小野憲史のゲーム時評:ゲーム業界に見る新型コロナウイルスの影響 市場拡大もハード製造、ソフト審査にブレーキ

品薄が続いている「ニンテンドースイッチ」(写真はあつまれ どうぶつの森セット)
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品薄が続いている「ニンテンドースイッチ」(写真はあつまれ どうぶつの森セット)

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、ゲーム開発・産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、新型コロナウイルスの感染拡大がゲーム業界に及ぼす影響について語ります。

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 新型コロナウイルスの感染拡大でゲーム業界にさまざまな影響が出始めている。市場は拡大したものの、ゲーム機の製造やゲームソフトの開発・審査で急ブレーキがかかっており、痛しかゆしの状況だ。

 米調査会社のスーパーデータは4月23日、今年3月のゲーム市場が全世界で100億ドル(約1兆700億円)に達し、過去最高を記録したと発表した。前年同月比で11%の上昇となる。同社は新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)で、多くの人々が「巣ごもり」を余儀なくされたことが原因と分析している。

 中でも市場を牽引(けんいん)したのが家庭用ゲーム機向け有料ゲームで、2月から3月にかけて前月比64%アップ。PC向け有料ゲームも56%アップした。北米と欧州で広がる外出制限が、家庭内でじっくり遊べるゲームの需要を牽引した形だ。

 もっとも、感染拡大でサプライチェーンが破壊された結果、ゲーム機の製造・流通に影響が出ている。任天堂は2月6日、日本市場向けに中国で生産しているニンテンドースイッチ関連製品について、生産と出荷の遅延が避けられない旨のリリースを出した。年内に発売が予定されている次世代ゲーム機「プレイステーション5」と「Xbox Series X」の生産にも、影響が及ぶことが懸念される。

 一方で国内に目を向けると、緊急事態宣言を受けてテレワークが進む中、ゲーム開発に影響が出ている。家庭用ゲームでは、開発中ゲームの不具合などをチェックするため、開発機と呼ばれる特殊なハードウェアが用いられる。この開発機を自宅に持ち帰ることが、ハードメーカーとの契約で禁じられている場合が多く、開発の停滞が避けられない状況だ。業務用の大型筐体ゲームやメダルゲームのように、特殊な筐体を使用するゲームはなおさらで、感染が終息しない限り開発自体が不可能になっている。

 コロナの影響はゲームの審査にも飛び火した。ゲーム審査機関のコンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)が4月7日、5月6日までの臨時休業を発表したのだ。同機関では外部審査員が事務所に来訪して審査を行うため、在宅審査ができないことを理由に挙げている。日本では家庭用ゲームを発売する際、CEROの年齢別レーティング審査を受けることが事実上、必須となっている。そのため今回の休業で、ゲームの発売計画に影響が出ることは必至だ。

 一方で開発に特殊な機材を使用せず、審査もオンラインで完結するスマホゲームでは、比較的影響が少ない。調査会社のゲームエイジ総研は4月23日、主要ゲームの2月1日から3月8日におけるユーザー推移について発表した。それによると「モンスターストライク」(ミクシィ)や「荒野行動」(ネットイース)でプレー人口の増加が見られた。「モンスト」は「鬼滅の刃」のコラボ施策、「荒野行動」は10代のユーザーが多いことから、休校措置要請が好材料となったと分析している。

 ゲームの本質はデジタルデータだが、ゲーム機の製造・流通をはじめ、現実世界の影響を受けざるを得ない。新型コロナウイルスの感染拡大により、その特性が浮き彫りになった形だ。もっとも、開発機の契約条件を見直したり、レーティング審査をオンライン審査に移行したりするなど、知恵を働かせることで解決できる可能性もある。非常時だからこそ、前例にとらわれない柔軟な対応を求めたい。

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 おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長を経て2000年からフリーのゲームジャーナリスト。2008年に結婚して妻と猫4匹を支える主夫に。2011~16年に国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表として活躍。退任後も事務局長として活動している。

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