アンチヒーロー:4人の脚本家による“チーム制”は成功したのか? ドラマPに聞く利点と課題

ドラマ「アンチヒーロー」の一場面 (C)TBS
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ドラマ「アンチヒーロー」の一場面 (C)TBS

 俳優の長谷川博己さんが主演を務めた、TBS系「日曜劇場」枠(日曜午後9時)の連続ドラマ「アンチヒーロー」が6月16日に最終回を迎えた。緻密な構成が話題になった今作だが、脚本はまだ日本では珍しいとされる、4人の脚本家によるチーム制がとられた。今作における“共同脚本”の利点や課題について、飯田和孝プロデューサーに聞いた。

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 ◇共同脚本の利点は「アイデアが枯渇しないこと」

 ドラマは「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士・明墨(あきずみ、長谷川さん)を通して、視聴者に「正義とは何か?」を問い掛ける“逆転パラドックスエンターテインメント”。

 今作は、昨年の「VIVANT」と同様、山本奈奈さん、李正美さん、宮本勇人さん、福田哲平さんという4人の脚本家による共同脚本で進められた。中でも山本さん、李さん、宮本さんは「VIVANT」ですでに共同脚本を経験していた。

 飯田さんは共同脚本の利点を「アイデアが枯渇しないこと」だと語る。

 「ただ有名脚本家さんの技やせりふ、アイデアには勝てない部分が多々あるのは重々承知していて、常にチーム制がベストかというとそうではないと思う」と前置きしつつ、「今回に関していうと、10話を法廷ドラマで作るときに仕掛けや、案件の中での解決をどうひっくり返すかということが必要だったので、いろんなアイデアを議論しながら作ることができるのは、非常にメリットだったと思います」と実感を込めて語る。

 4人それぞれ、「得意不得意も」あり、個性を生かしてパートを割り振った。

 「例えば第9話の冒頭の伊達原(野村萬斎さん)の演説とか、最終回の冒頭の留置所での伊達原と明墨が対峙(たいじ)するシーンとか、最後の法廷での明墨の演説というのは、映画『七つの会議』(2019年)や『VIVANT』など福澤克雄監督の作品に多く参加している李さんが中心になって書いているのですが、彼女が長いせりふが得意というところは分かっていたので、そこを割り振りました」

 他にも「第2話のポップな感じは山本さんが得意。宮本さんは仕掛けを構築していくのが得意で、福田さんは圧倒的に構成がうまいというところをうまくパート分けができたと思っています」と手応えを語る。

 ただし、「課題もいっぱいある」という。「お互いぶつかることはあまりないんですけれど、個々のレベルを上げた分だけ作品が良くなると思うので、もっともっと上げていく必要が今後はあるだろうし、会話の部分で、より人間同士の掛け合いのナチュラルさとか、自然に出てくる言葉をもっともっと磨いていかなくてはならないと思っています」

 書く時間より話し合いの時間が長かったという。「10話あるので、どこでそれに気付くのか、構成するときに自分たちでツッコミを入れながら」作っていった。

 「最初の接見の場面と最後の場面がどうつながるのか、緑川(木村佳乃さん)が緋山(岩田剛典さん)の容疑からどう動画につながっていくのか、(殺人の証拠の)作業服を赤峰(北村匠さん)が廃棄場で見つけ出したことにしようかなど、(要素の)組み合わせや構築はパスルのピースの埋め方の難しさを感じつつ、面白がりながら、ほころびが出ないように細心の注意を払って作っていった感じですね。そこは、4人の脚本家がいて良かった部分です」

 ◇“逆転パラドックスエンターテインメント”は達成できたのか

 今作は「逆転パラドックスエンターテインメント」と銘打たれている。それは達成できたかと最後に尋ねた。

 すると、飯田さんは「そこは達成できていると思います」と自信を持って答える。「最終回もそうなっていますし。先人が善意で残したとされる鑑定書のくだりで、結局そんなものはなかったというのは、このドラマらしい展開かなと(笑い)。伊達原的にはそこにほころびが一つあって、おそらく(なぜ気付かない?と)ツッコミが入るところだと思うんですよね。でも、そのツッコミをちゃんと返す構成になっています。そんなふうにツッコミながら、返されながら、見ていただけると楽しいんじゃないかなと思います」とメッセージを送った。

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