人気スパイ映画シリーズ「007」の24作目で、主人公のジェームズ・ボンドを今作で4作目となる英俳優ダニエル・クレイグさんが演じる「007 スペクター」(サム・メンデス監督)が4日に公開された。今作では悪の組織「スペクター」を追うボンドの活躍が描かれるが、スペクターとはシリーズ第1作「ドクター・ノオ」(1962年)に登場する悪役。ボンドの生い立ちなども描かれ、原点回帰ともいえる胸をすくような痛快なスパイアクションが楽しめる。モニカ・ベルッチさん(51)とレア・セドゥーさん(30)という2世代にわたる2人のボンドガールも映画に華と色を添えている。
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少年時代を過ごした「スカイフォール」で焼け残った写真を受け取ったボンド (クレイグさん)。その写真に隠された謎に迫るべく、M (レイフ・ファインズさん) の制止を振り切って単独でメキシコ、ローマへと赴く。そこでボンドは殺害された悪名高き犯罪者の元妻ルチア・スキアラ (ベルッチさん) と出会い、悪の組織スペクターの存在を突き止める。その頃、ロンドンでは国家安全保障局の新しいトップ、マックス・デンビ(アンドリュー・スコットさん) がボンドの行動に疑問を抱き、Mが率いるMI6の存在意義を問い始める。ボンドは秘かにマネーペニー (ナオミ・ハリスさん) やQ(ベン・ウィショーさん)の協力を得てスペクターの手がかりとなるかもしれないボンドの以前の敵、Mr.ホワイト (イェスパー・クリステンセンさん) の娘マドレーヌ・スワン (セドゥさん) を追う……というストーリー。
今作は、冒頭からメキシコの祝祭「死者の日」の雑踏にまぎれて女性とホテルに入ったボンドが、窓から外に出て屋上を走り、テロリストのいるビルにたどり着き、爆破するまでをワンカットで撮影したようなスリリングな映像で見せる。その後もボンドカー「アストンマーチン」に乗り、手に汗握るカーチェイス、ギネス世界記録に認定されたというモロッコ砂漠での大爆破シーンなど映画製作の最前線の技術を駆使し極上のエンターテインメント作品に仕上げている。
派手なアクション演出が多いからか、前作までの眉間(みけん)にしわを寄せ、人間らしく悩む姿も見せるクレイグさん演じるボンドの姿はなりをひそめ、家族写真などで深層心理をついてくる敵の心理作戦も典型的で少し薄味に感じた。ただ、ラストは人間らしいボンドの熱い気持ちが表れており、見ていて胸が熱くなった。
コンピューターを駆使するウィショーさんが演じるテクノロジーの天才「Q」に“メガネ萌(も)え”し、クレイグさんの肉体美にほれぼれ、ボンドガールとの濃厚な絡みにドキドキ、と女性目線の見どころも満載。正月興行らしい大人向けの最高級の娯楽作だ。クレイグさんがボンドを演じる契約は今作までだそうだが、もはやボンドはクレイグさん以外には考えられない。ラストに「ボンド・ウィル・リターンズ」と表示されるが、「クレイグ・ウィル・リターンズ」に期待したい。映画は4日から全国で公開。(細田尚子/毎日新聞デジタル)
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