黒川文雄のサブカル黙示録:歴史は繰り返す?

 このところ「ガラパゴスケータイ(ガラケー)」向けコンテンツで一時代を築いたASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)への人材の集中と資金の流入がすごいことになっている。特にスマートホンへのシフトチェンジを急いでる。僕の知っている人たちもずいぶんと動いている。

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 90年代にゲームソフトが爆発的に売れた時期、ゲーム業界でも同じようなことがあったのは皆さんの記憶に新しいことだろう。実は、当時、私も驚くようなオファーを受けたことがある。……その条件は魅力的だった。年収は当時の現状の1.5倍ほどにアップし、社宅借り上げ制度に適応、賃貸マンションであれば、家賃の約4割を会社が負担。さらに当時、会社の近くにはBMWのディラーがあり、そこに依頼すれば社用車が用意されるという。「自家用車が既にある」という社員に対しては、社有車用の駐車場代を負担する……という手厚い処遇だった。またプロジェクト完成、作品リリースの後にはチームごと1カ月ほどのバカンスを取得できるという特典もあった。勤務地も海外という可能性もあり、なんと素晴らしい環境を用意できる会社なのだろうか……と感嘆したことがあった。

 結論からいえば、その会社の提案に応えることはなかった。「これが永遠に続くはずがない」という感覚と、一方で処遇がすべてではなく「かかわる仕事の内容が重要」と思ったからだ。今となってもその判断には後悔はしていない。現在のその会社の勤務体系や福利厚生だが、経営陣も代替わりし、就業関係の規則や条件も大幅に見直されたという。またその会社にいた知己の社員たちの大半は辞めてしまった。

 さて、冒頭の話に戻ろう、歴史は繰り返す。かつて同じような出来事があったことは述べたばかりだ。どこが、どうなるという話をしても仕方がない。しかし、現在の人的リソースの流入を見るとあのころを彷彿(ほうふつ)させる何かがある……。日々、ネットをにぎわす新作の導入、有名メーカーとの提携、コラボ展開の数々、展開スケールやキャッシュフローの潤沢さを物語るストーリーは日々つむがれている。これが同じ歴史の繰り返しなのか、新時代を作っているのかは、のちの歴史が証明するが、少なくとも志なきところには歴史は生まれないし、歴史はそれを証明してきたことを申し上げておきたい。

 ◇著者プロフィル

くろかわ・ふみお=1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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