松本若菜:似てない役こそ「女優として楽しい」 「ミヤコが京都にやって来た!」続編秘話 “怪演”反響への思いも

ドラマ「ミヤコが京都にやって来た!~ふたりの夏~」で佐知子役を演じる松本若菜さん
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ドラマ「ミヤコが京都にやって来た!~ふたりの夏~」で佐知子役を演じる松本若菜さん

 俳優の佐々木蔵之介さん主演で9月30日から3夜連続で放送されるドラマ「ミヤコが京都にやって来た!~ふたりの夏~」(ABCテレビ)に出演する女優の松本若菜さん。京都を舞台に、12年ぶりに再会した父・柿木空吉(佐々木さん)と娘のミヤコ(藤野涼子さん)の共同生活を描いた人情ドラマで、松本さんはかつて空吉の思い人だった佐知子を演じる。佐知子は、再び空吉の前に現れ、空吉の心を揺らすどこかミステリアスな雰囲気の女性だ。連続ドラマ「やんごとなき一族」(フジテレビ系)や「復讐の未亡人」(テレビ東京系)などでの“怪演”も話題の松本さんに、今作について、また現在の活躍ぶりについて聞いた。

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 ◇自身は「思う人がいたら、すぐ言っちゃう」

 ドラマは2021年1月期に放送された連続ドラマ「ミヤコが京都にやって来た!」の続編で、前作から半年後の夏が描かれる。空吉は東京から男性と一緒に帰って来る娘のミヤコを目撃。一方、ミヤコは鴨川で一人たたずむ、かつて空吉の思い人である佐知子(松本さん)を発見する。佐知子は別の男性と再婚して京都を離れたはずだったが、実は再婚していなかった……という展開。

 前作に続いて佐知子役での出演。含みのある描かれ方だった前作よりさらに踏み込んだ形で佐々木さんと共演する。佐々木さんとの再共演は「前作よりもしっかりとご一緒できるシーンがあったので、すごく楽しみでした。楽しみとうれしさとが半々」と話す松本さん。撮影中は、京都出身の佐々木さんに京都弁の相談をしたという。

 「事前にデータはいただいていましたが、どうしてもそのときの心情や設定で若干、言い方が変わってしまう。佐々木さんに相談したら、一緒に悩んでくださって。なにより『京都弁とか気にしなくていい、とにかく気持ち!』と言っていただいて……。きちんと言葉をしゃべることも大切だけど、そもそもの“気持ち”をもう一度立て直してもらえて。それは蔵之介さんの懐の深さですし、俳優の先輩としてのありがたい言葉だと思いました」と振り返る。

 今作では、空吉と佐知子の恋模様も描かれる。佐知子は大人の女性だが、空吉の家のポストに飴だけ入れて立ち去るなどどこか不思議な雰囲気を漂わせる人物だ。そんな佐知子を演じるにあたり、「監督からは『佐知子は、もしかしたら“かまってちゃん”な女性なのかもしれない』と。言われてみれば確かにそうだな、と思いました。でも、それが全面的に出すぎると、視聴者の方に『ちょっとこの女性、味方になれないよね』と思われてしまうので、そうはならないように、さじ加減を調整しつつ演じました」と説明する。

 そんな佐知子像に、現場でさらに人間味のある要素を加えて役を練り上げていった。「みんなが応援したくなるヒロインではなく、『大丈夫か……』と思うような、蔵之介さんの目線で見た時にいじらしく見えるような、一筋縄ではいかない女性像を描きたいなと。だから、たとえば驚いた時に驚いた表情を抑えないとか……そういうところで人間味が出て愛されるかな、と思っていました。そのへんは現場に入って、改めて気づいて実践した感じです」と明かす。

 佐知子の空吉に対する行動は遠回りだが、松本さん自身は気持ちをすぐに相手に伝えるタイプ。「私は思う人がいたら、ずっと考えているのがつらいから、すぐ言っちゃうんですよね(笑い)。佐知子は、女性らしい人なのかなとも思います。自ら伝えられなくて、空吉さんからの次の一言を待ってしまう。それでダメだったからあきらめて、でもあきらめきれなくて戻ってきて……私は、その段階がすごくつらいので、ダメでもいいからとにかく伝えたいというタイプです」と笑う松本さん。だが、自身と似ていない役だからこそ、「女優として楽しい」とも語る。

 「自分の考えにないことをどんどん膨らませて作っていく作業は大好きなので。私、一度、社会人経験をしていまして、20歳そこそこでしたけど『これからの自分の人生について』ということが心配になったんです。『一生このまま、こういう人生を進んでいくのかな』と。だけどこの業界に入って、女優のお仕事をすると、たった一度の人生どころか、いろいろな人の人生を歩んでいける。一人どころじゃない、いろんな人生を歩める仕事って、すごく魅力的に感じているので、だからこそこういう役には、とてもワクワクします」と笑顔で語る。

 ドラマの見どころについては、「私と蔵之介さんの大人の恋愛の面で言うと、キュンキュンといいますか、見ていてドキドキしてしまう、昔を思い出すような、純愛に近いような物語になっています」と紹介。「ぜひ大人のキュンキュンしている顔も見ていただけたら」とアピールする。

 ◇「面白い女優がいるなと思ってもらえたら」

 松本さんといえば、最近は「やんごとなき一族」や連続ドラマ初主演を務めた「復讐の未亡人」などの演技が話題を呼び、“怪演女優”として注目されている。自身ではそんな反響について、「自分ではまったく“怪演”と思っていなくて」と笑い、「『面白い女優がいるなあ』ぐらいに思ってもらえたらうれしいかな。『復讐の未亡人』では『やんごとなき一族』とは真逆な、表情を殺したような、復讐に燃える役柄でしたが、そういう“静と動”な役がたまたま続いたので、皆さんに余計に“怪演”と言っていただけたのかなと思っています」と分析する。

 話題作への出演が続き、多忙な日々を送る松本さん。オンとオフの切り替えはどのようにしているのだろうか。息抜きやリラックス法を尋ねてみると、休日は外出せず、家の中で過ごすタイプだという。

 「本当に出不精で、家が大好きなんです。休みの日は、絶対に一歩も出ないって決めていて(笑い)。だからこそ家の中を充実させたくて、趣味も家の中で完結できるものにしたり、インテリアもちょっとこだわったり……。帰ってきたときに『帰ってこれたな』と自分の中で気持ちの切り替えができるようにすることが、自然と身についている感じです。飼っている愛猫が迎えてくれますし、本当にリラックスできる時間になっています」と楽しそうに話す。

 松本さんは2007年に特撮ドラマ「仮面ライダー電王」で女優デビューを果たし、今年で15周年を迎えた。今の心境を「毎年毎年、気持ちは変わっていなくて……」と前置きした上で、「目の前にあるものをどれだけ自分の中に落とし込めて、発信できるかは、もともとやっていたことですし。今までやってきた考えを変えろと言われても、おそらく無理なので、回り道になっても、とにかく一歩一歩、着実に進んでいこう、というのは忘れずにいたいなと思います」と思いを明かす。

 「母からは『実るほど頭を垂れる稲穂かな』だよ、今こうして少しずつ出させていただいていることを当たり前と思わず、一つ一つのことをちゃんとやりなさい、と言われますが、その通りだなと思います。もちろん10年後も変わっていないだろうな」と笑顔で語った。

 ドラマは第1夜は9月30日深夜0時24分、第2夜は10月1日深夜0時5分、第3夜は10月2日深夜0時25分からABCテレビで放送。「TVer」「GYAO!」で見逃し配信される。

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