海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
女優の岡田結実さん主演のドラマ「江戸モアゼル~令和で恋、いたしんす。~」(読売テレビ・日本テレビ系、木曜午後11時59分)で、ウェブ広告会社の社長・鳥居直樹役と、仙夏(岡田さん)の思い人だった直次郎役の二役を演じて、注目を集めている俳優の前田公輝さん。前田さんといえば、子役として6歳でデビューし、中学時代はNHKの子供向け教育番組「天才てれびくんMAX」に“てれび戦士”として出演。今年でキャリア24年目を迎えるが、“子役芝居”から抜け出すための苦労があったという。前田さんにこれまでの活動を振り返ってもらった。
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ドラマの原作は、江戸キリエさんのマンガ「江戸モアゼル」。野暮(やぼ)なこと、筋が通らないことを嫌い、客だろうがお大尽だろうがキッチリと言い負かす、気風(きっぷ)のいい愛すべき江戸の花魁・仙夏(岡田さん)が、現代に突然タイムスリップし、「コミュニケーション下手で、恋に奥手な令和男」を中心に恋の四角関係を繰り広げる。
前田さん演じる鳥居直樹は、泉美(吉谷彩子さん)の上司で、「ナンバーワンにならないと意味がない」と思っていて、常に上昇志向。仙夏の江戸での思い人だった直次郎に似ていて……という役どころ。
第1話が放送されると、SNSでは「鳥居社長と直さんのギャップ……よき……」「直さんの笑顔もめちゃかわいい」「粋キュン」などのコメントが並んだ。「MANTANWEB」でも前田さんの記事が掲載され、「僕、ツイッターをやっているので、その記事をリツイートすると、ちょっとアガるというか(笑い)。役者としてうれしいですよね! この役作り、間違っていなかったんだなって」とうれしそうな笑顔を見せる。
実は、直次郎の撮影は「正味40分くらい」だったという。「1話に凝縮されていて。(台本の)ページ数でいうと1.5ページくらいだったので、めちゃめちゃ難しくて。両極端になるように『鳥居を振り切ったらいいのかな?』と思いつつ、悩みました」と明かす。一方で、役者としてのやりがいも感じたといい、「一人二役でレギュラーは初めてなので、本当に役者やってきてよかった! ありがたいし、おいしいじゃないですか?(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに話す。
鳥居社長の印象について、「嫌なやつだし、(台本を)読めば読むほど『調子乗るなよ』と思う」と話した前田さんだが、回が進むにつれて、変化があった。「初めて仙夏みたいな自分と全く違う世界観を持っている女性に惹(ひ)かれて、戸惑ってしまうところは、人間味があって親近感が出てきました」と明かす。今後、鳥居社長は、誠実で熱い男になっていくといい、「こういう男いいかも。見習いたいと思うこともあったり……」と話す。
前田さんは、1991年4月3日生まれ。神奈川県出身。俳優・タレントの養成所「ホリプロ・インプルーブメント・アカデミー」の1期生となったことがきっかけで、6歳でデビュー。2003~06年には「天才てれびくんMAX」にレギュラー出演。16歳のときに、映画「ひぐらしのなく頃に」(及川中監督、2008年公開)で初映画にして初主演。近年では、映画「HiGH&LOW THE WORST」(久保茂昭監督)の轟洋介役などで注目を集めた。
今年で24年目となるキャリアについて、「ここまで来たな、という感じですね」としみじみと話した前田さん。「続けられることが美学」と言ってもらえることも多いというが、「僕はありがたいことにバイトすることはなかったですけど、意外と役者って続けられるんですよ」と明かしながら、「しがみついている時期もあったし、『ああ、つまんねーな』と思った時期もあって……」と振り返る。
前田さんによると、「天才てれびくん」出身の仲間は、バラエティー色が強いこともあり、タレントになりたくて卒業していく人が多いという。「役者になったり、音楽をやる人もいるし、最終ゴール地点って自分しかわからない。僕は、16歳のときに『役者になろう』と思った自分に、ずっと今、ご褒美をあげている感じでやっています」と明かす。また、「最近、自分が憧れてきた仕事が徐々に舞い込んでくる気配がしていて……」と手応えも感じている。
「役者になろう」と思ったきっかけの作品は、初主演を飾った映画「ひぐらしのなく頃に」。主人公の前原圭一役を担当したが、「ヒロインと一緒に歩いて行く」という、台本で0.5ページほどのシーンの撮影では、20テークほど重ねた経験がある。
「監督から、『それは前原圭一じゃなくて、前田公輝だ』ってメガホンで言われて。当時の僕は、芝居があんまり好きじゃないので、前田公輝がやっているんだから当たり前じゃんって……。でも、テークを重ねるごとに、頭が真っ白になって、ヒロインの方に、『不安すぎるから手握らせてもらっていいですか?』と言って、握らせてもらったんです。それで歩いたら(監督から)OKが出て。なんだこれって思って……」と当時の様子を明かした前田さん。
今では、前原圭一とヒロインの距離を近づけたかったという、監督の思いがわかると語り、「僕、数学とか計算するのが大好きで。『俺が知らない方程式知ってるんだこの人』って思った瞬間に、ぱって視界が開けちゃって(笑い)。これで食っていきたい!って急に思い始めて……」と明かす。
しかし、子役として小さな頃から芝居に通じていると、“子役芝居”という壁にぶち当たる。「喜怒哀楽が一辺倒。ちょっと枝分かれしても、同じ木に戻る。これが最悪。クセづいちゃって取れないんです」と話した前田さん。“子役芝居”が抜けない時期は、芝居が嫌で嫌で仕方がなかった。
通常なら、子役からのキャリアを糧に頑張っていくところ、前田さんは、「子役芝居を捨てよう。記憶から抹消しよう」と自己流でもがいてきた。小さい頃に、大人から言われた言葉を全部忘れて、新しい現場で言われた言葉だけを頭に入れ、整理していく作業を続けていった。
徐々に変化し、20代後半では、前田さんの芝居を初めて見た関係者から、「子役出身っぽくないね」と言われることが増えていったという。「今は楽しくて。もっと楽しくなる先があるような感じに思っています」と充実の表情を見せた前田さん。4月には30歳となるが、「もっと新しい自分を出せると思う!」と力を込める。そんな前田さんのこれからの活動も応援したい。
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