ばけばけ:「じゃが、じゃが、うるさいな!」 失踪した父に切れるヒロインにクギヅケ 第4回の注目度推移 

連続テレビ小説「ばけばけ」のロゴ (C)NHK
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連続テレビ小説「ばけばけ」のロゴ (C)NHK

 高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第4回(10月2日放送)で、テレビの前の視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのだろうか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた割合を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時6分の68.8%だった。

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 「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキと、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘、小泉セツと、「怪談」などの著作で知られるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。

 ◇最高値は午前8時6分の68.8% 「おいしくないの」ってどういうこと?

 第4回は、松野家の家族の前から突如、姿を消した司之介(岡部たかしさん)のその後の話。何日たっても家に帰ってこない司之介に、トキ(福地美晴さん)やフミ(池脇千鶴さん)、勘右衛門(小日向文世さん)の不安はつのっていく。そんなある日、登校途中のトキが、思いがけない場所で司之介の姿を発見する。

 テレビ画面の前にいる人のうち、画面を実際に注視している人の割合を調べた「注目度」は、70%台の高い注目度が続いた前日の第3回から一転、番組を通してやや低めに。ピークの午前8時6分でも68.8%と、あと一歩、70%台に届かなかった。第4回は、やや低迷した序盤の後、中盤に入って間もなく一度“山”を作り、終盤は65%前後のほぼ横ばいが続くグラフだった。

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 最高値となった午前8時6分は、橋のそばの中州をうろつく司之介をトキが見つけた場面。走って逃げようとする司之介を、川の中まで入ったトキは後ろから抱きつき引き留めるあたりからが午前8時6分台だ。「帰るよ!」と父の腕を引っぱる。

 「何があったかなんて、どうだってええ! 生きちょっただけで十分だけん」

 トキの叫びが視聴者の心にも響いた、なかなかの名場面だ。それでも「じゃが」「じゃが、おトキ」とはっきりしない父親に、「じゃが、じゃが、じゃが、じゃが、じゃが、じゃが、じゃが、じゃが、うるさいな!」とトキが切れたのには、笑う場面ではないとは思うが、思わずクスリと笑ってしまった。

 「おいしくないの」

 続くトキの意外な言葉が興味を引く。司之介は「おいしくない?」と問い返す。視聴者も同じ気持ちだっただろう。この辺までが大体、6分台だ。

 ◇現実は甘くない? 「では、働いてくれるな? 明日から」

 トキは「おいしくないけん。しじみ汁」と続けると、そこにやって来たフミが「あなたがいないと、おいしくないのよ。大好きなしじみ汁が、ちっとも」とトキの気持ちを代弁する。「帰ろう!」と連呼するトキに、司之介は「しじみ汁がおいしければよいか?」「父が帰って一家4人楽しく暮らせればそれでよいか?」と尋ねる。トキはうなずく。「いいお話」と思っていたら、司之介は「では、働いてくれるな? 明日から」「学校はもうない!」と驚きの言葉をいきなり言い放つ。やはり現実は甘くない。

 司之介は、ウサギの価格がタダ同然に暴落し、一生働いても返せないほどの借金を作ってしまったと明かす。司之介がトキに「どんなに貧しくてもしじみ汁だけは必ず飲ましてやるけん」と言うと、トキはショックのあまり倒れ込んでしまった。ドラマはそんな流れだった。

 「しじみ汁」の話以降が7~10分台。父の手を引き「帰ろう!」と連呼するトキ役の子役、福地さんは大熱演だったが、注目度は6分のピーク68.8%から一気に急落。司之介が「しじみ汁がおいしければよいか?」「父が帰って一家4人楽しく暮らせればそれでよいか?」と尋ねる午前8時8分には59.0%まで落ち込む。その後、司之介が借金を背負ってしまった状況を打ち明けるあたり以降で65%前後を推移した。

 最高値となった午前8時6分台は、ようやく見つかったと思った司之介が逃げ出し、どうなるのかとひやひやした場面。「何があったかなんて、どうだってええ!」「じゃが、じゃが、うるさいな!」「おいしくないの」。父親にぶつけるトキの一言一言が心に残った印象的な場面だった。

 トキの言葉を受ける、ダメな父親役を岡部さんも好演。どんなにダメな父親でも、どうにも許してしまうおかしみ、不思議な愛嬌を持っていて、はまり役だ。

 ただ視聴者は、トキが司之介を見つけたことで少し安心してしまい、ドラマへの「注目度」はその後、下がってしまったのかもしれない。一度“休憩”をはさみ、司之介が姿をくらませた事情を語るあたりから、再びドラマの内容に入り込み始めたのかもしれない。

 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)

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