高橋一生:「直虎」撮了に万感…俳優人生最高の瞬間「何度も」 目指したのは「超標準」

NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で小野政次を演じる高橋一生さん=NHK提供
1 / 5
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で小野政次を演じる高橋一生さん=NHK提供

 柴咲コウさん主演のNHK大河ドラマおんな城主 直虎」で、井伊家筆頭家老・小野政次を演じてきた高橋一生さん。20日放送の第33回のタイトルは、ずばり「嫌われ政次の一生」で、一足先にクランクアップを迎えた高橋さんは、万感の思いを込め「俳優として、お芝居をさせていただいてきた中で最高の瞬間が、この直虎の現場で何度もあった」と撮影の日々を振り返る。また最後まで多くを語らず“嫌われ者”を貫いた政次の生き方について「美しいと思う」と寄り添う高橋さんに、ドラマと役への思いを聞いた。

あなたにオススメ

 「おんな城主 直虎」は56作目の大河ドラマ。主人公の直虎は、幕末の大老・井伊直弼の先祖で、徳川家康の重臣・井伊直政の養母にあたる人物。井伊家当主・直盛の一人娘として生まれるが、幼くして許婚(いいなずけ)と生き別れ、その後、出家。やがて男の名で家督を継ぎ、今川、武田、徳川が領地を狙う中、知恵と勇気を頼りに、仲間と力を合わせて国を治め、幼い世継ぎの命を守りながら、生き延びていく……というストーリーが展開する。

 ◇政次の表情「能面を参考に」

 ここまで一貫して自分の気持ちを表に出さず、幼なじみの直虎、ひいては井伊谷のため、時に冷徹にも思えるほどの態度と言動で、政(まつりごと)を推し進めてきた政次。高橋さんは政次の“選択”について「小国が生き残っていくには断固として戦わないことだと政次は思っていて、断固として“戦わない戦い”を選んだと思う」と代弁する。

 劇中で政次が実践してきた“日陰の生き方”についても「僕は美しいと思う」ときっぱり。「寡黙(かもく)で、一番近しい人でも何を考えているか分からないときがある。雄弁な人よりも沈黙を選ぶ男って僕は美しいなって」と優しくほほ笑み、「“沈黙する”、自分を抑え込んで、“隠す”という芝居は、僕がやってみたかったことで、政次の性格ともリンクしていた」と振り返る。

 本心の見えない寡黙な政次の、ちょっとした心の動きをとらえた高橋さんの演技には、これまでも称賛の声が寄せられてきた。その見応えのある表情は「能面を参考にした」という。「(演出の)渡辺一貴さんが幼いころの政次(鶴丸)に対して『能面を背負わせていたいんだ』って言ってくださったので、そこからイメージが膨らんで。人間って実はそんなに表情豊かなものではないのかもしれないし、見ている側の心の作用もあると思う。それをどれだけフラットにやり、どれだけ伝わるかということをやらせていただいていた気がするし、皆さんが持っていただくイメージを広くとりたかったんです」と話す。

 ◇突飛なことをしようとすると“ただの突飛”になってしまう

 視聴者の目に今回の政次が非常に魅力的な人物に映っていることについて「森下(佳子)さんの脚本の力が大きかった」と高橋さんは認める。「僕はそれ(脚本)に沿ってお芝居をさせてもらっただけで、そこに変な解釈とか、自分の個性を出すべきではないと思った。突飛(とっぴ)なことをしようとすると、“ただの突飛”になってしまうので、あくまで“超標準的”なことをしようと思ったんです」と明かす。

 さらに森下さんの脚本に「(登場人物)みんなの人生をないがしろにせず書かれていて、ほぼ盲目的に従っていきたいと思える力があった」と心酔する高橋さんは、「直虎」における“大河ならではダイナミックさの欠如”や、“大河らしくないちまちま感”といわれていることについても「算木を使ってお金の計算をして『わあ足りない!』ってなるシーンを見せられるのって、撮り方や演出、脚本が相当しっかりとしてないとできないし、芝居だけではなかなか見せられない。その着眼点はとても勇気がいることだし、そこに小さな躍動がありました」とむしろ肯定的だ。

 「『やれ戦じゃ』って感じに目に見えてダイナミックなものって分かりやすいし、躍動感も出ると思うんですけが、すごく小さい会社が大企業と渡り合って『お金足りない!』っていう大河はすごく好き(笑い)。それを毎週みんなが楽しみにして、意見をくださるってことは、きっと見ている人たちも“井伊谷の人”たちなんでしょう」と理解し、「史実と比較する必要なんてないと思うし、みんながその世界に没入してもらうために作って、作品を共有できているってことはとてもすてきなことだと思います」と語った。

 ◇このまま死んでもいいと思える瞬間も何度も

 いまでも政次から「離れがたく」て「自分を分離できないところもあったりする」と役への思いの深さを隠さない高橋さんは、「俳優として、お芝居をさせていただいてきた中で最高の瞬間が、この直虎の現場で何度もあったし、どうかネガティブにとらえてほしくないんですけけれど、このまま死んでもいいと思える瞬間も何度もあった」と話す。

 「例えば第11回で、幼なじみの3人で井戸端にいるシーン。『このままずっとやれればいいのに』って思いました。直親(三浦春馬さん)と次郎(直虎、柴咲さん)と3人で、子供のころ思い出話をして、結局はそれで直親とは最後の別れとなってしまうんですが、そういったことを全然考えずに、『3人でいると楽しい』って感じになったときは、俳優をやっていてよかった」と笑う。

 「幼少のころから構築してきたものが、一回すれ違って、そこに戻ってきたっていう3人の描写がはっきりと、きれいに描かれていて、それをお芝居でどういうふうにできるか、森下さんの世界観を邪魔しないようにやれるかって意識をしたんですけれど……。本番ではただただ幸福な時間を政次として過ごせていた。ほかにも、役として幸せな瞬間、生きているって実感を政次から得るときがあって、その瞬間はことごとく俳優をやってきてよかった、その場にいられてよかったって思いました」とうれしそうに思い返していた。

 NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」は、NHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。 

写真を見る全 5 枚

テレビ 最新記事