海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
放送休止中のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」。新型コロナウイルス感染拡大の影響でストップしていた収録が、6月30日から再開されることが発表されたものの、具体的な放送再開時期についてのアナウンスはまだ聞こえてこない。一方、ツイッターではハッシュタグ「#麒麟を待つ」が静かな広がりを見せ、「全44回絶対にやってほしい」との声も多数上がるなど、ファンの熱は帯びたままだ。明智光秀が主人公の3年ぶりの戦国大河ということで期待値は元々高かったものの、特にゴールデンウイーク明けの1カ月で、「長良川の戦い」「桶狭間の戦い」という二つの合戦と、斎藤道三(本木雅弘さん)と今川義元(片岡愛之助さん)という2人の有名武将の壮絶死が描かれ、さらに人気が高まったような気もするが、果たして……。
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近年、大河ドラマでは歴史的な重要局面が「主人公がその場にいない」などの理由から“高速化”されることも少なくなかった。代表的なのが、2016年の「真田丸」における「関ケ原の戦い」で、真田家に仕える忍びの佐助(藤井隆さん)の報告のみという“超高速”で終了したことが当時、大きな話題になった。
また、2017年の「おんな城主 直虎」にも登場した「桶狭間の戦い」だが、戦シーンは断片的で、春風亭昇太さん演じる今川義元の死も、家臣による報告で片付けられ、「麒麟がくる」とは対象的。「麒麟がくる」ファンが大いに期待を寄せる「本能寺の変」も、「敵は本能寺にあり……」的なあっさりとした描写だった。
幕末から明治にかけての動乱を背景にした2018年の「西郷(せご)どん」でも、「桜田門外の変」「池田屋事件」といった歴史的な事件が高速化。松田翔太さん扮(ふん)する徳川慶喜の、将軍就任から「大政奉還」までが一気に描かれる回もあった。
話を「麒麟がくる」に戻すと、「長良川の戦い」「桶狭間の戦い」共に、長谷川博己さん演じる主人公の明智光秀は直接、関わっておらず、高速化される可能性もあったが、「一人一人みんなが主役」という群像スタイルがここでも奏功。道三や義元という“主役たち”のドラマチックな最期に光を当てたことで、「合戦シーンは戦国大河の華」と改めて感じた視聴者も多かったのではないだろうか。
光秀の不明瞭な前半生を逆手に取った脚本と、史実を少々はみ出すこともいとわない、ファンタジックな演出も、また巧み。
「長良川の戦い」において、息子・高政(伊藤英明さん)との一騎打ちのさなか、高政の家臣に横から槍(やり)で刺され、最後は高政にもたれかかるようにし、「我が子、高政。愚か者……。勝ったのは道三じゃ」との言葉を残して絶命した道三。「桶狭間の戦い」において、織田軍の奇襲を受け、自ら刀を手に勇敢に応戦するも、最後は高く飛び上がった毛利新介(今井翼さん)の姿を、その目に焼き付けながら、槍で一突きされ、戦場に散った義元。有名武将の壮絶死によりカタルシスを得ることができるのも、「麒麟がくる」の大きな魅力になっている。
そうなると気になるのは今後の展開だ。光秀が主人公である以上、避けられないのが「本能寺の変」。そこに至る過程はもちろんのこと、「本能寺の変」そのものがどう描かれるのか、興味は尽きない。
以前に作者の池端俊策さんは、「ドラマは作るものであり、研究成果の発表の場ではない」と持論を語りつつ、「本能寺の変」の描き方ついては「(プランは)もうできていますけど、それは言えません」とかわしながらも、「克明ではないですけど、大体こういうことだろうなっていう、全体のアウトラインの帰結としての『本能寺はこうあるべき』というのは僕の中にあります。最初は『どうしようか、どうしようか』となっていたんですけど、ようやく見えてきました」と笑顔で明かしていた。
池端さんが語る、全体のアウトラインの帰結としての「本能寺の変」と「こうあるべき」の部分をあれこそ想像しながら、放送再開を待ちたいと思う。
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