小池真理子さんの半自伝的小説を成海璃子さんの主演で映画化した「無伴奏」(矢崎仁司監督)が、26日に公開される。成海さんが、スクリーンでは初の官能シーンに挑み新境地を開拓。恋人役の池松壮亮さんや、その親友役の斎藤工さんらとともに、1969~71年の仙台を舞台に、恋に揺れる若者の心の機微を繊細かつ大胆に演じ切った。
ウナギノボリ
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1969年、反戦運動や全共闘運動が起きていた時代。高校3年生の野間響子(成海さん)は、親友と制服廃止闘争委員会を結成し、革命を訴えシュプレヒコールをあげる日々を送っていた。ある日、友だちに誘われて入ったバロック喫茶「無伴奏」で、大学生の堂本渉(池松さん)とその親友、関祐之介(斎藤さん)、祐之介の恋人、高宮エマ(遠藤新菜さん)と知り合う。やがて響子は渉と付き合うようになり、渉との関係が深まるにつれ、学生運動から遠のいていく。満ち足りた日々を送っていた響子だったが、あるとき、衝撃的な出来事が起こる……というストーリー。
初めての恋に揺れる乙女心を初々しく、かつみずみずしく演じる一方で、官能シーンに体当たりで挑み、度胸のよさを見せた成海さん。どこか寂しげで、でも、響子には精いっぱいの愛を送ろうとする心優しい渉役の池松さん。彼の親友役で、えたいの知れない怖さを垣間見せる祐之介役の斎藤さん。さらに、この3人と対極の立場にある、大輪の花のような華やかさを持つエマ役の遠藤さん。この4人が織りなす四角関係を通じて、人を愛したときの胸の高鳴り、愛するがゆえの不安や嫉妬(しっと)、傷つくことで身につく強さ……そういった人間の姿が丹念につづられている。
LPレコードに黒電話、ミニスカートにバロック喫茶、さらに学園紛争……昭和の香りがたち込める今作は、当時を知る人には、自身の記憶の箱を開ける装置になりうる半面、知らない世代には、敷居の高さを感じるかもしれない。しかし、早く大人になりたくて背伸びをしたり、好きな人を前にときめいたり、没頭できる何かを見つけようと悶々(もんもん)とした日々を過ごす響子の姿には、どの時代の若者にも共通する普遍性があるように感じた。26日から新宿シネマカリテ(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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