない三之丞に、黙っていることに耐えられなくなったフミがついに口を開く場面だ。

 「ああ、もう。どっちかね。もらうの、もらわんの、どっちかね」。続いて「言っちょくけど、もらわんはないけん」と言うと、三之丞は「も……もらいます」とつぶやく。そんな三之丞を、フミは「頂戴いたしますでしょ!」と一喝。三之丞は「頂戴いたします!」と頭を下げ、「ありがとう」と9円を握りしめる。

 最初の“山”午前8時6分台でやや距離ができた母と娘の関係が、午前8時10分で“共通の敵”が生まれたことで距離が縮まった。つながりが深い名場面が、それぞれ注目度の“山”になった第35回だった。

 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)

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