2014年の仏カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門グランプリと、優秀な演技を披露した犬に贈られるパルムドッグ賞に輝いた映画「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディー)」(コーネル・ムンドルッツォ監督)が21日から公開される。犬好きには見ていてつらい場面はあるものの、“主人公”の犬の表情の豊かさと“脇役”の犬たちの力演に頭が下がる。とりわけ、犬250匹が街を疾走するクライマックスシーンには目を見張る。
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母が海外出張中、両親の離婚後、離れて暮らす父(シャーンドル・ジョーテールさん)に預けられることになった13歳のリリ(ジョーフィア・プショッタさん)。父は、リリが一緒に連れてきた愛犬ハーゲンに難色を示す。というのも最近この国では、ハーゲンのような雑種犬を一掃するために、飼い主に重税を課す法律が施行されたのだ。ある日、反抗的なリリに腹を立てた父は、ハーゲンを自宅から離れた場所に置き去りにしてしまう。リリはハーゲンに、「必ず迎えに来る」と約束するのだが……というストーリー。
人っ子一人いないブダペストの街中を、自転車で駆け抜けていくリリ。そこに、野良犬たちがわらわらと押し寄せてくる……衝撃的な映像で幕を開ける今作だが、ハンガリー出身のムンドルッツォ監督は今作に、母国に対する政治的批判を込めたという。だからといって小難しい内容かというとそうではなく、身勝手な人間の犠牲になった犬と、その犬を愛する少女の絆を前面に押し出すことで、作家主義的な作品の枠を飛び越え、見る者の心にしっかりと刻印を残す娯楽性を兼ね備えたヒューマン作に仕上がっている。置き去りにされたハーゲンは、やがて他人の手に渡り、闘犬になるための過酷な訓練を受け、幸せだったリリとの思い出は野生の本能に上書きされていく。そんなハーゲンの行方を必死に探すリリ。“2人”の距離が広がれば広がるほど、人間の身勝手さと残酷さが浮き彫りになっていく。そして圧巻のクライマックスシーン。250匹の犬たちがブダペストの街中を疾走するその場面は、CGを使わずに撮影したというが、荘厳なラストシーンを含め、一体どうやって撮ったのだろうと目を見張らずにはいられない。ハーゲンを演じたルークとボディという2匹の兄弟犬は、シーンごとの表情によって使い分けられたというが、ほかの犬たちの力演にも頭が下がる。21日から新宿シネマカリテ(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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