テレビ質問状:「WHO I AM」 パラリンピックドキュメンタリー第6回はサッカー王国ブラジルの10番

「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」のブラインドサッカーのリカルディーニョ(本名リカルド・アウベス)選手(ブラジル)
1 / 3
「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」のブラインドサッカーのリカルディーニョ(本名リカルド・アウベス)選手(ブラジル)

 IPC(国際パラリンピック委員会)とWOWOWが共同で立ち上げたパラリンピックドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」。リオパラリンピックが開催された2016年から、東京大会が開催される2020年まで5年にわたり、世界最高峰のパラアスリートたちに迫る大型スポーツドキュメンタリーシリーズだ。10月から第1シーズンとして、8人のパラアスリートに密着した放送がスタートした。第6回は26日午後9時からブラインドサッカーのリカルディーニョ(本名リカルド・アウベス)選手(ブラジル)をフィーチャーした回がWOWOWプライムで放送される。番組プロデューサーを務めるWOWOW制作局制作部の太田慎也チーフプロデューサーに番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 ――リカルディーニョ選手に注目した理由?

 視覚に障害のある人がプレーする、ブラインドサッカー(5人制サッカー)をご存じでしょうか? 実際に会場で見たことはなくても、テレビで見たり、話を聞いたことがあるという方も多いかもしれません。2004年アテネ大会からパラリンピック正式競技となったブラインドサッカーは、ボールに入った鈴の音を頼りにプレーする、“静かで熱い”サッカーです。そして、アテネ大会以降のすべてのパラリンピックで金メダルを獲得しているのが、サッカー王国ブラジルです。ロンドン大会まで無敗のまま3連覇を達成し、今年は母国開催となる9月のリオ大会で、前人未到の4連覇に挑みました。

 そんな最強のブラジル代表で「10番」「キャプテン」を担っているのが、リカルディーニョ選手です。世界選手権MVPを2度獲得し、変幻自在のドリブルと圧倒的なゴールセンスを持ち合わせる彼の、世界最高のパフォーマンスの秘訣(ひけつ)を知りたかったのです。

 ――リカルディーニョ選手との撮影中のエピソードは?

 母国開催を控えるサッカー王国の10番&キャプテンの取材をできるということで、私たちはとても興奮して現地に向かいました。しかし今年4月、リカルディーニョは左足腓骨(ひこつ)骨折という事態に見舞われました。リーグ戦試合中のラフプレーによるものでした。けがの状態はどうなのか、リオに間に合うのか、間に合ったとしてもキャプテン不在のブラジル代表は万全の準備を行えないのではないかなど、不安要素を挙げればキリがありませんでした。

 しかし、世界の誰よりも不安を抱えていながら、10番とキャプテンの責務とに真摯(しんし)に向き合い、辛抱強く毎日を過ごしていたのが、他でもないリカルディーニョ本人だったのです。練習がない日ですらサッカーがしたくてたまらなくなるほどサッカーが大好きな青年は、プレーできないいら立ちや、思うようによくならない自らのコンディションと対峙(たいじ)しながら、虎視眈々(こしたんたん)と母国開催のピッチに立つことだけをイメージし、信じ続けていたのです。彼の言葉の節々から、「信じることの大切さ」や、世界最高プレーヤーとしての矜持(きょうじ)を感じ取っていただけるかと思います。

 ――視聴者へ見どころをお願いします。

 日本や世界におけるサッカー人気を考えると、ブラインドサッカーは間違いなく2020年東京パラリンピックで最も注目の集まる競技の一つになると思います。そんな競技の世界最高プレーヤーの日常や、これまでの栄光、そして運命のリオまでを追いました。

 網膜剥離により8歳で失明したリカルディーニョですが、これまでブラインドサッカー選手として築き上げた実績は、まさに史上最高プレーヤーといっても過言ではないと思います。取材中にけがに見舞われ、プレーできない日々が続きましたが、だからこそ私たちは、彼の「強靭(きょうじん)な精神力」や「物事の考え方」にたくさん触れることができたのです。それは、視覚が奪われたからこそというものではありません。人が困難とぶつかった時にどう考えるかという点において極めて普遍的で、現代に暮らす私たち一人一人に当てはまることばかりです。

 陽気なブラジリアンとはどこか対照的で、寡黙でシャイな青年でありながら、世界最高の選手であるリカルディーニョにぜひ出会っていただきたいですし、さらにその先にある「ブラジル代表10番の意味」について、感じていただけたらとも思います。

 また、この場をお借りして、リカルディーニョやご家族はもちろん、取材にお力添えいただいたすべての方々に心よりお礼を申し上げたいと思います。

 WOWOW 制作局制作部 チーフプロデューサー 太田慎也

写真を見る全 3 枚

テレビ 最新記事