萩原利久:「エール」悲劇性高めた若手兵士役で存在感 突然の設定変更&せりふ増に「プチパニック」も…

テレビ
NHK連続テレビ小説「エール」で岸本和俊を演じた萩原利久さん

 窪田正孝さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「エール」(総合、月~土曜午前8時ほか)。10月12日から始まった第18週「戦場の歌」には、これまでの朝ドラではあまり描かれてこなかった“戦場”が登場し、10月14日放送の第88回では、主人公・裕一(窪田さん)の恩師・藤堂先生(森山直太朗さん)が率いる部隊の兵士が次々と命を落とすという、悲劇的なシーンが描かれた。同回と前日の第87回に部隊の一等兵・岸本和俊役で出演したのが俳優の萩原利久さんだ。裕一の目の前で頭を打ち抜かれて絶命する若手兵士の岸本として、悲劇性を高める役割を担った萩原さんに撮影の様子を聞いた。

 ◇初の朝ドラも「喜びに浸れたのは一瞬」 結末に「うまく言葉が出ませんでした」

 萩原さんは1999年2月28日生まれ、埼玉県出身の21歳。菅田将暉さん主演で昨年放送された連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)で、美術部と映画研究会に所属する逢沢博己役としてミステリアスな物語の一翼を担い、テレビ東京の深夜ドラマ「電影少女 -VIDEO GIRL MAI 2019-」(テレビ東京ほか)では、「乃木坂46」の山下美月さんとダブル主演を務めた、期待の若手俳優の一人だ。

 「エール」で演じた岸本は、民謡歌手を父に持ち、ギターが弾けたため、裕一が戦地で結成する音楽隊のメンバーに選ばれる。第88回では翌日のコンサートに向け、音楽を通して心を通じ合わせる裕一、藤堂先生、岸本ら音楽隊のメンバーだったが、部隊を思わぬ悲劇が襲い……と展開した。

 今回が初の朝ドラとなった萩原さんだが、「出演が決まったことはすごくうれしかったのですが、すぐに役の話を聞いたので喜びに浸れたのは一瞬でした。そのときは台本はなくて、簡単な説明だけでしたが、聞き流せるような内容ではなかったですし、自分の“結末”にはうまく言葉が出ませんでした。僕の年齢で死まで経験できる機会って、そう多くはないでしょうし、岸本が登場するのは、朝ドラという長い物語の中で、ほんの一編に過ぎないかもしれませんけど、『死ぬ』前提で、どれだけ一つ一つのシーンに色づけできるかってことを考えて撮影には臨みました」と振り返る。

 ◇撮影現場の様子さえも変えてしまう何かが、戦争にはあるってことを実感

 萩原さんが登場したのは2話のみ。一方で、第18週は「裕一の自我の喪失、自分が信じていたものが全て崩壊していく」週にもなっていて、裕一の目の前で頭を打ち抜かれて絶命した岸本の存在が物語に与えた影響は小さくなかったはず。

 現場の様子を聞くと、「(中断から)再開後すぐの撮影で、そういった意味でも自分の中に緊張はあって、シチュエーションも扱う題材も、笑顔で何かを終えるものではないので、現場にもすごい緊張感がありました。緊張感を持つこと自体は悪いことではないのですが、緊張が過ぎるとパフォーマンスにも影響するので、普段はどうすれば緊張しないかを考えるのですが、今回に限っていうと自分の中の緊張がいい方向に転んだというか。僕らが出た回がこれまでの『エール』の中でどれだけ特異なものだったのか、作品をよく知るスタッフさんの会話や様子からもひしひしと感じましたし、撮影現場の様子さえも変えてしまう何かが、戦争にはあるってことを改めて感じましたね」としみじみと思い返す。

 ◇突然の設定変更 何をどう考えても定まりきらない2週間を過ごし…

 その一方で、萩原さんを困らせたのが、岸本の突然の設定変更。部隊を悲劇が襲うコンサート日の前夜の、岸本の「死ぬのが怖くなりました」に続く告白(昔ワルだった話や子供がいることなど)は急に増えたせりふで、しかも、岸本ら部隊の兵士が次々と命を落とした戦場パートの撮影のあとに演出・脚本の吉田照幸さんから告げられたという。その理由を吉田さんは、「何か岸本(萩原さん)の憂いを帯びたまなざしを見ていたら、彼に語らせた方がいいなと思って、(撮影が先だった)戦場シーンのロケのあとにお願いしました」と明かしていたが……。

 当初「岸本は部隊の中でも若いですし、前を向いている印象があって。僕も基本はポジティブで、役とかけ離れてはいないと思ったから、そこは、そのまま役に使いたいと思った」という萩原さん。当時の言葉遣いや所作が限定的で、役作りのための軍事訓練をやればやるほど、演じる上での隙間(すきま)や余白がないと感じた上で、「若さというものは武器になる」と思い至ったからだ。

 「そうすることで岸本が頭を打ち抜かれたときの乾いた音が視聴者にもすごく刺さるのかなって、意識的に無邪気に見せたりしていたのですが、急に『子供がいる』という設定が増えたので、プチパニックでしたね(笑い)。終わりを先に撮ってしまったので、どうやってうまくつなげればいいのか、次の撮影までの2週間あったのですが、何をどう考えても定まりきらない。結局、決まりきらずに現場に行かなくてはいけなくて、怖かったですね」と苦労を明かす。

 ◇岸本の告白シーンとどう向き合った? 森山直太朗ら共演者に感謝

 では撮影当日、萩原さんは岸本の告白シーンとどう向き合ったのだろうか。「午前中のリハーサルのあとの空いた時間に(藤堂役の)森山(直太朗)さんが『このシーン、読み合わせてみませんか』と皆さんに言ってくださって。せりふの流れから自分の歌に入ってみたいってことだったのかなとは思うのですが。自分はまだ『どうしよう、どうしよう』って定まってなかったので、2、3回と繰り返し、一緒にやってくださったのがすごく助けになりました」と萩原さんは話す。

 岸本の告白については、「古山先生(窪田さん演じる裕一)がいらして、音楽に触れることで舞い上がって出たものなのかな」と推測し、さらには「岸本も(子供のことを)日常的に忘れていたわけではなかったとは思うのですが、戦場では考える暇もなかっただろうし、音楽に触れているときだけが楽しさを純粋に感じられたんじゃないかって。その楽しさが岸本の心を揺り動かしたというか、僕自身も演じていて楽しかったですし。古山先生が慰問に来なかったら、子供の話をすることなく、死んでいったんじゃないかって思うと、あの場での告白ってちゃんと線でつながっていると思うんです」と納得の表情。

 続けて「ただそれも、読み合わせで皆さんが岸本の話を聞いてくれたからこそ」と森山さんら共演者に感謝すると、「そこから段取り、本番と一気に気持ちが定まって、現場に入るまでのモヤモヤがなくなっていったので。イレギュラーな形でせりふが増えたりもしましたが、終わってみると、こっちの方が良かったんじゃないかって、今はそう思っています」と結論づけていた。

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