筧美和子:“あざとさ”が絶妙 “女に嫌われる役”を体現できる希有な存在に

ドラマ「LINEの答えあわせ~男と女の勘違い~」に出演する女優の筧美和子さん=読売テレビ提供
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ドラマ「LINEの答えあわせ~男と女の勘違い~」に出演する女優の筧美和子さん=読売テレビ提供

 ドラマ「LINEの答えあわせ~男と女の勘違い~」(読売テレビほか、土曜深夜0時58分)に出演する女優の筧美和子さん(25)。男女7人を中心に繰り広げられるLINEにまつわる恋愛模様を、男性側・女性側それぞれの目線から描く異色ドラマで、筧さんは、女性からは「あざとい」と思われてしまうぐらい、男性をメロメロにしてしまう23歳のモデル・吉川沙羅を演じている。筧さんといえば、「女に嫌われる女」役を演じてきた印象があるが、ドラマを手がける「ROBOT」の村上公一プロデューサーは、「ご本人はあまり持っていない要素なのに、表現する案配が絶妙です」と語る。女優としての筧さんの魅力を探った。

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 ◇等身大の23歳の女性役に

 ドラマは、「東京カレンダーWEB」で2017年4~10月に連載された人気コンテンツ「LINEの答えあわせ」が原作。東京・恵比寿のとある「一日料理教室」で出会った年齢も職業もバラバラな6人の男女の恋愛模様を描く。読売テレビなどで放送中。「TSUTAYAプレミアム」で独占先行配信中。

 今回のドラマ化について、村上プロデューサーとともにドラマを手がける多賀規恵プロデューサーは「個人的に原作が好きで。土曜日にQ(問題)が出て、日曜日にA(答え)が出るのが興味深くて、かなり早い段階から実写化したいと思っていた」と話す。中国の動画配信「bilibili」、台湾の動画配信「KKTV」でも配信されているが、「今の恋愛に関して、チャットアプリって、恋愛の始まりでもあり、終わるきっかけでもある。欠かせないのはどこの国も一緒。だったらコンテンツをもっとグローバルに展開できるのではないかと思った」と明かす。

 筧さん演じる沙羅は、23歳の雑誌モデル。可愛らしい容姿で人に合わせるのがうまく、周りからは幸せな女だと思われたい、というタイプ。筧さん自身は、「分かるところもあれば、分からないところもある」と話しており、「モデルの世界に身を置いてきたからこそ、無意識のうちに“外用の自分”とか、人によって距離感や温度を変えてしまうこととかがあるのかな、と。ずっと“同じ自分”でいるわけではない、というところは私も共感しました」と明かしていた。

 筧さんの起用理由について、村上プロデューサーは「『東京カレンダー』の読者がドラマも見てくれるとしたらという視点から考えたら筧さんがすぐ頭に浮かびました」と明かす。今作を手がける瀧悠輔監督は、2017年放送のドラマ「マッサージ探偵ジョー」(テレビ東京系)、昨年放送のドラマ「アカリとクズ」(ABCテレビ)で筧さんとタッグを組んだ経験を持つ。筧さんの演技や存在感が沙羅役に必要だと考えたといい、「わかりやすい“モテる役”をやれるルックスと、その裏にある性格の悪さとか裏側を表現できる人ってなかなかいないと思う」と話す。

 キャピキャピしていたり、あざとく見えるけれども、実は男性(恋愛)に対して素直に思い悩んで……という沙羅を演じた筧さん。今作では、顔のアップの撮影が多く、「実は私、こんなこと思っているんだけどな」という機微を顔の表情で演技をする必要があったが、筧さんは全くNGを出さなかったのだという。

 昨年放送されたドラマ「あなたの番です-反撃編-」(日本テレビ系、あな番)では、可愛い見た目とは裏腹にドSで恐ろしい一面を持った看護師役を演じた筧さんだが、多賀プロデューサーは「今回の沙羅は、悪女ではなく、『あな番』みたいに振り切った演技ではない。等身大の中での演技をうまく表現してくださった」と振り返る。

 ◇「男性はキュン」「女性はイラッと…」 両面を表現できる希有な存在

 筧さんは、1994年3月6日生まれ。東京都出身。AB型。2013年にフジテレビ系「テラスハウス」に出演し注目を浴びる。昨年は、「あな番」のほかにも、「ミストレス~女たちの秘密~」(NHK総合)では不倫相手の妻に近づき保険金を分けてほしいと迫る女を好演。「これは経費で落ちません!」(NHK総合)では、あざとさ満点の樹菜を演じた。テレビ東京で放送された実験ドラマ「知らない人んち(仮)~あなたのアイデア、来週放送されます!~」に主演するなど、女優としての活躍が続いている。

 今クールでは、「LINEの答えあわせ~男と女の勘違い~」のほかにも、ドラマ「鈍色(にびいろ)の箱の中で」(テレビ朝日、土曜深夜3時)にも出演するなど、連ドラを掛け持ちしている。

 筧さん自身、「一見、女に嫌われるような女の役や、ぶりっ子、あざといと言われるような役が多かった」と振り返っていたが、多賀プロデューサーは「筧さんって、『ちょっとぶりっ子』のぶりっ子具合、『ちょっとあざとい』の“あざとさ具合”が絶妙なんですよ。男性がキュンとくる一方で、女性がイラッとくる。その両面をちゃんと表現できる」と評価。

 筧さんの“あざとい”演技について、瀧監督は「とてもよく研究されていると思いました。もしかしたら、自然と女性に嫌われてきた経験値があるのかもしれないですね」と話し、「きっと今いくつか持っているパターンを増やしている最中なのではないかと思います。顔にいやみがないので、嫌な役をやったときのインパクトが強いのではないでしょうか」と話す。

 ◇女優としての起用が続く理由は

 撮影現場の筧さんの様子について、村上プロデューサーは「癒やしの権化。マイナスイオンが出ています」と表現。多賀プロデューサーは、「無邪気に差し入れとか食べられるので、現場は和みます」と明かし、瀧監督も「人が良いので、スタッフ、共演者受けが異常に良い」と話す。

 筧さんの女優としての魅力を、「真っ白なキャンバスのような心持ちで作品に取り組んでいただく点」と話す村上プロデューサーは、「監督が染めたい色に染まってくれる素直さと実直さが、彼女が演じるキャラクターに生命を吹き込む」と話す。「どんな色にも染まれる役者なので、いろいろな役がオファーされるのはある意味自然な流れ」と分析。

 今回3回目のタッグとなった瀧監督は、「数年前は、女優だと名乗ることにも抵抗があったのではないでしょうか? 1本目の頃は、演じる役柄に関してのコミュニケーションはあまりなかったと思うのですが、ここ数年で演じる役としての質問が多くなってきたと思います」と筧さんの変化を話す。「遠慮がちな性格が幸いしているのか、作品を客観視できている感じがしました。自分の見え方よりも、相手の見え方や作品のありようを気にされているようでした」と続ける。

 筧さんとは今回初タッグとなった多賀プロデューサーは、「(筧さんは)モデルさんをされていて、ちょっと今ドキの女の子、というイメージはありますけど、女優業が好きで、すごく女優業をやりたいと(話している)。女優業に本気な方なんだと思いました」と明かす。筧さんとまた一緒に仕事をしたいと感じたといい、「ポップな役もできますし、悪女役でもうちょっと年を重ねたときに、(筧さんの)色気がどう演技に出るのかと考えると、今回の役以外のものも見てみたいと思います」と期待を寄せていた。

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