ばけばけ:小谷との“ランデブー”は仰天の急展開 視聴者がクギヅケになった「午前8時11分」はどんな場面だったのか? 第50回の注目度

連続テレビ小説「ばけばけ」のロゴ (C)NHK
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連続テレビ小説「ばけばけ」のロゴ (C)NHK

 高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第50回(12月5日放送)で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのだろうか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた割合を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時11分の70.0%だった

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 「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキと、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘、小泉セツと、「怪談」などの著作で知られるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。

 ◇“ランデブー”の場所は3度目の清光院

 第50回は、ついに実現したトキ(高石さん)と小谷(下川恭平さん)の“ランデブー”の顛末と、ヘブン(トミー・バストウさん)の反応が描かれる。

 テレビの前の視聴者のうち、画面に視線がクギヅケになっていた人の割合を示す「注目度」はこの日、主に60%台をうろちょろするグラフになった。特に“ランデブー”が佳境に入った後半になると、65%台後半に次第に集約され、視聴者の視線を一定程度つかんで離さなかった状況がうかがえる。

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 注目度のグラフは何度か小さな“山”を作るが、当然いずれも“ランデブー”がらみ。小谷が松野家の長屋を訪ね、仕事に出かける前のトキに“ランデブー”の約束を再度確認する午前8時1分(66.1%)が最初の頂点となった。

 オープニングで注目度がいったん下がった後、午前8時5分に67.2%まで上昇し、2度目の頂点に。ここは、小谷の案内で到着した“ランデブー”の場所は、松江の城下町のはずれにある清光院で、トキのテンションががぜん上がってくる場面だ。トキが清光院を訪れるのは、3回目。傳(堤真一さん)との“ランデブー”、銀二郎(寛一郎さん)との見合いの後に、2人で散歩したのも清光院だった。トキにとっても、視聴者にとっても思い出の場所というわけだ。視聴者の注目度が上がるのもよくわかる。

 清光院は怪談「松風」で知られる場所。美しい芸者、松風は嫉妬心にかられた若侍から逃げようと清光院に駆け込むが、寸前で斬られ、息絶えてしまう。亡くなった松風が見つかった位牌堂の石段に残された血は拭っても拭っても消えることがなかったと言われている。

 清光院は、松江の城下町のはずれ、亀の像が登場した月照寺の近くにあるが、ドラマで登場した清光院は別の場所でロケをしている。本物の清光院より、ずっと山深い雰囲気だ。そのためか、ドラマでは、位牌堂ではなく、井戸にスポットを当て、松風が身を投げた井戸の前で、謡曲の「松風」を歌うと、松風が幽霊となって出てくるという設定になっている。

 ◇ピークはトキの「違いますよ」

 3回目の頂点になる午前8時9分(67.4%)は、突然小谷が、井戸の前で謡曲の「松風」を歌い出す場面。トキは大慌てで止めようとするが、小谷は歌い続ける。そして、井戸の様子を確認すると「やっぱり出ませんでしたね、すみません。私…無理です」と突然しゃべり始めるあたりまでが9分台だ。

 近代化を急ぐ明治の日本では、非科学的な怪談話にきちんと向き合うような人は少なかった。小谷もこの時代の標準的な姿勢の学生だといえる。「目に見えないもの」への姿勢は、トキやヘブンと、小谷らとは大きく違っていて、「ばけばけ」のメインテーマの一つといえる。

 4回目の頂点は午前8時11分で、この日の最高値70.0%を記録した。小谷はトキが怪談好きだと聞いてから怪談を読んでいたが、全く面白さが理解できなかったという。そして「おトキさんには大変申し訳ないですが、時間の無駄です」とまで言い放つ。トキが怪談について「でも私は、好きだけん。大好きだけん」と話した後が11分台だ。

 トキの「大好きだけん」を、自分への告白と勘違いした小谷は「お気持ちはうれしいんですが……ごめんなさい」と頭を下げて立ち去る。勝手に好きになられ、一方的に断られたトキは一瞬、事態がのみこめなかったに違いない。

 「違いますよ。好きだというのは怪談のことで、あなたのことではないというか」。急ぎ、大きな声で説明するが、急ぎ足でその場を去った小谷には聞こえなかった。呆然(ぼうぜん)とするトキの表情が楽しい場面だった。恐らく制作者も最も見てほしかった場面で注目度がピークを迎えたといえそうだ。

 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)

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