黒川文雄のサブカル黙示録:ソーシャルゲームはコンビニか

 私の知人にテレビ局の制作プロデューサーがいます。専門ジャンルはお笑いでしたが、今はそのジャンルから少し遠ざかっていて、彼が手がけた番組は今はもうありません。ですが、無名だった芸人を発掘する彼の“選球眼”は素晴らしく、現在も活躍中の芸人には彼が見いだした才能も少なくありません。

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 彼の口ぐせは「瞬間芸やリアクション、ストーリーのないお笑いはダメだ」というものでした。つまり、今の流行になっている細かすぎて伝わりにくいモノマネや、言葉のリアクションなどで笑いをとるものについては否定的でした。彼の考えるお笑いの本質は、演劇的な「起承転結」のある舞台芸のようなものでした。

 しかし、テレビでは瞬間芸が盛んです。そちらの方が短い時間で端的に表現するテレビ番組の中ではウケやすいのは皆さんもご存じのことと思います。また、見て笑う人たちの感性も細分化しています。また、テレビの視聴も、今では携帯電話でメールを打ちながら、インターネットを検索・閲覧しながら、何かのついでに「見る」というスタイルになっている人もいるかと思います。

 お笑いに限らずコンテンツの世界も似たようなものです。受け止める側を配慮して、より簡単に、より分かりやすくする印象を受けます。つまりお笑いならば、「誰にでも分かる」ことがソーシャル的なのでしょう。コンテンツに例えるなら、映画館や寄席、家庭用ゲームは「百貨店」のようなもので、DVDや漫才、ネットワークゲームなどは「セレクトショップ」で、ソーシャルゲームや瞬間芸などはユーザーのニ−ズに即時に対応する「コンビニエンスストア」のような存在かもしれません。

 そういう視点で見れば、瞬間芸がウケることも納得がいきます。コンテンツそのものもサービス業……という思考で考えればより理解できるでしょう。ユーザーが望むものを考えて、ユーザーに合わせて加工して見せていくこと……それは世相を表しているともいえるのかもしれません。

◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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