細田佳央太:「他人事にはできなかった」信康の最期 「どうする家康」で俳優人生初めての経験、安堵も

大河ドラマ「どうする家康」で松平信康を演じた細田佳央太さん (C)NHK
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大河ドラマ「どうする家康」で松平信康を演じた細田佳央太さん (C)NHK

 松本潤さん主演のNHK大河ドラマどうする家康」(総合、日曜午後8時ほか)で松平信康を演じた細田佳央太さん。6月18日放送の第23回「瀬名、覚醒」では、信康が僧を斬り殺すという事件が描かれ、“闇堕(お)ち”ぶりが話題に。その後、信康は殺し合いを続けることをよしとせず、慈愛の心で結びついた“大きな国”を作り上げるという、母・瀬名(有村架純さん)の“壮大なはかりごと”に加担。しかし、その夢はついえ、7月2日放送の第25回「はるかに遠い夢」では悲劇的な最期を迎えた。劇中で死を迎えるのは、俳優人生で初めてだったという細田さんに撮影を振り返ってもらった。

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 ◇「ここまで役に入ってしまうのは初めてでした」

 信康は、家康(松本さん)と瀬名の息子で、苦労を重ねた両親の姿を幼いころから見ており、父を支え、家族を守り、徳川家のために強く生きようとする、心優しき勇敢な青年。その真っすぐな気持ちが、危うさでもあった。

 かつては、虫も殺せぬほど優しい心を持っていた信康の苦悩を体現し、視聴者に強い印象を与えた細田さん。初めて役として死ぬことについて「他人事にはできなかった」と明かす。

 「信康のことが好きだし、だからこそ他人事にできなくて。ずっと死にたくない、死にたくないと、僕自身が思っていました。そこから脱却するのが大変でしたし、ここまで役に入ってしまうのは初めてでした」

 第25回では、勝頼(眞栄田郷敦さん)の“裏切り”により、はかりごとが明るみになってしまった瀬名と信康。どうにか愛する妻子を助けようと家康は奔走するも、瀬名と信康は、徳川家を守るため、自ら死を選んだ。

 家康の願いもむなしく、平岩親吉(七之助、岡部大さん)から刀を奪い、自らの腹に突き刺し、命を絶った信康。細田さんは同シーンの撮影を迎える頃には、「気が付いたら吹っ切れていた」といい、「監督が寄り添ってくれた」ことを理由として挙げている。

 「役者って、一人で役と向き合わなくていけない孤独な時間があって、自然と自分一人でやらなくてはいけないと思ってしまいがちなのですが、そういったときに監督が寄り添ってくれたのは一つ大きかったです。『何かできることがあれば』『分からないことがあったら何でも聞いてください』と言葉をかけていただけて、改めて一人じゃないんだってことを実感できたというか。それで乗り越えられたような気はします」

 ◇「やりきったっていうよりかはほっとした感じ」

 細田さんは、信康が最期を迎えるにあたって「リハーサルから覚悟はできていたような気はします」と語る。

 「異様に空気が熱かったというのは覚えています。それは皆さんが、すごい熱量を持って演じてくださっていたからで、やっていてすごく汗をかきました。そのくらい熱量が高まったシーンだったと思います」

 そういった現場の熱が画面越しに伝わってくるほど、鬼気迫る演技で、信康の人生を全うした細田さん。

 「無事、終わってよかったなと思いますが、達成感はまだ感じられていないです。ひと段落って気持ちはありましたけど、やりきったっていうよりかはほっとした感じです」

 改めて、21歳という若さで生涯に幕を閉じた信康の姿は、撮影を終えた今、“同い年”の細田さんの目にはどう映ったのだろうか。

 「『どうする家康』での信康でしたら、この時代に生まれてほしくはなかったなっていう思いは、心のどこかにはあります。現代なら普通の男の子として普通の暮らしができて、何にも流されることなく、生き抜くことができたのかもしれないのに、それが許されない時代に生まれ、飲み込まれていった信康を、最初から最後まで見てきた身としては、いまだにつらさがあります。もっと平和な時代に生まれることができたのなら、どれほどよかっただろうかって。それが難しくても、もし“あの事件”がなかったら、どんな武将になっていたのか、とか。あまりにも早い年齢で亡くなっているので、何かが掛け違って、もう少し長く生きられたらどれほどよかったかって思いますね」

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