稲葉友:映画「ワンダフルワールドエンド」でダメ男役 「説明が難しいので見てもらっていいですか」

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 ミュージシャン・大森靖子さんのミュージックビデオを基に映画化した「ワンダフルワールドエンド」(松居大悟監督)が公開中だ。今作は、大森さんの「ミッドナイト清純異性交遊」「君と映画」という2本のミュージックビデオに、松居監督が新たな撮り下ろしパートと大森さんの楽曲を加えて映画化したもの。女優の橋本愛さんが売れないアイドル・早野詩織を、「ミスiD2014」のグランプリに輝いた蒼波純さんがファンの少女・木下亜弓でダブル主演している。仮面ライダーマッハ役で特撮ドラマ「仮面ライダードライブ」(テレビ朝日系)に出演中で、今作では詩織の恋人のダメ男・浩平役を演じる俳優の稲葉友さんに、役作りや主演女優2人の印象などを聞いた。

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 ◇逆立ちシーンは稲葉自身が提案

 今作で稲葉さんは、ヒーローを演じている姿からは想像できないようなダメ男を演じ切っている。そんな浩平役を「すごく楽しかった」と振り返るが、「男はみんな(浩平を見て)『こいつ最悪だ』と思うだろうけど、どこかもしかしたら自分もこういうとこあるのではと疑うと思う」と予想する。「ケンカ中に自分が映画に行こうと(詩織を)呼んでおいて、財布を忘れて(料金を)出させるとか……」と浩平の行動を挙げ、「別に嫌がらせをしたいからやっているわけではない」と分析。「本当に財布を置いてきちゃったけど、『まあ出してくれるだろう』と本気で思っている。それでいて映画があまり面白くなくて寝ちゃう」とダメっぷりを笑うも、「一切悪気はない」と心情を読み解く。そして「演じるにあたってストレスもなかったし、こいつ嫌だなと思っていたわけでもない」と明かし、「ある種、いとおしくて可愛いやつ」と親しみを感じ、「100人いたら3人くらい好きになってくれればいい」と理解を求める。

 浩平が逆立ちするシーンは稲葉さんが松居監督に提案したという。「監督と飲みに行った時、監督に『稲葉友は何ができるの?』と言われて、なぜか即答で『逆立ちができます!』と(伝えた)」と笑顔で語り、「監督が『分かった。逆立ちができるんだな』と、その後、上がってきた(台)本を見たら逆立ちするシーンが入っていた」と素早い反応に驚く。稲葉さんは台本を見て、「すぐ電話した(笑い)」そうで、「(監督と)すり合わせてみたら、逆立ちにさえ、意外とお互いに物語があった」と感覚が一致したことを告白。「そういうことも初めてだったので、うれしくてしょうがなかった」と喜ぶ。思い入れある逆立ちのシーンを「あいつ(浩平)なりの本気はある」と補足しつつも、「それをお客さんに感じてほしいとは思わない。『なんだこいつ』と思っていてくれれば」と流れの中での演技を楽しんでほしいと願う。

 そんなダメ男を演じている稲葉さんだが、初めてはまったポップカルチャーは「ヒーローもの」で、自身が幼稚園児の頃は「仮面ライダー」が昭和シリーズと平成シリーズのはざまだったそうだが、「僕が小2か小3ぐらいに平成(シリーズ)が始まって、『クウガ』『アギト』『555』『龍騎』とか結構見ていた」といい、「幼稚園の頃には戦隊だったりウルトラマンを見ていた」と振り返り、「何の因果か自分が今、仮面ライダーをやっているというのは面白い」と神妙な面持ちで語る。

 ◇橋本愛と蒼波純のW主演の存在感に圧倒

 主演を務める橋本さんと蒼波さんに「こういう現場で会えてよかった」と喜んでいる稲葉さん。橋本さんについて「もともと面識はあったけど改めて仕事で一緒になって、単純に(演技が)すごいと思った」と感銘を受けたという。一方、蒼波さんに関しては「最初はすごい人見知りで全然しゃべらなかったけど、撮影が進んでいくと親戚の子どもみたいな感じに(なった)」と優しい表情で語る。というのも「距離が少し詰まり、『じゃあまた』といって久しぶりに会ったりすると、また距離がある」と2人の間の空気感が親戚のようだといい、「こっちがずっと見ていたくなる」と女優としての魅力を感じたと話す。

 稲葉さんは「2人とも理屈じゃない部分ですごかった」と驚き、「監督はもちろん、(橋本さんと蒼波さんの)お二人とも年下ですけど、助けられ続けた」と感謝する。「こちらから何ができたんだろうと思うぐらい、2人は圧倒的によかった」と絶賛した。

 ◇「映画を愛してほしい」とアピール

 今作の魅力について、稲葉さんは「この映画を客観的に見られなくて……」と言葉に詰まり、「自分が出演していて、今までで一番こんなに客観的に見られない作品はないと思うぐらい」と驚きを隠せない様子。「初号試写で見て、そのあと劇場で舞台あいさつがある時に客席で見ていたけれど、まだちゃんと見られないなというのが正直なところ」と胸の内を明かし、「いまだに僕はこの映画を『こういう映画です』と言えない」という。しかし、「監督と飲みに行ったら、それがお互いそう(同じ状態)だった」ことが分かり、「言葉にできないというか、するだけムダなのかもしれない」と持論を展開する。「実際に見た時にお客さんが感じて、むしろお客さんの言葉を聞いて『そうなんだ』と思うタイプの映画なんだろうなと」と今作を評する。

 稲葉さんは「橋本さんが売れないアイドルをやっている時点で面白い」とちゃめっ気たっぷりに言い、「詩織のいろいろあったんだけどなんにもなかったなみたいな雰囲気に、(今作を見る人は)みんな共感できるのかなと思う」と分析。それでも「こんなに『説明が難しいので見てもらっていいですか』という作品もそうない」としみじみ語り、「全部の作品が『見てください』という話ですけどね」とほほえむ。

 言葉で説明するのが難しいという稲葉さんに見どころをあえて聞くと、「女の子が本当に素晴らしい映画」といい、「こんなに素晴らしい女の子たちがいるなら、もう男はいらないんじゃないかなと(見た人は)思う」と言い切る。「(映画を)見て衝動だったり使命感みたいなものに駆られて、ツイッターなどで書き込んでいただきたい」とメッセージを送り、「僕らはそれを見ます。見た人がどんどん広めてほしい」と力を込める。そして「僕がこの作品が僕は本当に大好き」と前置きし、「稲葉友を知って見に来てくださるお客さんは、この映画を愛してあげてください!」とメッセージを送る。「橋本さんが舞台あいさつで『動物みたいな映画なので愛してください』というのを聞いて、いいなと感じたので(そのフレーズを)使いました」と打ち明け、笑った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 いなば・ゆう 1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。2009年、第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞。テレビドラマ「クローンベイビー」(TBS系)で俳優デビューし、舞台「真田十勇士~ボクらが守りたかったもの~」では舞台初出演にして主演を務めた。以降、テレビドラマ「クローバー」(テレビ東京系)や映画「行け!男子高校演劇部」(11年)など、数多くのドラマや映画、舞台などに出演している。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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