解説:「機動戦士ガンダム 水星の魔女」 株式会社ガンダム GUND技術による医療事業を目指す意味

「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の一場面(C)創通・サンライズ・MBS
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「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の一場面(C)創通・サンライズ・MBS

 人気アニメ「ガンダム」シリーズの新作テレビアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の第8話「彼らの採択」で、株式会社ガンダムがGUND技術による医療事業を目指すことを発表したことが話題になった。株式会社ガンダムとは、ミオリネ・レンブランが社長となり、GUND-ARM(ガンダム)の倫理的リスクの解決を目指す会社。GUNDは身体機能拡張技術で、GUNDを軍事転用したGUNDフォーマットが存在する。GUNDフォーマットを搭載したモビルスーツがGUND-ARMだ。少し難しい……と感じるかもしれないが、アニメを手がけるバンダイナムコフィルムワークスの岡本拓也プロデューサーによると「この作品におけるガンダムとは何なのかを描く上で必要な設定」が含まれているという。株式会社ガンダムがGUND技術による医療事業を目指す意味とは? スタッフの証言を基に解説する。

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 ◇GUND-ARMは“呪い”

 「水星の魔女」のキャッチコピーは「その魔女は、ガンダムを駆る。」。あまたの企業が宇宙に進出し、巨大な経済圏を構築した時代のA.S.(アド・ステラ)122が舞台となる。モビルスーツ産業最大手・ベネリットグループが運営するアスティカシア高等専門学園に、辺境の地・水星から主人公の少女スレッタ・マーキュリーが編入してくるところから物語が始まる。「ひそねとまそたん」「キズナイーバー」などの小林寛さんが監督を務め、「コードギアス 反逆のルルーシュ」などの大河内一楼さんがシリーズ構成・脚本を担当。MBS・TBS系の日曜午後5時のアニメ枠“日5”で放送中。

 GUNDは、これまでの「ガンダム」シリーズには登場しない「水星の魔女」の独自の設定だ。岡本プロデューサーは放送開始前にインタビューで「物語を追っていくと、こういうことなんだ……と分かっていただけると思います。物語のテーマにもつながる話なので、なかなかお話しできないのですが、この作品で描こうとしているテーマの一つにひも付いている設定であることは間違いないです」と話していた。

 GUNDは、太陽系内に偏在する鉱物から発見された元素のパーメットを利用した身体機能拡張技術で、本編に先駆けて公開された前日譚(たん)「PROLOGUE」では、この技術が、医療技術と関わりがあることも説明されている。

 GUNDは、GUNDフォーマットとして軍事目的に利用されるようになる。GUNDフォーマットを搭載したモビルスーツGUND-ARMは、搭乗者の体と精神をむしばむという。安全性の問題もあって開発が凍結され、“呪い”として扱われるようになる。

 ◇ヴァナディース機関の理想を受け継ぐ?

 GUND技術は革新的な医療技術でありながら、“呪い”でもあるというのが、複雑かもしれない。

 岡本プロデューサーは「身体拡張、意識の拡張というのが着想としてあります。『機動戦士ガンダム』の時からモビルスーツの元々の着想がそういう考え方に基づいて作られたと記憶していて、小林監督が、どこまでそこを意識していたかは分かりませんが。兵器としてのロボットはなかなかイメージしにくいかもしれませんが、医療技術ということで、身近に感じていただけるかもしれません。人間が宇宙での生活に順応するために必要な技術で、『PROLOGUE』で一部の人が使っていたけど、技術自体が蓋(ふた)をされている」と説明していた。

 「PROLOGUE」には、GUNDを研究するヴァナディース機関が登場した。同機関は、宇宙環境における体の補助を目的とした研究をしていたが、モビルスーツ製造企業のオックス社から資金提供を受けることと引き換えに、GUNDの軍事転用に利用されることとなる。

 株式会社ガンダムのミオリネ社長らは、蓋をされたGUND、GUND-ARMを知らない世代
で、GUNDを軍事転用するのではなく、人を救う医療事業を目指すことを決めた。その決断によって、ヴァナディース機関の理想を受け継ぎ、“呪い”と向き合うことになるはずだ。険しい道のりが待ち受けているかもしれない。ミオリネ社長らの手腕が問われる。

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