「シークレット・サンシャイン」(2008年)など、韓国を代表する女優チョン・ドヨンさんと、日本ではテレビドラマ「赤と黒」で人気が出たキム・ナムギルさんが初共演した韓国映画「無頼漢 渇いた罪」(オ・スンウク監督)が、3日から公開される。逃亡中の殺人犯の恋人と刑事の微妙な引かれ合いを、ハードボイルドに仕立てている。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
チョン・ジェゴン(キムさん)は、殺人課の刑事。事件の容疑者パク・ジュンギル(パク・ソンウンさん)を追い、その恋人キム・ヘギョン(チョンさん)がマダムを務めるバーで容疑者の元刑務所仲間を装って働き始めた。ジェゴンを怪しんでいたヘギョンだったが、一緒に仕事をするうちに心を許していく。ジェゴンは、恋人のために身を粉にして働くヘギョンを傍らで見ているうちに、罪悪感にさいなまれる。しかし、任務を遂行するため、ヘギョンが容疑者と接触する機会を待ち続け……という展開。
ヘギョンの恋人は、殺人犯として逃亡中。寂しいときに側で過ごせば、情が移るというもの。突然現れた男ジェゴンに次第に心を許していくヘギョン。ジェゴンは、恋人の借金を返すためによろいを着て生きる不幸なヘギョンに心を動かされていく。しかし、2人には隠された本心があった。ヘギョンは恋人と一緒に逃げたい。そして、ジェゴンには容疑者を逮捕する任務がある。揺れ動くこの男女は、一体どうなってしまうのか。スクリーンからは、常に不安と期待が入り混じった雰囲気が漂っている。ジェゴンは、刑事として手荒いこともやってきたようだ。ヘギョンは借金を背負っていて失うものはない。中年同士だからこその過去のしがらみが、映画を味わい深いものにしている。ジェゴンを物語る体の傷あと。それをなでるヘギョンの色っぽいこと。主演女優賞受賞歴だけでなく、第67回カンヌ国際映画祭では審査員も務め、“カンヌの女王”と呼ばれるドヨンさんが演じるからこそ、深い女の悲しみも感じられる。男たちは身勝手で粗野だが、そこがカッコいい。安っぽいネオンが寂しく光る風景が、寄る辺のない者たちの浮遊感を伝えてくる。第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品作。3日からシネマート新宿(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。スーパームーンの夜に頭が割れるかと思うほどの偏頭痛が起きました……。
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