昼ドラ:31日に最終回 52年の歴史に幕 コンテンツから情報の時代へ

2004年放送の「牡丹と薔薇」の一場面。小沢真珠さん(左)と大河内奈々子さん=東海テレビ提供
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2004年放送の「牡丹と薔薇」の一場面。小沢真珠さん(左)と大河内奈々子さん=東海テレビ提供

 東海テレビ(名古屋市東区)が制作する昼の連続ドラマ(昼ドラ、月~金曜午後1時25分)が31日、52年の歴史に幕を下ろす。1964年にフジテレビ系で放送をスタートし、現在放送中の「嵐の涙~私たちに明日はある~」で214作目。2002年の流行語大賞でトップテンに入賞した「真珠夫人」など、刺激的なせりふで話題をさらった作品もある。フジテレビの亀山千広社長は、今年2月に行われた会見で「人気シリーズで昼ドラ、昼帯という言葉が定着した。主婦の憩いの時間を作り、語られるべき時代を作った」とその功績について述べた。しかし、近年はライフスタイルの変化などで視聴者をつなぎとめられなかった。

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 ◇志垣太郎の「あかんたれ」がヒット 「たわしコロッケ」で衝撃も

 第1作の「雪燃え」は、映画スターの水野久美さんを主演に、茶道界を舞台にした。また志垣太郎さんが主演した76~77年放送の「あかんたれ」は、明治中期の大阪・船場の呉服問屋を舞台に先代店主の愛人の子供を主人公にした物語。期間平均視聴率11.1%(関東地区、以下同)、77年3月30日の放送で18.1%を記録するなどヒットし、78年には続編の「続・あかんたれ」が放送された。

 80年代には身分違いの恋をドラマチックに描いた「愛の嵐」「華の嵐」「夏の嵐」のグランドロマン路線が人気を博し、96年には同枠で最多となる全6シリーズを数えた「はるちゃん」が誕生。旅館を舞台に奮闘するヒロインが共感を呼び、2010年にスタートし全4シリーズを数えた「花嫁のれん」への系譜にもつながった。

 さらに「昼ドラ=ドロドロ」を印象づけたのが02年に放送された「真珠夫人」と、04年の「牡丹(ぼたん)と薔薇(ばら)」だ。いずれも脚本家、中島丈博さんが手がけた愛憎劇で「役立たずのブタ!」などの過激なせりふや、浮気する夫に出した珍料理「たわしコロッケ」「牛革財布ステーキ」が衝撃を与えた。「真珠夫人」はドラマのタイトルが02年の流行語大賞トップに入賞する社会現象となり、「牡丹と薔薇」は、期間平均視聴率8.9%、04年3月24日に最高視聴率13.8%を記録した。

 ◇最後の昼ドラは「祭り」 野際陽子「ドラマ減り寂しい」

 最後の昼ドラ「嵐の涙」は、夫と娘を亡くした女性・里子が、育児放棄された血のつながらない女の子と出会い、暮らしていくという心温まる物語。主演の佐藤江梨子さんが1月の会見で「『祭りだ!』と思ってお受けしました」と話した通り、「あかんたれ」の志垣さん、「花嫁のれん」の羽田美智子さん、野際陽子さんらもゲスト出演して番組を盛り上げた。

 また「花嫁のれん」で大女将(おかみ)役を演じた野際さんは、最後の昼ドラへの出演時に「ドラマがどんどん減っていくのは寂しい。今、テレビ自体が曲がり角にきていることも踏まえながら、ドラマの復活を考えていかなければ。ドラマはソフトとして残りますから、その場限りでない、いいものを作っていかなければ」と語った。

 ◇数年前から終了協議 ライバルは韓流?

 現在、昼ドラが放送されているの時間帯は、生放送の情報番組「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)、「ひるおび!」(TBS系)がしのぎを削っている。

 昼ドラの終了は、数年前からフジテレビと東海テレビの間で協議されており、東海テレビの内田優社長は1月の会見で、その理由を「一番はライフスタイルの変化。平日の昼間に連続してドラマを見る時代ではなくなった」と説明した。同時間帯のドラマ制作に一時参入していたCBCテレビの林尚樹社長は、今月1日の会見で「寂しい。ともに作った局としては、続けていただきたいと思っていた」と前置きした上で、「視聴者の求めるものが、コンテンツから情報に変わった」と述べた。

 メディア文化論が専門の稲増龍夫・法政大学社会学部教授は、昼に長時間の生放送の情報番組を配置して好調の日本テレビに、低迷しているフジテレビが追随し、4月期の改編で、平日午前4時25分から午後7時までの約15時間生放送を行う影響を受けたと指摘。

 さらに「昼ドラの主な視聴者は専業主婦。以前はこの時間に家にいたが、いまはパートや仕事、趣味などで出かけていることが多い」といい、「この時間帯に家にいる主婦層はBS、CSで韓国ドラマを見ているケースが多いのでは。ライバルは韓流」と分析した。

 ◇ドラマ作りは「徒弟制度」 土ドラから新たなヒット生まれるか

 NHKで長年プロデューサーを務め、朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」やスペシャルドラマ「坂の上の雲」などを手がけたNHK名古屋放送局の菅(かん)泰弘局長は、「ドラマ作りは徒弟制度のように演技指導から照明、音声に至るまで制作スタッフが幅広く関わる。作り続けることでしか技術やレベルが維持できない」と指摘している。

 東海テレビは4月2日から毎週土曜深夜の午後11時40分に連続ドラマ「土ドラ」を始める。1作目はユースケ・サンタマリアさん主演のサスペンス「火の粉」で、今後も多彩な内容で勝負していく。同局の内田社長は「大きな可能性を秘めた放送枠。大人に向けた本格ドラマをコンセプトに、これまで半世紀以上にわたって培ってきた人間ドラマを、引き続き存分に描いていきたい」と意欲を見せている。

 土ドラから新たなヒット作や、社会現象が生まれるか注目される。

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