テレビ質問状:「WHO I AM」 パラリンピックドキュメンタリー第5回はイラン人女性初の金メダリスト

「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」のアーチェリーのザーラ・ネマティ選手(イラン)
1 / 3
「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」のアーチェリーのザーラ・ネマティ選手(イラン)

 IPC(国際パラリンピック委員会)とWOWOWが共同で立ち上げたパラリンピックドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」。リオパラリンピックが開催された2016年から、東京大会が開催される2020年まで5年にわたり、世界最高峰のパラアスリートたちに迫る大型スポーツドキュメンタリーシリーズだ。10月から第1シーズンとして、8人のパラアスリートに密着した放送がスタートした。第5回は19日午後9時からアーチェリーのザーラ・ネマティ選手(イラン)をフィーチャーした回がWOWOWプライムで放送される。番組プロデューサーを務めるWOWOW制作局制作部の太田慎也チーフプロデューサーに番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 ――ネマティ選手に注目した理由?

 パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」は、2020年まで5年間かけて世界中から約40人程度のアスリートを取材したいと考えています。その際、競技・国・障害の種類といったバランスを考えながら取材選手の選定を行っていますが、ネマティ選手については、「オリンピック・パラリンピックを通じてイラン人女性初の金メダリスト」という事実だけで、まず興味が湧きました。

 18歳で交通事故により脊髄を損傷し、そこからロンドンパラリンピックで金メダルを獲得したわけですが、女性の活躍についてまだ成熟した社会とはいえない部分が多いイスラム国家イランで、障害のある女性が世界のトップに立った背景には、多くの物語や彼女の強い信念があると感じたのです。実際、ネマティは、アーチェリー選手としての競技力だけでなく、イラン社会における自らの立場を自覚し、本当に多くのものを背負っている選手だと分かりました。しかもその覚悟は、70メートル先の的を狙う“心の格闘技”アーチェリーの試合中の厳しい局面でこそ、ことごとく発揮されるのです。

 ――ネマティ選手との撮影中のエピソードは?

 一番うれしかったのは、ネマティ選手自身が、このプロジェクトへの参加を意義のあることだと感じてくださったことです。「WHO I AM」を通して、アーチェリーをする姿や自身の発言を世界に向けて発信でき、見る人(特に、障害のある人や子供たち)に何らかの影響を与えられると強く信じてくださいました。我々取材班の考えをしっかりと理解した上で、とても協力的に取り組んでくださったのです。

 また、イランはイスラム国家ですから、原則的に男性と女性が互いに触れることもできません。そのため、実際に密着する取材班は女性クルーを編成して現地を訪ねました。そのことに、ネマティ選手はとても喜んでくださり、多くの協力をしてくださいました。

 ――視聴者へ見どころをお願いします。

 ネマティ選手にとって2016年は本当に特別な年でした。実は8月に行われたリオ五輪にも出場が決定し、開会式ではイラン代表選手団の旗手を務めたのです。さらに、9月には連覇のかかったパラリンピックもあり、そこまでの道のりをしっかりと取材させていただきました。

 番組を通して一番伝えたいことは、とにかくネマティ選手の言葉には「力」があります。人生において行き詰まりを感じている人、困難を抱える人、悩みのあるすべての人にとって、たくさんの気づきがある言葉ばかりです。どんなこともポジティブに捉え、前だけを向く彼女の姿から、何かを感じ取っていただけたらうれしいです。

 さらに、長いパラリンピックの歴史において、アーチェリーは「最古の競技」といわれています。そんな競技において、「イラン」という国から、「女性のチャンピオン」が生まれたことは、彼女の運命なのかなとも思うのです。

 彼女の壮絶な人生、輝かしいキャリアだけでなく、運命のリオパラリンピックまでの全軌跡を、ぜひ味わっていただけたら幸いです。

 また、ネマティ選手やご家族、チームメートをはじめ、取材に協力いただいたすべての方々に、心からお礼を申し上げたいと思います。

 WOWOW 制作局制作部 チーフプロデューサー 太田慎也


写真を見る全 3 枚

テレビ 最新記事