エール:衝撃展開の裏に台本変更 朝ドラで異例の“戦場描写” 込めたかった「抗しがたい悲劇」

NHK連続テレビ小説「エール」第88回の一場面 (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「エール」第88回の一場面 (C)NHK

 窪田正孝さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「エール」(総合、月~土曜午前8時ほか)第88回が10月14日に放送され、主人公・裕一(窪田さん)の恩師・藤堂先生(森山直太朗さん)が率いる部隊が悲劇に襲われた。

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 第88回では、藤堂先生と再会した裕一は、兵士の慰問のため翌日に行うコンサートに向けて、楽器ができる兵士たちを集めた急ごしらえの音楽隊メンバーと練習を始める。ラングーン滞在中に裕一がビルマで戦う兵士たちのために書いた曲「ビルマ派遣軍の歌」を高らかに歌う藤堂先生。音楽を通して皆の気持ちが通じ合い、腹を割って話をした翌日、コンサートを控えていた部隊が突如敵襲に合う。

 事態を飲み込めない裕一の目の前で次々と兵士が撃たれ、そしてついには、藤堂先生さえも命を落とすという悲劇的な展開で、視聴者に衝撃を与えた。

 朝ドラでは異例の“戦場描写”で、「エール」のチーフ演出で、脚本も手掛けた吉田照幸さんは、「実際はコロナ(禍)前に一回台本は書いてあったのですが、(撮影休止期間が)2カ月あった中で、戦争の部分は書き直しました」と明かす。それは「抗しがたい悲劇というか、どうにもならない悲劇があるんだってことを、自分が体験したことがなかったものですから、そういったものをどう作品に込めたらいいのか」ということに今一度向き合ったからだ。

 当初、部隊が敵襲に合うのは「コンサートを終えた次の日、裕一が帰ろうとしたとき」だったという吉田さんは、「コロナの影響でたくさんの人を使えないっていうことを踏まえての変更ではあったのですが、道半ば、思い半ばで命を絶たれることで急に自分では気付いていなかったドラマ性を帯びたなって思いました」と振り返る。

 また、部隊の一等兵で、音楽隊メンバーの一人、岸本(萩原利久さん)の身の上話は当初「まったくなかった」といい、「顔の見えるあの人(兵士)たちが家族を思って歌うことで、さらに裕一の心の枷(かせ)になるっていう、そのあとに及ぼす作用がだいぶ違ったなって思いましたね」と台本変更による効果を実感。改めて部隊が敵襲に合い、藤堂先生らが命を落としたシーンについて「裕一の全ての自我の喪失、自分が信じていたものが全て崩壊していく」との位置づけで、「ですから描写もかなり当初、考えていたものより、鮮烈になったんじゃないのかなって思っています」と結論づけていた。

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